日本初の月面着陸に成功 裏側にこんな企業の協力が

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月20日、小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸が成功したと発表しました。日本としては初の快挙で、世界でみた場合でも5カ国目の偉業とのことです。


日付が変わる前、19日の深夜から、月面着陸に挑戦する様子がインターネットによりライブ中継されていたことから、固唾を飲んで見守っていた方もいらっしゃったと思います。


着陸したと思われたところから一時中継が中断され、成功したのかどうかやきもきさせられましたが、20日午前2時すぎ会見が開かれ、JAXAから正式に「着陸に成功し」、「探査機との通信が確立され、データを受信している」との発表がなされました。


一方で、SLIMに搭載された太陽電池からの発電が行われていないもようで、何らかのトラブルがあった可能性(予定していた姿勢とはちがう姿勢で着陸していること)があるようです。


あえて厳しい言い方をすれば、画竜点睛を欠くというとになるかもしれませんが、それでも数少ない月面着陸成功の事例として、賞賛すべき出来事だったように思います。


SLIMは月面着陸の成功だけではなく、着陸予定地点と着陸した場所との距離の誤差を、100メートル以内にとどめる「ピンポイント」での着陸を目指していました。これまでの各国の探査機の数キロ単位とされていたわけですから、それよりはるかに高い精度が求められる目標です。今後1カ月ほどかけてデータを解析し、「ピンポイント着陸」の成否などを確認するとしています。


日本にとって非常に吉報となったSLIMの月面着陸成功ですが、同機はJAXAだけでなく、さまざまな民間企業の協力のもとに開発されたことも忘れてはいけません。


たとえば、SLIMのシステム開発や製造は、人工衛星の開発などで実績のある三菱電機が担当しました。21日の読売新聞の報道では、噴射で機体がぶれないように重心を考慮した構造の設計など、垂直降下やホバリングを用いるSLIMならではの精密さが要求されたと、開発の難しさについて解説されていました。


また、SLIMが着陸した証しを静止画で記録するカメラマン役として載された、超小型変形ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」はタカラトミーが開発を担当しました。こちらも報道ベースの話となりますが、同社の玩具である「トランスフォーマー」の変形機構などが活用され、衝撃に強い球形から着陸後に拡張変形し、外殻を車輪として走行する形状とするなど、その技術力が存分に活かされるかたちとなったようです。


JAXAによれば、SORA-Qは、無事スリムからの分離が確認されており、月面で計画どおり変形したか、撮影に成功したかのデータ解析には1~2週間ほどかかるということです。


また、大企業ばかりでなく、中小企業もSLIMの開発には参加しています。リアルタイムソフトウェア技術に強みを持ち、宇宙分野や車両自動走行含むロボットの開発を受託しているセック<3741.T>もその企業の一つで、「SLIM」に搭載されている変形型月面ロボットLEV-2のソフトウェア、およびX線分光撮像衛星「XRISM」向けの観測データベースシステム(ODB:Observation DataBase)の開発に協力しました。


快挙の達成とともに、こうした企業の取り組みなども報じられています。もっとたくさんの人の人に周知が進み、企業にとってもプラスであったと判断されることで、さらに多くの企業が参画していくような良い流れが生まれることを願います。




日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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