「トキ消費」「推し活」は、現代の若者ならではのお金の使い方です。
「トキ消費」は、イベントやフェスなどその「時」しか得られない体験にお金を消費する行為です。好きなキャラクターや有名人など応援する対象にお金を使う「推し活」とともに、現代の若者における特徴的な消費行動といわれています。
推しや「トキ」に消費する一方で、ネット証券会社やアプリを通じて「将来のために」資産形成をする若者も一定数存在します。
株式や投資信託などリスク資産の総額や割合はシニア層が多いという現状がありますが、若者のお金に対する価値観は時代とともにどのように変化しているのでしょうか?
今回は若年層の消費行動や金銭観、「コスパ」「タイパ」を重視する若者の資産形成の特徴について解説していきます。
「モノ消費」「コト消費」「トキ消費」の違いと推し活
消費者庁の「2022年版消費者白書 若者の消費行動」には「モノ消費」「コト消費」「トキ消費」の概要と推し活について記載されています。
同白書によると、消費者の消費行動は主に以下の3つに分類されます。
モノ消費・・・商品(モノ)を購入する
コト消費・・・サービスを購入する(例:旅行、習い事、絵画鑑賞など)
トキ消費・・・他の参加者と感動を共有し、自らも参加者として盛り上がり一体感を得る(スポーツイベント、フェスなど)
若年層の消費は近年「コト消費」から「トキ消費」に移行しているといわれています。
「2022年度消費者意識基本調査」の結果によると、20~30代は他の世代と比べ「費用対効果(コストパフォーマンス)を重視する意識」と「費やした時間に対する成果を重視する意識(タイムパフォーマンス)」を持つ傾向があることが分かっています。
出典:消費者庁「2022年度消費者意識基本調査の結果について」
コストに加え「時間」についても20~30代は重視する傾向があり「タイパ(タイムパフォーマンス)」は三省堂が毎年発表する「今年の新語 2022」にも選ばれました。
一方で、2021年の流行語に選ばれた「推し活」は実在する有名人、アニメや漫画のキャラクターなど応援する対象にお金を使う行為です。
消費者意識基本調査で「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」に「とても当てはまる」「ある程度当てはまる」と回答した人の割合は、10代後半で42.1%、20歳代で31.8%に上り、他の年齢層に比べ高いことが分かります。
上で述べた「トキ消費」と「推し活」を組み合わせたもの(有名人のファンミーティングやコンサート、Vtuberのライブ、Youtubeの投げ銭など)も存在します。
「推し活」の一環としてフェスやイベントに出席するだけではなく、SNSを用いて推し活について共有することも推し活とトキ消費の組み合わせといえるでしょう。
「コスパ」「タイパ」を重視する若者の資産形成
20~30代が「コスパ」「タイパ」を重視しつつ、トキ消費を楽しんでいる傾向にありますが資産形成にもそれが現れています。
金融庁の発表した「投資信託等の販売会社に関する定量データ集 2022年度9月期」における「資産形成商品(投資信託及びファンドラップ)の業態別・年齢層別の保有顧客数の推移」を見ていきましょう。
出典:金融庁「投資信託等の販売会社に関する定量データ集 2022年度9月期 資産形成商品(投資信託及びファンドラップ)の業態別・年齢層別の保有顧客数の推移」
29歳までの顧客はネット系証券が最も多く、大手証券会社は比較的少ないという状況です。
ネット証券はインターネットで取引ができるためタイムパフォーマンスが良く、店舗型証券会社に比べ信託報酬が低い商品が多いことからコストパフォーマンスも優れています。
加えて、デジタルに強い20~30代はネット証券会社を使う人が多い結果となっています。
日本では金融資産の保有額が多いのは60代以降の世代ですが、この先上記のような若年層が40代、50代と年を重ねていくことになります。
保有資産が多いのは60代以降だが、若者は「貯蓄から投資へ」?
日本の家計金融資産は、60代以上の保有比率が6割超であり高齢者世帯の現金・預金
は約626兆円に上ります。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「資産所得倍増に関する基礎資料集 2022年10月」
しかし世代別のNISA口座数の推移を見ると、各世代でNISA口座の開設が増加しており、2020年からは20~30代の口座開設が急増しました。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「資産所得倍増に関する基礎資料集 2022年10月」
NISAの買付額の推移を見ても、20~30代の買付額が増えています。
出典:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局「資産所得倍増に関する基礎資料集 2022年10月」
NISAは、本来売却益や配当金などに対する税金がかからない非課税口座です。コストを重視する若年層に、適した制度といえるでしょう。
コロナ禍による影響もあることが推測されますが、20~30代の投資額が順調に伸びるとアメリカのように金融商品を保有する世帯は増えていくでしょう。
まとめ
若年層を中心にネット証券会社の取引やNISAの口座開設数が増えています。
背景にはコスパやタイパを重視する若者の金銭観があり、「トキ消費」「推し活」といった独自の消費行動が特徴的です。若年層の方も、中高年層の方も若者の金銭観や資産運用について知り自身の投資のヒントにしていきましょう。