今回は中国の主要取引所である深セン証券取引所に上場する主な企業を紹介していきたいと思います。深セン証券取引所は時価総額ベースで日本取引所グループに次ぐ世界6位、中国では上海証券取引所に次ぐ規模を誇り、近年急成長を遂げている市場です。どんな企業が上場しているのか見ていきましょう。
深セン証券取引所には「メインボード」と「創業板」がある
まず深セン証券取引所の概要について触れておきます。深セン証券取引所にも、上海証券取引所と同様に2つのボード(市場)があります。一つは大・中型企業が上場する「メインボード」。そして、もう一つがベンチャー企業向け市場である「創業板(ChiNext Market)」で、こちらは今のところ日本を含む海外の個人投資家が直接投資することができない市場となっています。日本の個人投資家が投資できるのは、「メインボード」の方だと覚えておきましょう。
深センのメインボードには7月末時点で1524社が上場しており、時価総額は22兆7300億元(約453兆2700億円)に上ります。業種別の時価総額ウエートを見てみると、上海市場に比べて製造業の割合が圧倒的に大きく、金融の割合が低くなっています。製造業の内訳を詳しく見てみると、コンピューター、通信機器、電子機器の割合が大きく、上海のような重厚長大系の製造業とはやや特徴が異なっています。
深セン証券取引所の時価総額上位10銘柄、深センはチャイナドリーム銘柄の宝庫
時価総額の上位銘柄を見ると、上位10銘柄中3銘柄が白酒というのが特徴的です。上海市場では10銘柄中4銘柄が銀行でした。このほかは、自動車・電池、家電、養豚、監視システム、銀行、宅配、電子機器受託製造サービス(EMS)と、業種はかなり分散しています。これも上海市場にはなかった特徴です。
そして、株主の特徴として、BYD(002594)や美的集団(000333)など、10銘柄のうち半分に当たる5銘柄が、個人オーナーの民営企業となっています。上海市場の場合、上位10銘柄に民営企業はゼロで、ほぼ中央政府系の国有企業でしたから、これも深セン市場の大きな特徴といえるでしょう。
深セン市場では、創業者がゼロから会社を立ち上げ、中国を代表する大企業にまで成長させたというケースが多いのです。「チャイナドリーム」銘柄の宝庫ともいえます。
深セン市場の時価総額1位は白酒の宜賓五糧液
深セン市場の時価総額1位は白酒メーカーの宜賓五糧液(000858)です。奇しくも上海市場と同じく、メインボードの時価総額1位は白酒メーカーです。本社を構える四川省の宜賓市は、昔から醸造業が盛んな地域たため、「酒都」とも呼ばれています。
「五糧液」といえば、茅台酒と並ぶ代表的な白酒ブランドですが、社名の由来は、「コーリャン」「うるち米」「もち米」「小麦」「トウモロコシ」という5種類の穀物を原料としていることに由来します。
そして五糧液と言えば下の写真に触れないわけにはいきません。広大な本社敷地内にそびえ立つ「五糧液瓶楼」です。
(出所:宜賓五糧液のホームページ)
自社の商品である白酒の瓶そのままの建物です。会社ホームページによると、高さ66.8メートル、瓶底の直径は26メートル。配電や研究施設などとして実際に使われているようで、「世界最大の瓶型建築物」としてギネス記録に認定されているそうです。ただ、残念なことに2010年に第1回「中国で最も醜い建築物トップ10」に選ばれるという汚点を残してしまいました。会社にとっては消し去りたい「黒歴史」かもしれません。
時価総額2位は電気自動車のBYD
(出所:BYDのホームページ)
時価総額2位は電気自動車のBYD(002594)です。もともとは電池メーカーとしてスタートしましたが、2003年に自動車事業に参入するとその後急成長。早くから電気自動車(EV)の将来性に着目して研究・開発を重ね、いまやEVの販売台数で世界2位、2022年上半期にはテスラを抜いて世界1位に躍り出ています。
今年3月には従来型のガソリン車製造から完全に撤退。今年7月には日本のEV乗用車市場への進出を発表し、2023年にはEV3車種の販売が開始されます。すでに電気バスでは日本進出を果たしており、京都の路線バスや上野動物園の園内移動用のバスなどとしても活躍しています。
(出所:BYDのプレスリリース)
地球環境に配慮したクリーンな社会づくりを目指し、次世代交通のモノレールまで開発してます。2008年には米著名投資家のバフェット氏が投資したことで注目を集めました。取得したのは同社H株の方ですが、株価は当時から30倍以上になっています。BYDの社名は「Build Your Dreams(あなたの夢を築く)」の頭文字を取ったもの。もしその当時に買っていたら・・・と思ってしまう銘柄です。
次回は深セン市場の主要銘柄の続きを紹介していきます。お楽しみに。