【米国株インサイト】eスポーツ(後編): サッカーゲーム「FIFA」でW杯開催

オンラインゲームは手軽な娯楽の代表格で、調査によると、世界のゲーム人口は約37億人に達しています。スマートフォンの普及に伴いモバイルゲームで遊ぶ人が増えたようで、スマホを入口に本格的なゲーマーになる人も増えると予想されます。


注目度の高まっているeスポーツはゲーム市場の多様化やファン層の拡大に不可欠な上、ゲームソフトからゲーム専用機器などのハードウエアまで産業のすそ野は広く、ゲーム人口増加の恩恵も受けます。2023年9-10月に開催された杭州アジア大会で正式種目に採用され、五輪への採用も取り沙汰されます。



前回は約10兆円という大枚をはたいてゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを買収したマイクロソフト(MSFT)を取り上げました。今回はエレクトロニック・アーツ(EA)、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア(TTWO)、コルセア・ゲーミング(CRSR)、タートル・ビーチ(HEAR)というeスポーツ関連銘柄をご紹介します。


エレクトロニック・アーツ、サッカーゲーム「FIFA」でW杯

エレクトロニック・アーツはカリフォルニア州レッドウッドシティに本社を置くゲーム会社です。家庭用ゲーム機、パソコン、モバイルフォン、タブレットなどのプラットフォームに向けたゲームの開発や配信を手掛けています。


シューティングゲームやスポーツゲームなどを中心に人気ゲームを取り揃え、家庭用ゲーム機向けのゲームではソニーの「PlayStation」とマイクロソフトの「Xbox」に提供しています。


eスポーツでは一人称視点(FPS)のバトルロイヤルシューティングゲーム「エーペックスレジェンズ」が人気です。地域ごとの予選を勝ち抜いたチームが戦うグローバルシリーズも開催されており、2023年の「エーペックスレジェンズ・グローバルシリーズ(ALGS)選手権」の賞金総額は500万ドルと伝わっています。


レースゲームでは「F1」がeスポーツでも人気があります。リアルな世界の自動車レースの最高峰「F1世界選手権」を主催する国際自動車連盟(FIA)の公認のレースゲームで、コロナの影響で2020年にリアルな世界のFI世界選手権が相次いで中止に追い込まれた際には現役ドライバーがeスポーツの「F1」に参戦しました。エレクトロニック・アーツは開発会社の英コードマスターズを2021年に買収し、eスポーツの「F1」を傘下に組み入れています。



一方、スポーツゲームの本命ともいえるサッカーゲームでは国際サッカー連盟(FIFA)と提携し、その名も「FIFA」というタイトルのゲームを開発しました。eスポーツでは、やはりFIFAとエレクトロニック・アーツが共同で「FIFA eワールドカップ」を開催しており、2023年9-10月の杭州アジアでも正式種目に採用されています。


ただ、FIFAとエレクトロニック・アーツの関係は悪化し、「FIFA2023」を最後に提携は解消されました。エレクトロニック・アーツは「FIFA」の後継ゲームとして「EA SPORTS FC24」をリリースしています。内容面では「FIFA」から大きな変化はないようで、eスポーツでも世界各地の予選を勝ち抜いたプレーヤーによる世界選手権が行われる予定です。


テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、NBAと提携

テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエアはニューヨークに本社を置くゲーム開発会社です。ソニーの「PlayStation」とマイクロソフトの「Xbox」、任天堂の「スイッチ」といった家庭用ゲーム機向けのゲームをはじめ、パソコンやモバイル端末用のゲームを開発しています。


米国を中心にオーストラリア、カナダ、中国、ドイツ、インド、スペイン、韓国、トルコ、英国など世界各地にゲームの開発スタジオを持ち、世界的に事業を展開しています。2023年10-12月期の売上高に占める米国外事業の割合は40%に上ります。


ブランドも多様で「ロックスター・ゲームズ」「2K」「プライベート・ディビジョン」「ジンガ」などを展開しています。このうちソーシャルゲームの「ジンガ」ブランドは2022年5月に約127億ドルでジンガ社を買収し、手に入れたものです。



eスポーツでは、NBA(全米バスケットボール協会)と提携して開発したバスケットボールゲーム「NBA 2K」をもとにNBAと共同で「NBA 2Kリーグ」を運営しています。通信大手のAT&T(T)や食品のモンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)、暗号資産取引所のコインベース・グローバル(COIN)などスポンサーも多く、スポンサーの名を冠したシリーズも行われています。


コルセア・ゲーミング、ゲーム用機器を提供

eスポーツではパソコンのキーボードやマウスといった道具も重要です。力を発揮するには使い慣れた野球のグローブやスパイクが必要なのと同じ感覚なのだと思います。


コルセア・ゲーミングは、本格的にゲームをプレーするゲーマーに加え、ゲーム実況・ゲーム解説動画を配信するストリーマーやコンテンツを制作するクリエイターなどに向けてハードウエアとソフトウエアを提供しています。もちろんeスポーツでもコルセアの製品を使うプレーヤーは多いようです。


主な製品は高性能ゲーミングキーボード、マウス、ヘッドセット、ゲーミングコントローラー、マイク、ウェブカメラ、ゲーミングパソコン、モニター、冷却製品、電源ユニット、DRAMモジュールなどで、「Corsair」「Elgato」「Origin」「SCUF」といったブランドで製品を販売しています。



このうちDRAMモジュールについてはほぼすべてを台湾の拠点で組み立て、テスト、パッケージを手掛けています。高速DRAMモジュールは台湾の桃園市にある自社の設備でテストやパッケージングを行い、汎用品はサブコントラクターから調達します。


また、顧客の要望に基づく仕様のゲーミングPCやゲーミングコントローラーは、組み立てやテスト、パッケージを米ジョージア州アトランタにある自社工場で手掛けています。このほかの製品の大部分はアジアの下請け企業に発注し、調達しています。


タートル・ビーチ、ヘッドセットに強み

タートル・ビーチはゲーム用のヘッドセットの世界的な大手です。ヘッドセットとはマイク付きのヘッドフォンのことで、両手をフリーにしなければならないゲームでは必需品です。特にオンラインで遊ぶゲームが増えるにつれて、ヘッドセットも一般的なアイテムになっています。


eスポーツの世界でのゲーマー向けはもちろん、ゲーム実況・ゲーム解説動画を配信するストリーマー向けでも高品質なヘッドセットが求められます。タートル・ビーチは多様な製品でゲーム初心者からプロまでの需要に対応しています。


また、2019年にはゲーム用の周辺機器の開発を手掛ける独ロキャット(ROCCAT)を買収しました。「ROCCAT」ブランドでゲーム用のキーボード、マウス、マウスパッド、ヘッドセットなどを提供しています。



中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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