値上げペースは鈍化 3月の食品値上げは728品目

帝国データバンクが毎月公開している「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2024年3月の食品値上げは728品目となったもようです。


同調査によると、多くの食品分野で原材料高や、人件費や物流費の増加、円安水準の長期化が2024年までの主な値上げ要因となっており、2024年に予定される値上げ品目のうち、「物流費」を要因とするものは56.8%。「円安」は31.8%と、人件費が23.0%となっており、前年同期を上回る水準となったもようです。また、「原材料」が88.1%と割合は低下したものの、トマトやオレンジなど野菜・果物や畜肉価格の高騰が響き、値上げが継続する食品もみられています。


品目では、レトルト食品や冷凍食品など「加工食品」(407品目)が全食品分野で最も多く、「菓子」(147品目)と合わせ、2分野で全体の7割超を占めました。なかでも「菓子」はチョコレート加工製品が中心で、原料となる砂糖価格の上昇に加え、天候不順で不作となったカカオ豆価格の急騰、いわゆる「ビーンショック」が影響したとみられています。


年間を通じた値上げ品目予定数は5911品目。これは年途中に値上げが発表されるものも多数あるため、あくまで調査時点での見通しではありますが、2023年と比較して5000品目を超えるのは3カ月遅く、値上げペースが鈍化していることを表しています。


一方で値上げ率の平均を見ると19%と2023年の15%を上回っている点が気になります。これは数値からの推測にはなりますが、あれもこれもと多くの食品が値上げされていた前年と比べ、消費者が値上げを受け入れる余地が少なくなっており、値上げに慎重になるメーカーが増える一方、原材料高などの影響から、どうしても価格に転嫁せざるを得ないものが増えていることで、全体での数は減少するも1品目当たりの値上げ率が上昇している、と言うケースが想定されます。


この推測を補強するデータとして、4月以降から再び値上げ機運に再燃の兆しが見られるとの分析を帝国データバンクのレポートでも開示しています。4月は加工食品を中心に6カ月ぶりに3000品目を超える大規模な値上げラッシュを迎える見通しとなっており、なかでもハム・ソーセージなど肉製品の値上げが相次ぐ予定です。


原材料高は2023年から2024年にかけて、小康状態を保っていました。しかし、前述したカカオ豆価格の急騰のほか、トマトなども価格高騰が続いています。また、大豆や肉製品、コショウなどのスパイス類などでも価格の上昇や高止まり傾向が見られるとして、5月以降にも例えばケチャップなど、調味料類を中心にまとまった値上げが実施される可能性があると同レポートでは指摘しています。


また、4月以降については、いわゆる「2024年問題」に関連した物流費の増加に伴う値上げもすでに顕在化しているもようです。食品分野以外では既にその影響が広がっており、今後、食品でもコスト増加分を価格へ転嫁する動きが出てくるでしょう。しかも、この物流費の問題は2024年で終わりではありませんから、今後、長期的に価格の上昇要因として継続した値上げにつながる可能性があります。


足もとでは企業の賃上げが行われているものの、それ以上にモノの値段が上昇する実質賃金の低下がとまっていません。消費者の財布のひもは固くなり、モノが売れず値上げができなければ企業業績も苦しくなり賃上げ余地も生まれないというデフレ時代にまた逆戻りとなってしまう可能性もあります。そうした意味でも4月以降の賃上げと値上げの動向にはますます注目したいところです。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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