日銀マイナス金利解除観測の思惑でドル円は上下
日銀のマイナス金利解除の観測で円相場が上下に振れています。早ければ来週3月18-19日開催の金融政策決定会合で解除へ、とのタカ派(金融引き締め派)な思惑が強まる局面もありました。
8日、一部通信社が「日銀はマイナス金利政策を3月に終了する方向に傾いているが、最終的な判断は大手企業による労使交渉の集中回答日となる13日の行方次第」と伝えると、ここもとの賃上げ交渉における高めな要求に関するニュースが聞かれる状況もあってか、為替は円買いで反応。ドル円は2月2日以来の146円台まで円高・ドル安となりました(図表1)。
日銀は賃上げをともなう基調的な物価上昇率が目標値として設定されている2%に向けて安定的に推移することが見越せる「確度」を重視しています。3月会合が近づくなか、7日に植田総裁が参議院予算委員会で物価安定目標の達成について「実現する『確度』が少しずつ高まっている」との見解を改めて示したことも、マイナス金利解除に対する直近の意識につながったのでしょう。
「日銀は国債買い入れ規模を示す新たな量的金融政策の枠組みを検討」との報道も政策の枠組み変更の見方を強め、円買いを促しました。その後も12日朝方の一部報道で「日銀は平均賃上げ率が23年を大きく上回れば解除に踏み切る」と伝わり、ドル円の戻りが抑えられました。
しかし同12日昼前になると、植田日銀総裁は参院財政金融委員会で足もとの景気について「一部統計に弱めの動きがうかがわれるものの緩やかに回復」と述べ、1月展望リポートで示した「景気は緩やかに回復している」よりややトーンが弱い現状認識を示すとドル円は買い戻しが優勢となりました。146円台中心としたもみ合いゾーンを上放れ、147円台へレンジを切り上げています。
さらに同日NYタイムに注目の2月米消費者物価指数(CPI)発表を控えるなか、ドル円はショートカバー優位の展開に。総じて市場予想より強い内容だったことが判明すると148円台を回復する場面もありました。
同CPIはヘッドラインの指数が前年比+3.2%と、前回1月や市場予想の+3.1%より強い結果に。エネルギーと食品を除くコア指数は+3.8%と、1月の+3.9%よりやや弱かったものの市場予想の+3.7%を上回りました。
根強いマイナス金利解除観測、ドル円はチャートポイントヒットするか
とはいえ、本邦企業の賃金引上げを背景としたマイナス金利解除の観測が根強いのは確かです。3月に早急なマイナス金利解除へ動かなかったとしても「4月にはイールドカーブ・コントロール(YCC)撤廃とマイナス金利解除(短期金利0.0-0.1%に引き上げ)を行うと予想」(証券系シンクタンク)との声が聞かれます。
マイナス金利など異例の金融緩和解除が3月ではなく4月にずれ込むにしても、多くの政策委員会メンバーが環境としてはマイナス金利解除が可能な状況になりつつあると考えていると伝える報道が目立ちます。仮に3月会合でマイナス金利解除へ動かなくても、同会合後の日銀総裁会見で4月会合での解除に関する強い布石が打たれることも想定できます。
3月会合、特に総裁会見で実質的な4月解除確定のような発言があるかどうかまずは注視することになるでしょう。その際に円高・ドル安が強まり、ドル円のチャートポイントがヒットされる展開にも注意が必要です。
ドル円は、昨年末からの上昇2段上げが小休止した際の押し目2月1日の145.88円に近づきつつあります(図表2)。日銀が3月会合でマイナス金利など異次元緩和解除へ早期に動いたり、次回会合での行動を示唆したりすれば、このポイントを刺激して下落が加速しかねません。
賃上げをともなう物価安定推移の「確度」が高まりつつあるなか、3月会合でマイナス金利解除など異次元緩和からの脱却の是非が議論されるでしょう。議論を受けて緩和解除の行動や示唆につながり、テクニカルポイント突破へと向かうかどうか見定める局面となります。