NISAを避けたい人は「個人向け国債 変動10年」

資産形成の手段として、新しいNISA(少額投資非課税制度)が脚光を浴びていますが、NISAを利用するには、上場株式や株式投資信託を購入しなければなりません。資金の使い途や、ご本人の性格などから、これら以外の金融資産の方が適している場合もあるでしょう。


そのようなニーズに対して、国内金利が上がっている現状は、「個人向け国債 変動10年」が適しているといえます。


「個人向け国債 変動10年」とは


個人向け国債は国債の一種で、財務省が毎月発行しています。「国債は国の借金」と言われますが、政府が行なう事業の重要な資金源です。公共サービスに使われる資金を、投資家が期限付きで貸し付ける投資で、満期が来ると、投資家には額面金額が償還されます。国債の利子の支払いや元本の償還は、国の財政から行なわれます。


国債には様々な種類があります。個人向け国債は、その名の通り、購入できるのは個人のみ。通常の国債と比べて、個人投資家が利用しやすいように設計されています。販売窓口は銀行、証券会社などの金融機関。最低1万円から、1万円単位で購入できます。


個人向け国債は、「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類。いずれも、償還日までの間は年に2回の金利を受け取れるので、資産運用に利用されています。


このうち、金融市場の金利によって半年ごとに国債の利率が見直されるのが「変動10年」。一方、「固定5年」「固定3年」は、発行時に決まった利率が償還まで適用されます。


個人向け国債に限らず、金利タイプの「変動型」は、市場金利が上下すればそれに連動するように、運用期間中でも利率が見直されます。「固定型」は、最初に決められた利率が償還まで適用されます。


金利が上がれば利子が増え、超低金利時代は年0.05%が保証される



「個人向け国債 変動10年」の適用利率は、詳細な説明は省きますが、毎月実施される10年固定利付国債の落札結果が元になって決まります。


変動金利を「将来受け取れる金利が不確実」と捉えるとデメリットとなってしまいますが、金利上昇のタイミングでは、受け取るたびに利子が増えるため、変動すること自体がメリットになり得ます。


【グラフ1】は「個人向け国債 変動10年」の適用利率とその元になる基準金利です。個人向け国債は毎月発行されていますので、適用利率も毎月発表されています。



個人向け国債の利率は、最低でも年0.05%が保証されています。マイナス金利の期間が基準になっている2016年10月~2017年6月、2019年9月~2020年10月の利払いは、最低保証の年0.05%でした。


執筆時点で公表されているのは、2025年1月利払分(利払い期間2024年7月16日~2025年1月15日)の適用利率までで、年0.69%と決定しています。


実際にいくらの利子が受け取れたのか


では、約10年前に「個人向け国債 変動10年」を購入していたとしたら、どれだけの利子を受け取ることができたでしょうか。


【グラフ2】は、2025年1月15日に償還を迎える「個人向け国債 変動10年 第57回債」の受取利子(税引後)と適用利率の推移です。最後の半年間の適用利率も、すでに年0.69%に決まっています。2015年1月15日に発行されたこの国債を、額面100万円購入した投資家は、半年ごとに棒グラフで示された金額を受け取っています。最後の2025年1月15日には、半年分の利子として税引後2,749円が受け取れる予定です。



10年間この個人向け国債を持ち続ける間、最低保証である年0.05%の利子は、基準金利がマイナスになった場面も含めて12回ありました。


10年間で受け取る利子は20回ありますが、そのうちの12回が最低保証の利率です。当時は定期預金金利が0.015%でしたから、0.05%は約3倍。利率の最低保証ルールが効いていました。


この個人向け国債を10年間持ち続けた投資家は、合計12,704円の利子を受け取ることになります。超低金利の時期に「変動10年 第57回債」を保有していた投資家は、あと半年で償還です。最後になって半年ごとの利子は受け取るたびに増えていき、変動金利の特徴を体験できたことでしょう。


今後も金利が上昇すると考えるならば、リスクを取りたくない人や、NISAとは別の安全性重視の運用先として、「個人向け国債 変動10年」は選択肢の一つとなるのではないでしょうか。


【関連サイト】個人向け国債(財務省)


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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