トランプ大統領の妄言・虚言で右往左往の市場
第2次トランプ政権が始まって以来、トランプ大統領の発言に市場が大きく左右されています。
まさに「朝令暮改」という言葉がぴったりなことで、午前中に伝わっていた言葉が、午後には正反対であったりします。
高齢なことで前言を覚えていないというようなことではなく、その都度思ったことをつい話してしまうようです。
しかも、少し調べれば正しくないことであっても、何も考えないで発言します。
酷かったのは、5月21日に行われた南アのラマポーザ南ア大統領との首脳会談です。
全く南アと関係ない国の写真や記事を利用し、南アで虐殺が行われているとまで平然と話すほどです。
このような、トランプ大統領の妄言、虚言と付き合う各国の要人は大変でしょうが、金融関係者もその都度反応せざるおえず毎日右往左往となります。
一部では、この発言がいずれ撤回されるだろうと思う発言や、この会談の後はこのような発言をするだろうな、という予想がつくものがあります。
そうであるにも、関わらず市場は織り込み済みとは貼らずに反応することがあります。
では、なぜ金融市場(なかでも為替市場)はその都度、反応するのでしょうか?
織り込み済みでも市場が反応する理由
市場がサプライズとならない発言でも、大きく反応することが多々あります。
例えば20-22日に行われたG7財務相・中央銀行総裁会議に際して、日米財務相会談が行われました。
水面下ではドル高・円安是正の話がされているかとは思われますが、この会談後にドル高是正を話し合ったとは会見で述べることはまずないと思われていました。
理由としては、台湾や韓国などとも同様な話し合いが持たれている可能性があり、円だけに対してドル高是正を発表すると他通貨への影響が多いこと。
今回の会談は関税協議とは別なことで、財務省間だけでは決定しにくいこと。
6月中旬にG7サミットが行われ、この首脳会談の方が発表の場とは適していること。
などが上げられました。
ただ、それにもかかわらず、ドル高是正などの発表がなかったことが伝わるとドル高・円安に市場は反応しています。
なぜ、ある程度予想していたことなのに、想定通り(織り込み済み)で無反応とはならずに、市場が反応してしまうのでしょうか?
大きな要因としては、アルゴ取引が大きく反応することがあるからです。
様々なアルゴリズムがある中で、通信社のニュースで、財務省間で為替についての協議がなかったらドル買い・円売りというものを入れておきます。
その場合は、織り込み済の発言でもアルゴ取引がドル買いに走ってしまうのです。
本来はここまで反応する必要がないことでも、暴走気味に反応することがあります。
サプライズではない発言に反応してはいけない
5月23日のNY市場では、トランプ米大統領が自身のSNSに「6月1日から欧州連合(EU)に50%の関税を課すことを提案する」と投稿しました。
この投稿が伝わると欧州株・欧州債が下落し、ユーロドルも売られる展開になりました、
ただ、この動きも引けにかけてはほぼ落ち着いて終わっています。
市場は万が一に再来週から50%まで関税が引き上げられたらという恐怖感から動きました。
また、23日は金曜日ということもあり、市場流動性が低いことや、週明け後に市場がとんでもないことになってはいけないというリスク回避姿勢で過剰に反応しました。
ただ、26日月曜日(NYでは25日日曜日)の日本時間早朝には「EUへの50%関税の7月9日までの延長に同意」とトランプ米大統領が前言撤回。
週末にフォンデアライエン欧州委員長と会談をもったことも伝わりました。
もともとが7月9日まで延長していた関税賦課に対して、大統領が8-9日後に関税賦課を前倒しするということ自体難しいことでしょう。
要するに、23日のトランプ大統領の発言はある程度否定されると思うべきことだったといえます。
ただ、これに対しても市場は過敏に反応しました。
ユーロドルなどは売られた分を買い戻し、前週に続いていたドル売りの流れに戻るのは頷けます。
しかし、それよりも過度に反応したのがドル円で、142円前半から143円台までリスク選好期待でドル買い・円売りに動きました。
ただ、否定発言がでるのは想像できることを無視して過度に反応したことで、やはり市場は冷静さを取り戻すと、すぐに再び元の水準に戻しました。
サプライズとなる報道は数日のトレンドを形成
一方で、先週はサプライズとなる報道が27日には流れました。
財務省が国債市場参加者を対象に、国債の発行額についてアンケートを送付していることが判明したことです。
これは、 超長期債利回りの歴史的上昇を受け、財務省が2025年度国債発行計画の年限構成を再検討することになったわけです。
このようなサプライズの発表が起きると、市場は大きく反応するだけではなく、数日にわたってその余波を受けます。
実際に27日から数日にわたってドル円は値幅を伴って上昇しました。
ここ最近は様々な発言が伝わりますが、発言者には信念があって発言しているかが重要です。
トランプ大統領は、ブラフが多いことで、簡単に前言を撤回することが多くあります。
出た発言に反応することは重要ですが、それがサプライズとなる発言なのか否かということを考えないで、やってはいけません。