帝国データバンクは6月28日、主要食品メーカー195社の価格改定動向調査を発表しました。同調査によると、2024年7月は411品目が値上げされることとなり、2024年累計(予定分を含む)で1万品目を突破。さらに今秋には再び値上げラッシュの見通しとしています。
値上げが1万品目を超えるのは3年連続。2023年に値上げ予定品目が1万品目に到達したのは年初早々の1月でしたが、ことしは6月と前年より5カ月遅いペースとなっています。
前述したように7月の値上げ自体は411品目で、これは3000品目を超える大規模な値上げラッシュとなった前年同月(3595品目)に比べ、88.6%減と大幅に減少しました。値上げ品目が前年同月を下回るのはこれで7カ月連続です。また、値上げが1000品目以下の水準にとどまったのも3カ月連続。ここまでの数字を見ると、値上げは緩やかになっていると言えるかもしれません。
ですが、7月単月における値上げ1回あたりの平均値上げ率は14%となり、2024年1-11月(予定分含む)では17%となりました。2023年の値上げ率平均15%を上回る水準で、より値上げの影響が厳しくなっているとみることもできます。
品目別では、7月の値上げは「酒類・飲料」が全食品分野で最も多い199品目でした。輸入ワインなど洋酒のほか、コーヒー製品が値上げ。「菓子」(75品目)は、6月に続きチョコレート製品の値上げが目立ったほか、米菓やスナック菓子製品も値上げの対象となりました。「パン」(37品目)は、輸入レーズンやチョコレートの価格高騰を受け、一部製品で1年ぶりの値上げでした。
値上げの品目数についての推移(帝国データバンク公表データをもとにDZHFR作成)
値上げの要因では、2023年にあった原材料高や人件費ももちろんありますが、ことしは「円安」の影響が広がっています。2024年(1-11月)に予定されている値上げ品目のうち、「円安」を要因とするものは品目数ベースで29.8%。前年同期の11.6%に比べ、約3倍の水準に拡大しています。
また、前述した「原材料高」は依然要因としては最も大きい割合を占めており91.7%。特に春以降、猛暑や干ばつなど天候不順による不作により、カカオ豆やコーヒー豆、オリーブ、オレンジなどの輸入果汁の価格が高騰しており、値上げにも大きく影響していることはみなさんよくご存じだと思います。価格の改定幅が5%や10%にとどまらず、20%や30%を超えるものもみられることから、前述した値上げ率の平均を引き上げるのにもひと役かっていると言えるでしょう。
2024年問題による物流費由来の値上げも、2024年(1-11月)は64.2%となり、前年同期の57.5%を上回る水準で推移しています。
大雨や猛暑、干ばつをはじめとする世界的な異常気象をはじめ、働き方問題や為替など、あらゆる要因でコストプッシュ型の値上げが進行しており、かつ価格が戻りにくくなっていることから、足もとの価格上昇は長期化する可能性が高くなってきていると予想されます。
先行きでは、2024年10月の食品値上げ予定品目数が6カ月ぶりに1000品目を超えるもようです。一部の原材料や包装資材では一層の値上がりが見込まれるものもあり、帝国データバンクでは、今秋にかけて大規模な値上げラッシュが発生するとみられる、と予想しています。
とはいえ、為替は1ドル160円を超えることも珍しくなかった水準から、7月18日時点では円高ドル安方向に振れており、1ドル155円台を付ける場面もありました。日銀による利上げ観測や、トランプ前米大統領の発言などからは、これまでのような円安は許容されない空気も醸成されつつあり、為替が輸入物価に大きく影響する展開が秋以降やってくるかもしれません。