【もち合い相場の原理とは】

もち合い相場とは

もち合い相場とは、価格の値動きが横ばいで推移している状況をいいます。ある一定の値幅の範囲で買いたい投資家と売りたい投資家が拮抗(きっこう)している状態です。


心理的側面からは、市場への強気(楽観)の見方と弱気(悲観)の見方、価格の過小評価と過大評価などが拮抗(きっこう)している状況ともいえます。


上昇相場でも下降相場でも、一本調子で上がったり、下がったりすることはなく、途中で休息をいれながらトレンドを形成してきます。


図表1に示したように、もち合い相場は上昇相場や下降相場の中間に現れるもので、「踊り場」とも呼ばれています。代表的なものに「三角もち合い」があります。


三角もち合いとは

三角もち合いとは数週間か、あるいは数カ月かけて上げ下げを繰り返しながら、徐々に変動幅を縮小していく価格推移を指します。「トライアングル」ともいわれます。


三角もち合いを形成する要件としては、少なくとも2つの高値と2つの安値が必要です。その高値同士を結んで右へ延長した抵抗線と、安値同士を結んで右へ延長した支持線とで形成されます。


三角もち合いを形成する抵抗線か支持線かを突き抜けた後の価格の変化幅は、三角もち合いに入る前までの価格の変化幅や、三角もち合い形成中の最高値と最安値の差を目安とすることがあります。


対称三角形「シンメトリカル・トライアングル」

三角もち合いには、大きく分けて3つあります。上値が一定で下値が切り上がる「上昇三角形」、下値が一定で上値が切り下がる「下降三角形」、下値が切り上がる一方で上値が切り下がる「対称三角形」です。ここでは、「対称三角形」について解説します。


対称三角形とは、数週間、まれに数カ月をかけて形成されます。もち合い中の節目となる複数の高値を結んだ抵抗線が右下がりとなる一方、節目となる複数の安値を結んだ抵抗線が右上がりとなります。もち合い期間中の最高値と最安値の中央値に収束していくようにみえる価格推移です(図表2)。「シンメトリカル・トライアングル」とも呼ばれます。


出来高はもち合い期間の初期に多く、値動きが収束するにしたがって減少していく場合が多いです。もち合いは最終的にどちらの方向に動くかの判断は難しく、もち合いが開始される前のトレンドに戻るとは限りません。


もち合い放れはなぜ起きるか?

相場格言に「もち合い放れにつけ」というものがあります。もち合い後の抵抗線の上方突破や支持線の下方突破によって発生したトレンドの方向に追随せよ、という意味です。


例えば、もち合い局面を経て下落を予想した売り手は、抵抗線を上回ってきた時点で、反落を信じて空売りポジションを追加します。


一方、上昇を予想した買い手は買いを追加するため、上昇は容易には止まりません。ついには自信過剰の売り手は買い戻しを強いられ、結果的に上昇を加速させてしまうことになります。


これをみて買い乗せをする投資家や、いったん利益確定した買い手の再参入の買いなどが重なり、売買高の増加を伴って強く上昇します。売買高の増加や強い上昇が多くの投資家の関心を呼ぶことになり、上昇相場が形成されていく流れとなります。図表3は、トヨタ自動車の例を挙げています。


逆のケースで、もち合い局面を経て上昇を予想した買い手は、支持線を下回ってきた時点でも自分自身への過信により、相場は反騰すると信じ、ポジションを継続保有する、もしくはナンピン買いをします。


一方、下落を予想した売り手は売りを追加するので、相場は下がります。ついに自信過剰の買い手も評価損が膨らむことで処分売りを強いられ、結果的に下落を加速させてしまうことになります。


これをみて売り手が売り乗せすることや、いったん買い戻しをした売り手の再参入の売りなどが重なり、売買高の増加を伴って強く下落します。売買高の増加や急落が多くの投資家の関心を呼ぶことになり、下降相場が形成されていく流れとなります。


いずれにしても、もち合い相場をブレイクする時には、しばしば急激な動きが起こるので、機敏な建玉管理やリスク管理が必要となります。


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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