東証は8月19日、市場区分の見直しに関するフォローアップ会議を開催しました。これまでも定期的に行っているものであり、今回で17回目の開催となります。
同会議では、その名の通り市場区分の見直しに関して議論が行われるわけですが、今回は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」についてと、MBO・支配株主による完全子会社化に関する企業行動規範の見直しについて、特に議論が行われました。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況については、2024年7月末時点でプライム市場の86%(1406社)、スタンダード市場の44%(701社)が開示(検討中を含む)を行っています。5月末時点から、プライム市場では218社増、スタンダード市場では221社増となりました。
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況(単位 %)
東京証券取引所公表資料よりDZHFR作成
同会議では、取り組みに着手する動きが見られていると一定の評価をする一方、中長期的な企業価値向上に結実するまでには、相応の時間が必要であり、改革は「途上」と認識する、としています。
また、企業の対応状況に関して機関投資家などに行ったヒアリングを踏まえると、上場企業の目標や取組みが投資者の期待に応えたものとなっていないなど投資者との目線にズレが生じていることや、投資者とのコミュニケーションを十分に行えていないことなどの課題もあるようです。
その上で、上場維持コストが増加し、非公開化という経営判断が増加することも想定されるが、そうした判断も尊重(東証として上場企業数に重点は置かない)と方針を説明しています。
そのため、2つ目の議題であるMBO・支配株主による完全子会社化に関する企業行動規範の見直しについても、進めているわけです。
「公正なM&Aの在り方に関する指針」を策定し、一般株主の利益を適切に確保する上で課題と考えられる点などについて、市場関係者の意見を取りまとめています。
公正と判断するのに、市場ではしばしば買い付け価格ベースのPBRが1倍を超えているかどうかが指標となりますが、同会議では公正な手続を通じてベストな価格が実現されることが重要との意見がよせられていました。
そのため、一般に有効性が高いと考えられる典型的なものとして、特別委員会の設置などの公正性担保措置を提示することを指針として上げており、独立した特別委員会が、当該M&Aの是非、取引条件の妥当性・手続の公正性について検討・判断するべきと指摘しています。
また、一般株主が保有する株式の過半数の支持を得ることを当該M&Aの前提条件とし、当該前提条件をあらかじめ公表するマジョリティ・オブ・マイノリティ条件を設けるなどの意見もありました。
逆に言えば、親会社から出向した役員らが席の大半を占める取締役会による密室の判断で決めることは公正ではなく是正していくべきですから、少数株主となることが多い個人投資家の立場からは、ぜひとも取り組みをさらに進めていってもらいたいものですね。
東証がこうした姿勢を示し取り組みを進めていくことで、MBOや親子上場解消のためのTOBは今後も増加していくことが予想されます。業績などはもちろんですが、資本関係や株主構成などについてもチェックし、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する企業側の姿勢も見ていくことで、次のMBO、TOB候補を探しあてることができるかもしれません。