米国株8月月間回顧 ー ダウ平均が最高値更新

8月は主要3指数が上昇 ダウ平均は最高値更新


8月の米国市場では、ダウ平均が1.76%高、S&P500が2.28%高とそろって4カ月続伸し、ナスダック総合も0.65%高と反発しました。一方、7月に10.10%高と急伸した小型株指数のラッセル2000は1.63%安と反落しました。


上旬は2日に発表された米7月雇用統計が予想以上に悪化したことで景気後退(リセッション)懸念が強まったことや、日銀の利上げを受けて低金利の円を借りて世界のリスク資産に投資する円キャリートレードの巻き戻しの動きが強まり、世界的な株価急落に見舞われました。5日の取引で日経平均が4451円安と1987年のブラックマンデー以来の急落となり、ダウ平均も1034ドル安(-2.60%)と. 2022年9月以来の下落率を記録しました。


しかし、米国のリセッションへの過度な警戒感が和らいだことや、日本株が大幅反発したことが安心感につながり6日に大幅に反発すると、その後も堅調が続きました。

中旬は米7月生産者物価指数(PPI)や米7月消費者物価指数(CPI)がインフレ鈍化を示し、利下げ期待が高まったことが株価上昇を後押ししたほか、7月小売売上高が予想以上に増加し、新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことでリセッション懸念が和らいだことでセンチメントが一段と改善しました。


下旬は金融政策の見通しが追い風となりました。21日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、大多数の当局者が9月の利下げは適切とみていることが明らかになったほか、注目された22-24日開催のジャクソンホール会議では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げの時期や幅を明確に示さなかったものの、「政策を調整する時が来た」とし、利下げ転換を示唆しました。


最終盤はソフトランディング期待や利下げ期待が続き、景気敏感株を中心に堅調が続きましたが、決算を発表したエヌビディアが大きく下落したことでハイテク株は上値の重い展開となりました。


ダウ平均は5日の急落後、13日には終値で急落前の水準を回復し、下旬は26日から30日までほぼ連日で取引時間中と終値の史上最高値を更新しました。

S&P500も26日に取引時間中の史上最高値まで18.05ポイント(0.32%)に迫りました。

ハイテク株主体のナスダック総合は7日に史上最高値から13%超下落し、「調整相場」入りとなりましたが、月末は最高値からの下落率を5.01%に縮小して終了しました。


上旬に悪化したセンチメントも大きく回復しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は7月末の16.36ポイントから5日に一時65.73ポイントまで急騰しましたが、月末は15.00ポイントで終了し、月間では1.36ポイントの低下となりました。


セクター別では9セクターが上昇し、2セクターが下落


S&P500の11セクターは、8月は9セクターが上昇し、2セクターが下落となりました。


月間騰落率上位は、生活必需品が5.8%高と大幅に2カ月続伸し、不動産が5.6%高、ヘルスケアが5.0%高とともに大幅に4カ月続伸となりました。このほか、金融、公益、資本財もS&P500(+2.3%)を上回る上昇となりました。


一方、月間騰落率下位は、エネルギーが2.3%安、一般消費財が1.1%安となったほか、IT、コミュニケーションが1%台の上昇にとどまりました。


ダウ平均採用銘柄は22銘柄が上昇し、8銘柄が下落


ダウ平均採用銘柄は、8月月間で22銘柄が上昇し、8銘柄が下落しました。


予想を上回る第2四半期決算や通期見通し引き上げが好感されたウォルマートが月間で12.5%高と急伸したほか、ナイキも著名投資家のビル・アックマン氏率いるパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントが300万株以上(約2億2900万ドル)を取得したことが好感され11.3%高となりました。マクドナルドは低価格メニューの継続方針や、アナリストの目標株価引き上げが好感され8.8%高となりました。-


一方、予想を下回る決算や赤字見通し、レイオフなどが嫌気されたインテルが28.3%安と急落し、ボーイングは投資不適格級(ジャンク)への格下げ懸念や、主要部品の欠陥で新型機の試験飛行を中止したことが嫌気され8.8%安となりました。






国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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