老後のお金のはなし

【老後の新常識】心配なのはお金だけ?非金融資産を築く重要性を解説

人生100年時代と言われるなかで、多くの方が「老後の生活」について、漠然とした不安を抱えているのではないでしょうか。「老後2000万円問題」という言葉も話題になり、十分な貯蓄がないと安心して老後を迎えられないのでは…と感じている方も多いかもしれません。


しかし、本当に老後の安心は貯蓄額だけで決まるのでしょうか?実はお金と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な見えない資産があるのです。

この記事では、定番の老後資金の話から一歩踏み込み、お金では測れないけれど豊かな老後を送るために不可欠な「非金融資産」に焦点を当てます。健康・スキル・人とのつながりといった見えない資産を年代別・ライフスタイル別にどう育てていけば「真の安心」につながるのか、具体的な方法を紹介します。


老後がそれほど心配でない人の共通点とは?

「老後の生活について、あまり心配していない」という方々に目を向けてみると、興味深い共通点が見えてきました。

お金以外の面でも、将来に向けた「備え」を意識的に行っていることが多いのです。例えば、健康維持に努めている、年齢を重ねても活かせるスキルを磨いている、地域社会や趣味の仲間との良好な関係を築いている、といった点が挙げられます。

お金に変えられない資産こそが、実は老後の生活の質を大きく左右し、生きがいにもつながるのかもしれません。



老後の安心を支える3つの非金融資産

本章では、特に重要と考えられる3つの非金融資産をご紹介します。


健康資本

健康は幸せな老後を送るための最も基本的な土台です。いくらお金があっても、健康を損ねてしまってはやりたいこともできず、生活の質は大きく下がってしまいます。


日頃から適度な運動やバランスの取れた食事、質の高い睡眠を心掛けることは、将来への最高の投資と言えるでしょう。


元気な体と心があれば趣味を楽しんだり、旅行に出かけたり、働き続けたりと活動的な生活を送ることができ、老後も心身ともに健康でいられます。


人的資本(スキル・知識・経験)

人的資本には、仕事で培ってきた専門的なスキルや知識、長年の経験だけでなく、趣味や地域活動を通じて得た知恵やノウハウも含まれます。

定年退職後も人的資本を活かして、パートタイムで働いたり、ボランティア活動に参加したりして社会とのつながりを保ち、社会とのつながりを保ち、生きがいに繋がります。


また、変化の激しい時代だからこそ、新しいことを学び続ける意欲も生きがいにつながるのです。


社会資本(人とのつながり・信頼関係)

家族や親戚、長年の友人、職場の元同僚、趣味の仲間、近所の人々など人とのつながりや信頼関係は、老後の生活において大きな心の支えとなるでしょう。


困ったときに助け合える関係、気軽に話せる相手がいることは、孤独感を和らげ日々の生活に彩りを与えてくれます。


年代とライフスタイル別・非金融資産の育て方

非金融資産を育てるには、年代やライフスタイルによって優先順位は変わってきます。

40代・50代は貯蓄を充実させつつ、将来を見据えた見直しを行う時期です。健康資本については、体力の変化を感じ始める時期であるため、無理のない運動を継続して生活習慣病予防を意識した食生活への見直しが重要になります。メンタルヘルスのケアとして、趣味やリフレッシュの時間を確保することも欠かせません。


人的資本の面では、これまでのキャリアで培った経験やスキルを整理し、セカンドキャリアや定年後の働き方を具体的に考え始める良い機会です。リスキリング(学び直し)に挑戦したり、人脈を活かして新しい分野での活動を探してみるのも良いでしょう。


社会資本については、職場以外のコミュニティを見つけるのがおすすめです。例えば、地域活動・ボランティア・趣味のサークルなどに積極的に関わり新しいつながりを広げていくことが挙げられます。


60代以降は、心豊かに過ごし始める時期です。健康寿命を延ばすことを第一に、ウォーキングやラジオ体操といった無理のない運動を習慣化し、バランスの取れた食事と十分な休息を意識します。持病がある場合は、医師の指示に従った適切な治療と管理が重要です。


人的資本の面では、今までの知識や経験を活かし、短時間労働や地域貢献活動などを通じて社会との関わりを持ち続けることが、心身の健康維持にも良い影響を与えます。新しい趣味や学びを始めることも生活に新たな刺激や楽しみをもたらすでしょう。


社会資本については、家族や友人との時間を大切にし積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。地域のイベント参加や趣味の活動を継続することで、孤立を防ぎ、充実した人間関係を維持しましょう。


一方で、ライフスタイルによっても意識すべきポイントは異なります。例えば、独身世帯の場合は、健康管理への意識を特に高く持ち、頼れる友人や地域のつながりを築いておくことが、老後の安心感を大きく左右します。


結婚している場合は、お互いの健康を気遣い、共通の趣味を持つなどお互いの時間を大切にすることが、老後の生活の質を高める上で重要です。



まとめ

老後の心配というと、どうしても「お金がいくら必要か」という点に目が行きがちです。もちろん、経済的な準備は老後の安心を支える上で非常に大切ですが、それだけを心配していては本当の意味で満足のいく老後生活を送ることは難しいかもしれません。

今回ご紹介した「健康資本」「人的資本(スキル・知識・経験)」「社会資本(人とのつながり)」といった非金融資産は、私たちの老後の生活の質を大きく左右します。


「貯蓄額」という目に見える数字だけでなく、これらの非金融資産の残高も意識しながら、年代やライフスタイルに合わせてバランス良く育てていくことが大切です。それが、変化の時代においても、自分らしい生き方の道しるべとなるのではないでしょうか。


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独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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