トランプVSパウエル
トランプ米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対し、執ように嫌みを繰り返しています。ときに解任もちらつかせ、利下げを支持する人物を指名する考えまで示します。FRBの独立性を脅かすトランプ氏の言動に市場は米債・米株・ドル売りとトリプル安で答え、同氏はパウエル氏の解任に踏み切ることはできなかったが、いち早く議長の交代を望んでいます。
そもそもパウエル氏が弁護士や投資銀行での勤務や財務次官などをへて、FRB議長に就任したのは2018年2月であり、議長に指名したのはほかでもない大統領1期目のトランプ氏です。不動産会社を経営してきたトランプ氏は、当時から「低金利政策」が好ましいと公言しました。パウエル氏は「低金利政策」をとってきたイエレン元議長とも考えが近く、官民双方での経験の豊富さなどが評価されました。
ただ、新型コロナの影響が広がる中、トランプ大統領の目には、「FRBの対応が遅い」と映り、追加の利下げやマイナス金利の導入を求めるなど繰り返し圧力をかけました。さらに、FRBが記録的なインフレを見誤った苦い経験も追い打ちとなりました。
次期FRB候補
パウエル議長の任期は2026年5月までですが、早くも次期議長の選任が始まっています。ベセント米財務長官は9月1日前後にFRBの次期議長候補の面談をすると説明し、候補者が11人いることも明らかにしました。
候補の11人
クリストファー・ウォーラ:FRB理事。早期利下げを支持し、7月のFOMCで金利の据え置きに反対票を入れた。
ミシェル・ボウマン:FRB副議長:金融監督担当の副議長で早期利下げを支持。7月のFOMCでは利下げを主張し、金利据え置きに反対票を投じた。
フィリップ・ジェファーソン:FRB副議長。経済学者で労働市場分析に強い。バイデン政権で副議長に任命され、政策を巡ってパウエル氏との見解の違いを示したことはない。
ロリー・ローガン:ダラス連銀総裁。FRB内部の経験が豊富で、一貫してタカ派であり、最近ではインフレが高止まりしている間の利下げに懐疑的な姿勢を示している。
ラリー・リンゼー:元FRB理事。ブッシュ(父)政権で政策立案特別補佐を担当するなど、共和党政権で要職を歴任。
ジェームズ・ブラード:前セントルイス地区連銀総裁。FRBの独立性が尊重されることを前提に議長就任の提案を受け入れると発言。
ケビン・ハセット:経済学者。第1次トランプ政権で経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、大型減税を推進した。
ケビン・ウォーシュ:スタンフォード大学フーバー研究所の特別客員研究員。元FRB理事で、政策スタンスはタカ派寄りとみられている。
マーク・サマーリン:エコノミスト。ブッシュ(父)元大統領の経済顧問。政策立案経験が豊富。
リック・リーダー:米運用会社ブラックロックのシニア・マネージング・ディレクターであり、グローバル再建担当最高投資責任者(CIO)。
デービッド・ゼルボス:米投資銀行ゼェフリーズのチーフマーケットストラテジスト。最近、FRBは政治的な存在とも発言している。