個人投資家は「自民党の派閥」をどのように考えるべきか

2024年10月27日に衆議院選挙(総選挙)が実施されることが決まりました。あらたに発足した石破茂内閣の信任投票といえるでしょう。今回の自民党総裁選、および内閣の組閣にあたっては、既に解消したはずの派閥の支持が最終的な勝負を分けたとも報じられています。


派閥は自民党の、ひいては内閣の経済政策にも大きな影響力を見せますが、個人投資家はどのように考えるべきなのでしょうか。派閥は各々の投資家が日頃見ている経済の世界とは一見距離のあるものですが、実は未だに大きな影響力を有しています。



派閥と政策集団

2024年に政治資金パーティをめぐる裏金問題が発生し、自民党の派閥の多くは解散を表明しました。残ったのは志公会(麻生派)と呼ばれる一派閥のみです。ほかの派閥は実際に解散するか、政策集団と名を変えて事実上存続する形となりました。今回の総裁選のように、有事となった際に再び集まろうという温度感のところも目立ちます。


とりあえず世の中から見たときに「派閥ではなく、自民党の大傘のもとで政策を考える集団」という立ち位置が構成されたことは間違いないでしょう。


もともと自民党の派閥は1955年の結党時に由来します。自由党と日本民主党による保守合同を経て自由民主党が結党されたものの、党内の結束力は脆弱で、解党・分裂が常に懸念される状況でした。そこで経歴や信条、政策の近い人間が派閥を構成し、担ぎ上げた領袖(派閥のリーダー)を自民党総裁(事実上の総理大臣)にすべく奮闘します。


その流れは今回も健在です。2024年9月に行われた自民党総裁選挙にて、旧派閥の意思決定により勝負が決まりました。派閥や領袖の経験者(派閥のリーダー)の意思決定により票が動き、新総裁が誕生します。不法行為の温床となった派閥は本当に解散したのか、解散したように見えるだけなのか。自民党からは派閥が解散したとのメッセージが発信されるなか、受け手の有権者によって見方は分かれます。


ブレる新総裁

現政権の誕生がこのような経緯のため、投資家がもっとも気になる経済政策も一筋縄ではいきません。現総裁はもともと党内では非主流派の期間が長かったため、従来貫いてきた主張を通す党内力が構築されていません。そこに政策集団の思惑が重なっているため、より有権者から「この人は何をしたいんだろう」と見えづらくなっています。


内閣発足後に報じられるニュースを見ながら、「あれ、こういう考え方の人だったっけ」と思った人も多いでしょう。


最近はさらに複雑化し、地盤の緩さに公認問題や比例名簿の非掲載処置が絡みます。日々ハレーションが複雑化している状況で、総選挙後の政権運営を憂う声も高まってきました。これを自民党の自浄効果と見るか、党内混乱と見るかは、10月末の総選挙の結果がひとまずの答えとなるでしょうか。


個人投資家にとっての派閥

政権与党である自民党は従来より、経済政策に関してもさまざまな意見を有しています。石破内閣でいえば、当面は総選挙における経済政策が投資家にとっての期待値となっていくでしょう。金融政策においては政策金利の利上げにおいてセンシティブな時期でもあり、また物価や為替への影響も大きいため、政権与党が「思い切った張り方」ができないテーマでもあります。


一方で有権者に「選挙の際に何を重視するか」と質問をすれば、経済政策や家計への政策が最上位に来ることもまた事実です。総選挙のタイミングに合わせて、日本の為政者の背景にどのような意思決定集団があるのかを考えることは、投資家としての勝ち筋を探すことにも繋がります。そして、それは従来自民党を代表する形だった「派閥という組織」に帰結していくことでしょう。



これから派閥はどうなるか

では2024年の総選挙後、派閥の仕組みはどうなるのでしょうか。世の中の反発がとても大きいため、派閥が名を変えた政策集団としての活動が肯定的に報じられる機会は少なくなっていくでしょう。


それでもこれだけの政党において、誰か一人の意思決定がすべて通ることは現実的に考えられません。また純粋な政策の繋がりだけでチームが組まれたとしても、その繋がりは脆弱なものであり、「自分たちの欲する総理大臣を」という動きと比較すれば確実に弱いものです。特に政治だから、自民党だからということではなく、社会における組織・団体の生まれ方として、派閥のようなものは残ることでしょう。


投資家にいたっては、総選挙後に進む各種施策の背景にどのような考え方の集団があるのか、あらためて慎重に見通すべきタイミングではないでしょうか。


最後に付け加えると、現在の政権与党は複数政党によるものであるため、そもそも自民党だけで意思決定が完結するものではありません。きわめて複雑な構図ですが、投資に限らず自分たちの生活、そして何より「これからの担う子供たちの時代」に繋がっていく社会です。強い関心をもって注視していきましょう。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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