最近よく耳にする「年収103万円の壁」について詳しく知っていますか?
2024年の衆議院選挙で国民民主党が手取りを増やす政策の一環として、年収103万円の壁を引き上げる方針を打ち出しましたが、詳しくは知らない人もいるのではないでしょうか。
本記事では今さら聞きにくい年収103万円の壁について解説しつつ、よくある質問へも回答します。ぜひ参考にしてみてください。
年収103万円の壁とは?
「103万円の壁」とは、配偶者控除の適用基準となる年収を指す言葉です。配偶者(主に専業主婦・主夫)の年間収入が103万円以下の場合、世帯主の所得税や住民税から一定額が控除され、税金の支払いは一部免除されます。
年収103万円の壁について理解を深めるために「所得税」と「配偶者控除や扶養控除」について解説します。
年間収入が103万円以下であれば、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)により所得税の支払いは発生しません。しかし、この金額を超えると所得税・住民税の支払いが発生するのです。
2つ目に挙げた「配偶者控除や扶養控除」への影響については、配偶者の年収が103万円以下の場合、世帯主は最大38万円の所得控除を受けられます。また、16歳以上の子供や祖父母などがいる家庭についても同様で、年収が103万円未満の人は扶養控除の対象です。控除額は年齢に応じて異なり、以下の金額を参考にしてみてください。
・一般の控除対象扶養親族:38万円
・特定扶養親族(19歳以上23歳未満の方):63万円
・老人扶養親族(70歳以上の方):48万~58万円
具体例を挙げると、世帯主の所得税率が20%(年収で330~695万円未満)の場合、38万円の所得控除により年間約7.6万円の節税効果が得られる仕組みです。
家族全員の手取り収入を最大化するため、配偶者や子供が意図的にアルバイトの労働時間を調整して年収103万円以下に抑えるケースも多く見られます。
103万円の壁を超えるとどうなる?
103万円の壁を超えた場合、世帯全体の収入が減るため、注意しなければなりません。世帯主に適用されていた配偶者控除(最大38万円)が受けられなくなるので、税負担が増えます。同時に所得税・住民税の支払い義務が発生するため、年収100万円のときよりも手取り収入が減ってしまいます。
また、一部の企業が独自に設定している配偶者手当も支給が停止する可能性があるため、勤務先の就業規則を確認しておくのがおすすめです。一般的な配偶者手当は月額1~2万円であり、年間で約12~24万円程度の収入減となる可能性があります。
103万円の壁で住民税の支払いはどうなる?
住民税とは私たちが住む地域に支払う税金のことです。103万円の壁における住民税の扱いは所得税とは異なり、年収100万円を超えると翌年度から支払い義務が発生する可能性が高いです。
住民税は前年の収入にもとづいて計算され、一定額を超えると課税対象になります。具体的な税額はお住まいの地方自治体によって異なりますが、所得金額から基礎控除を差し引いた後に標準で10%の税率がかかります。
他にも考慮しなければいけない年収130万円の壁
年収の壁にはほかにもあり、100万円台のなかでもっとも税金の支払いが大きくなるのは年収130万円です。
年収130万円を超えると世帯主の社会保険上の扶養から外れるため、社会保険料(国民年金保険料や健康保険料など)の支払いが発生するのです。
「103万円の壁」や「130万円の壁」を解説しましたが、年収100万円台であると手取り収入が増えにくい税金の仕組みが構築されている点は押さえておきましょう。
国民民主党が掲げる政策案は?
国民民主党は今までの賃金上昇率を根拠として「103万円の壁」を撤廃し「年収178万円の壁」に引き上げるべく政策を打ち出しました。具体的には、従来の103万円という基準を大幅に引き上げ、より柔軟な働き方を実現する制度改革を提案しています。
他の政策案については、配偶者控除の収入制限を引き上げることや、世帯単位から個人単位の課税制度へ移行する案が含まれています。また、パートタイム労働者の待遇改善や、社会保険の加入基準の見直しなども併せて条件に入れています。
今まで年収の壁を考慮して働き控えしていたパートタイマーやアルバイトにとっても朗報です。さらに労働するすべての国民の所得税の支払い額も減るため、まさしく全国全員の手取りが増える政策といえます。
2024年に行われた衆議院選挙によって、自民党・公明党が総議席の半数に満たない少数与党として政権を運営する状況になりました。国民民主党の意見がどこまで反映されるかはわかりませんが、私たちの手取りを増やす政策が実現することを願っています。