能登半島地震 石川・北陸の支援における寄附金控除について

2024年1月1日に石川・北陸地方を襲った大地震の被害に遭われた方に、心よりお見舞いを申し上げます。投資メディアに連載を持つ者として自分ができることは、今後復興段階を迎えるにあたって少しでも支援の一助となる情報を届けることです。今回は、私たちが金銭による支援をするときに所得税と住民税のメリットが生まれる寄附金控除について解説します。



ふるさと納税で馴染み深い寄附金控除

寄附金控除と聞くと気が付きにくいですが、地方自治体に向けて金銭を納付して、2,000円を引いた金額が所得控除になる仕組み、と聞けば馴染み深いと思います。返礼品が魅力的なふるさと納税です。毎年年末が期限であるため、CMが耳に残っている方も多いでしょう。


ふるさと納税は寄附金控除を使った仕組みです。通常の寄付金控除は確定申告が必要ですが、ふるさと納税の多くはワンストップ納税という仕組みを導入し、個人による確定申告を不要としています。


一定の寄付金を支払ったときは寄附金控除の対象

ふるさと納税に限らず、納税者が国や地方公共団体などに対し寄附を行った際は、税法上のメリットが生じます。ふるさと納税ではないため、個人であれば確定申告をすることによって所得税の寄附金控除の対象となる仕組みです。また住民税においても、税額控除の対象となります。法人の場合は、寄附を行った全額が損金に算入されます。


この仕組みを活用するにはどの組織に寄附しても良いわけではなく、公式に認められた組織に対する寄附金が対象となります。寄附金控除となる送金先は2種類あります。


まず国や地方公共団体に対する寄付金は「特定寄付金」です。加えて公益社団法人や公益財団法人、公益を目的とする事業を行う法人に対する寄附は「指定寄付金」となります。指定寄付金となる場合は一般に広く募集されているもの、かつ緊急性と公益性が高いと財務大臣が指定したものが対象です。


これらの定義の何に該当するかをしっかりと明記しているところが、寄付金の受付先として信頼できることがわかります。今回の大地震においては、既に石川県をはじめとした地方自治体や団体から義援金の受付が公表されています。


返礼品を希望しないふるさと納税も活用できる

では今回の能登半島地震において、どのような窓口が設けられているのでしょうか。


石川県による義援金の募集開始

石川県では日本赤十字社石川県支部、および石川県共同募金会と連携し、令和6年1月4日から同年12月27日のあいだで義援金の受付を表明しています。


石川県の窓口紹介

義援金は振込のほか、金沢市にある石川県の県庁、東京事務所、大阪事務所、小松県税事務所(小松市)にて受付をしています。また振込による義援金送付も可能です。


これらの支援に対しては、個人・法人ともに上記に記載した寄附金控除が適用されます。石川県庁への持ち込みに対しては現金領収書の即時発行、ほかの持参受付窓口に対しては後日郵送による領収書の発行が表明されています。そのほか日本赤十字社石川県・富山県支部、石川県・富山県共同募金会として単独の義援金受付も設けられていく見込みです。


ふるさと納税による支援

CMで名前を聞くふるさと納税の運営会社をはじめ、楽天などでもふるさと納税制度の仕組みを活用した義援金活動が開始しています。通常のふるさと納税と異なるのは返戻品の送付がないことと、運営会社による手数料が無いことです。つまり、支援者が送った全額が被災地に送られる仕組みです。自分自身で納税する自治体を選べるため、甚大な被災が報じられる自治体に送るか、旅行などで自分と縁があった自治体に送る方法を選ぶことができます。



義援金詐欺に注意

一方で、このような状態を悪用しようと企むところがあるのも事実です。インターネットやメールマガジンのほか、個人的なコネクションから話が入ることもあるでしょう。


義援金詐欺に巻き込まれないポイントは3つです。まずはどの組織と連携しているかを確認しましょう。赤十字社や募金団体など連携先を表明していない場合は疑わしい可能性があります。


また本稿のテーマである寄附金控除の仕組みを説明しているかも詐欺を見分けるポイントです。繰り返しますが、特定寄附金や指定寄付金として認められない支援は寄附金控除の対象にはなりません。対象外のなかにも善意で活動している個人や団体もゼロではないですが、通常ならば信頼性の担保のためにも、寄附金控除の対象となっているところと連携するか、紹介する仕組みになっているはずです。


今回は当事者である石川県から対応の負担や渋滞を発生させる懸念から、支援物資による「モノ」の支援は遠慮するよう要望がでています(2024年1月現在)。少しでも役に立ちたいと考える方々は、義援金という形で支援をすることをお勧めします。その結果の税額控除に戸惑う声も聞こえますが、本筋の支援金は必ず現地に届きます。復興に向けて一歩を踏み出す際の原動力になってくれることでしょう。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております