【米国株インサイト】情報技術サービス(後編):企業の競争力をデジタル技術で後押し

今回は情報技術サービスの後編です。前編ではアクセンチュア(ACN)とオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)をご紹介しました。後編ではコグニザント・テクノロジー・ソリューションズ(CTSH)、ガートナー(IT)、クラウドフレア(NET)を取り上げます。


コグニザント・テクノロジー、多様なサービスを提供

コグニザント・テクノロジー・ソリューションズは、顧客である企業に最新のデジタルテクノロジーを活用することを促し、企業が競争上の優位性を確保できるよう支援します。デジタルソリューション、アプリケーション開発、コンサルティング、システム統合、アプリケーションの保守、ビジネスプロセス、オートメーションなど多様なサービスを提供しています。


人工知能(AI)、クラウド、データ刷新、オートメーション、デジタル技術、モノのインターネット(IoT)などの分野に積極的に投資し、顧客企業のニーズに対応します。サービスを利用する企業側の具体的なメリットとして、主力事業でのデータ活用を通じた顧客体験の向上、新たな収益源の開拓、オペレーションの自動化、テクロノジーを活用するライバル企業に対するディフェンス力の強化、コストの削減などを列挙しています。



顧客企業に提供するサービスとソリューションは5つの項目に分かれています。コアテクノロジー&インサイト部門では、クラウドやデータ、IoTの活用を目指す企業を支援し、パフォーマンスの向上とイノベーションの迅速化を後押しします。


企業プラットフォーム部門では、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をアシストします。営業活動の最前線であるフロントオフィスはもちろん、バックオフィスの業務も対象です。顧客体験、顧客関係管理(CRM)、人的資本管理(HCM)、サプライチェーン管理、企業資源管理(ERP)、財務管理などのデジタル化を推進します。


業界ソリューション部門は、業界レベルで違いを作り出すという戦略に沿って2023年に創設しました。業界特有のプロダクトやサービスを提供し、顧客企業の生産性向上やイノベーションの迅速化を促します。


直感的オペレーション&オートメーション部門は、AIを駆使した自動化とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)が骨子になります。一方、ソフトウエア&プラットフォーム部門では、先端のビジネスソフトウエアの提供やアプリケーションの改良などを手掛けています。



コグニザント・テクノロジーは主に、金融サービス、ヘルスサイエンス、小売り、製造、旅行・観光、通信・メディア・技術などの業界にソリューションを提供しています。2023年12月期の地域別売上比率は北米が73.7%、欧州(大陸)が9.9%、英国が9.7%、その他が6.7%です。


コグニザント・テクノロジーは北米を除けば欧州での売上比率が高く、一段の知名度向上に向けて欧州で人気の高い自動車レース、フォーミュラーワン(F1)にスポンサーとして参加しています。英国のアストンマーティン・アラムコ・F1チームのパートナーです。


ガートナー、1万5000社の顧客を抱える調査会社

ガートナーは米国の大手調査会社で、約90カ国・地域に1万5000社の顧客を抱えています。セグメントは、リサーチ部門、コンファレンス部門、コンサルティング部門に分かれています。


売上高が最も大きいのがリサーチ部門です。2023年12月期には前年比6.1%増の48億8700万ドルとなり、売上高全体に占める割合は82.7%に達しました。さまざまな業界の調査を定額課金ベースで顧客に提供するビジネスです。定額課金ベースの収入がリサーチ部門の売上高の92%を占めています。


サービスへの加入者は調査コンテンツやデータ、指標などをオンデマンド方式でアクセスすることができる上、世界中に分散する専門調査員2500人のネットワークに直接アクセスすることも可能です。


コンファレンス部門は2023年12月期の売上高が前年比29.8%増の5億500万ドルで、売上高全体に占める割合は8.6%です。特定分野で活躍するゲストの講演や国内外のエキスパートによる実践的な提言、双方向型の対話セッション、エキスパートとの直接対話、同業者などとの交流会などで構成されます。2023年の実績では47回におよぶ対面型のカンファレンスを開催し、合わせて7万5500人が出席しています。



コンサルティング部門は2023年12月期の売上高が前年比6.8%増の5億1500万ドルで、売上高全体に占める割合は8.6%です。この部門では、ITに関する経験豊富なガートナーのコンサルタントが企業のIT責任者や幹部を対象に、テクノロジーを駆使した戦略の策定やテクノロジー投資の最適化などに関するコンサルティングサービスを提供します。


クラウドフレア、ウェブサイトの表示速度を改善

クラウドフレアは「より良いインターネット環境の構築」を使命に掲げる企業です。ハーバード・ビジネススクールで知り合ったマシュー・プリンス最高経営責任者(CEO)やミシェル・ザトリン最高執行責任者(COO)らが2009年に立ち上げました。


ウェブサイトやアプリケーション向けのプロダクトが主力で、サイバー攻撃からウェブサイトなどを守る高度なセキュリティーと同時に表示速度のスピードアップを実現します。


セキュリティーではウェブ・アプリケーション・ファイヤーウオール(WAF)をはじめ、ボットを検出して管理するボット・マネジメント、DDoS攻撃への防御といった機能を装備します。一方、コンテンツ・デリバリーの加速やネットのルーティング(経路)の改善などでウェブサイトの表示速度を高め、パフォーマンスを向上させます。



高度なセキュリティーとウェブサイトのパフォーマンス向上というウェブサイトを使う企業にとって不可欠なサービスを提供するだけに利用者は着実に増えています。2023年末時点の有料顧客数は前年比17.1%増の18万9791に上り、このうち年間売上高が10万ドルを超える顧客数は35.0%増の2756に伸びています。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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