2025年のインド株の可能性

「インド株を所有しているのですが見通しはどうですか?」という相談を頂くことが多くなってきました。BRICSの構成国としても注目されていましたが、グローバルサウスの代表格として更に存在感を増しています。次に決まる夏のオリンピックでは有力な開催地候補とも見られています。2025年、インド関連株にはどのような可能性があるのでしょうか。


S&Pの格付けが上昇

2024年5月、アメリカ大手格付け会社のS&Pグローバル・レーティングス(S&P)は、インドのソブリン格付け見通しを新興国に多いBBB-ながらも、評価を「安定的」から「ポジティブ」に引き上げました。健全な経済ファンダメンタルズにより、今後2-3年のGDPは6%~8%の成長が期待されています。


BBB+への上昇がゴーサインか

世界の株式相場にて高い存在感を示す機関投資家には、運用細則などの成約から投資できないものが数多くあります。これらはユニバースと呼ばれ、個人投資家が先読みをして投資しても、結果的に出来高が伸びない一因となってきました。機関投資家および所属会社にとってユニバースは異なりますが、多くのケースにおいて従来のインドは含まれていたとみられます。


インドの格付けがBBB+になると、ユニバースから外れ、世界中から投資資金がインドに入ってくる可能性があります。そうなるとインド関連株は大きく上昇することが予測されます。実際にインドの指標に準じた「インド株式指数・Nifty50上場投信」などは注目されており、NISAの成長投資枠でも投資することができます。既に成功している銘柄で構成された投信を選ぶか、新興株や地方株の投信に期待をかけるかは、投資家の慧眼が試されるところです。



2036年夏季オリンピックの有力候補地

国の財政再評価の後押しになる可能性があるのが「夏のオリンピック招致」です。インドは2036年の夏の候補地に、現首相であるナレンドラ・モディ氏の出身地グジャラート州の立候補を予定しています。同州の大都市であるアフマダーバードでの開催が有力です。


通常夏の五輪が決まるのは開催年7年前のIOC総会です。ただ2032年のブリスベン五輪(オーストラリア)は2021年に開催が決定しており、それから4年後の2025年には何らかの動きがある可能性があります。過去新興国と呼ばれた国々が経済面で加速したように、インドが開催地決定のニュースを受けて更に成長する可能性は見定めておきたいものです。なお同年五輪には、インドネシアやエジプトといった有力ライバルも凌ぎを削っています。


オリンピック開催などインパクトの強いイベントが決まると、インフラ投資が推進されます。投資により道路や通信網などの基盤が更に整備され、インドの「脛の傷」だった都市・地方間の格差是正となれば、さらにインド経済は成長に乗ることができるでしょう。特に北部、ヒマラヤ山脈に近づくほど顕著になる都市部との経済格差は、インドが抱える大きな課題です。


モディ政権をどのように評価するか

2024年の総選挙の結果、モディ政権は3期目に入りました。これまでは下院の過半数を占める安定与党だったものの、3期目に入るにあたって連立政権を発足させています。


もっとも閣内協力の政党はインドの持つ経済格差や地域格差が関心事であり、外交や安全保障政策はこれまでのモディ政権と大きな変化はないと見られています。


モディおよび牽引するインド人民党(BJP)は、独立後100年となる2047年までに「インドを先進国にする」という目標を掲げています。前項の格付け上昇は必達目標であり、2020年代に達成する可能性も十分に考えられるでしょう。一方でモディ首相が目指すのはナショナリズムにもとづくヒンドゥー教国家であり、先進国となるにあたって欠かせない欧米との連携に影を落とすものです。



ロシアの石油を爆買い

とはいえ外交面のインドの立ち位置も盤石ではありません。長く財政不安にあるインドは、2022年からロシアがウクライナへ侵攻した後も西側が結束してロシアへの制裁を進めるのに反し、モディ首相がモスクワを訪問しプーチンと抱擁するなど、反西側とも印象付けされる動きを見せています。


インドの経済発展「のみ」を考えれば、この格安原油の輸入は最善手といえるでしょう。アメリカにとっても現在のインドは対中戦略の重要地点であり、今後も積極的関与をする姿勢には変わりはありません。ただ、モディ政権がバランスを失い、一歩踏み越えてロシアと結託することがあれば(もしくは結託したと見られることがあれば)、投資や安全保障協力にも影響が生じると考えられます。


いくつか変数付きでの期待値ですが、2025年のインド株への期待はとても高いものです。日本時間に売買できるETFなどを選択することでリスクを軽減するなどして、ポートフォリオに組み込んでいきましょう。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

工藤 崇の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております