運用会社の「fundnote」(東京都港区)は、著名個人投資家の井村俊哉氏が投資助言を行う公募投資信託「匠(たくみ)のファンド かいほう」について、1月の月次レポートを公表しました。
ファンド設定日が1月27日で、月次レポート作成時の基準日が1月31日ですから実質、数日間のみではありますが、いろいろと新たに判明した情報もあったので、ここで取り上げたいと思います。
詳細について述べる前にまず、「匠のファンド かいほう」について、おさらいしてみたいと思います。同投資信託は、前述した井村氏と、ゴールドマン・サックス証券などで運用業に従事した竹入敬蔵氏が共同で立ち上げた「Kaihou」(東京都港区)が投資助言を行う投資信託です。あくまで運用は運用会社であるfundnoteが行うものですが、組み入れ銘柄や売買のタイミングなどについて、井村氏をはじめとしたKaihouが助言を行うというかたちです。
井村氏は元芸人で2017年に引退。その後、株式投資に専念すると個人投資家として2024年7月、一時的には100億円の運用益を上げる実績を持つなど、著名な知名度を持つ投資家の一人です。X(旧Twitter)アカウントのフォロワー数は30万人を超えるなど、人気も高いことから株式市場では、早くから同氏が関わる「匠のファンド かいほう」も期待を集めていました。
その証拠に申し込み期間の途中でファンドの募集上限額に達したということで、現在一時的に募集を停止しており、改めて人気の高さがうかがえると言えましょう。
ちなみに新規設定の投資信託で100億円という規模がどのくらいかというと、その年のランキングで当初設定額上位に入ってくるほどです。通常は運用大手や証券会社の商品が上位に入ってくるものですから、新興の運用会社による投信としてはメガヒットと言えるでしょう。
井村氏が個人投資家だったころは、同氏が大量保有報告書を提出すると、その銘柄に買いが集中し急騰することも何度もありました。そのため、「匠のファンド かいほう」でも、どのような銘柄が組み入れられるか市場の注目を集めていましたが、月次レポートでは銘柄は非公開とされました。
前述したように銘柄名がわかるとその銘柄を市場で買い付けようとする投資家が出てくることは容易に想像することができるため、影響を考えて公表を控えた、という面もありそうです。ですが、具体的な銘柄名はなくとも業種や組み入れの理由などについて一部解説がされており、そこから少し推測することもできそうです。
「匠のファンド かいほう」組み入れ上位10銘柄
(公表資料よりDZHFR作成)
例えば、6位の銀行という業種と、住宅ローン残高による業績変化、という解説から住信SBIネット銀行などが連想されます。もちろんこれはあくまで連想しているだけで、はっきりしたことが言えるものではありませんが、投資家の間でも「この記述はこの銘柄のことではないか」という思惑的な動きが広がってくることもありそうです。
ちなみに業種別では銀行業が22.1%、情報通信が20.8%、輸送用機器が12.6%、卸売が10.8%、証券商品先物取引が9.0%、その他24.7%となっています。金利高局面で金融株にチャンスありと見ているようですね。
時価総額別では300億円未満が9.4%、300億円から1000億円が15.8%、1000億円以上が39.5%、現金が35.3%となっているようです。1000億円未満が約4分の1ということで、中小型株投資で大きなリターンを上げてきた井村氏らしいポートフォリオと言えるかもしれません。
ちなみに現金がまだ35.3%あるということで、こちらは2月以降も順次買いに回っているものと思われます。1月27日以降で株価が堅調に推移している小型株にはどんなものがあるか、と考えるのもおもしろそうです。
基準価額(信託報酬控除後)は設定当初を10000万円として、1月31日時点では10149円(+1.49%)となっています。2月12日時点ではさらにこれを上回り10165円となっていますので、順調な初動と言えそうです。次のレポートも楽しみですね。