気になるテーマ解説

レバナスがひそかに高値更新

2025年はトランプ米政権による関税リスクが意識され、世界的に不安定な状況です。ただ、米国の代表的な指数であるS&P500やNASDAQ総合指数は最高値を更新しており、昨今の大テーマであるAIに対する期待の高さが数字から分かりますね。


ちなみにNYダウ(ダウ工業株30種平均)は最高値更新まであとちょっと(25年7月30日時点)のところであり、S&P500やNASDAQ総合指数に比べてやや出遅れ気味。この差が出ている理由は、テック系銘柄が多いか少ないかがポイントです。


※各種データを基に弊社作成


このようにS&P500とNASDAQは、昨今の相場けん引役であるエヌビディアやマイクロソフトなどのハイテク株が指数に大きく影響します。これまでの長期的なチャートを見ても右肩上がり。今後も持続的な上昇が期待できるとして、これらのインデックス型投信は日本の個人投資家からも人気です。


その中でも一時期話題を呼んだのが、NASDAQ100に対して2倍程度動くように設計された投信、いわゆる「レバナス」でした。ちなみに、最もお金を集めたのは大和アセットマネジメントが運用する「iFreeレバレッジ NASDAQ100(以下、レバナス)」です。


これまでのレバナス

2022年に相場が大きく下げたことでレバナスの基準価格が43000円台から半分以下(15000円台)になった時期があります。さながら新興株のような値動きです。コロナ禍では下げ知らずだったところからの急落だったため、レバナスブームは急速に沈静化することとなりました。


それでも22年に2000億円を超えていた残高が半分以下になることはなかったので、継続的に資金が入るなど根強い人気です。23年後半には下げる前の残高を超え、その後基準価格も高値を更新。24年終わりには49000円台まで上昇するなど目覚ましい上昇となっています。


※各種データを基に弊社作成 運用開始~2025年7月30日


ちなみに、7月28日に初の基準価格50000円超えを達成しました。ファンド設定日は2018年10月19日なので、おおよそ7年が経過したことになります。設定時の基準価格1万円で保有している人はほとんどいないと思われますが、100万円が500万円になったと考えると夢がありますね。


レバナスの特徴

ファンド名にレバレッジとあるように、指数の2倍を目指して動くように設計されています。指数が右肩上がりとなる推移であれば複利効果によって2倍以上のパフォーマンスが期待できますが、反対に指数が右肩下がりの場合はその真逆となります。急落局面では思った以上に損失が出る可能性もある商品のため、それを十分に理解したうえで投資することが大切です。


また、NASDAQ100を構成する100銘柄に直接投資するわけではなく、NASDAQ100先物に投資するといった特殊な商品です。この商品を買うとレバレッジ2倍でNASDAQ100先物に投資することと同義になりますが、投資家は投資元本以上の損失は発生しません。直接的な先物取引、信用取引ほどのリスクを取らず、レバレッジをかけられるのがこの商品の大きなメリットです。


また、レバナスは為替ヘッジを行う商品です。完全に為替の影響をなしにするわけではありませんが、海外投資の付き物となる為替リスクを心配する必要がないことも特徴と言えます。


ただ、為替ヘッジを行うためには、日本と海外の金利状況によってはヘッジコストがかかります。いくらのコストが必要かは2国間の短期金利差が目安になり、日本円、米ドルだと現在4%程度の差。このまま日米の金利差が一定であれば、年間4%程度の運用コストが発生することになります。レバナスの信託報酬は年1%程度なので、合計5%の運用コストが毎年かかる計算です。ちなみに新NISAの対象外でもあります。


最先端を享受しやすいが・・・

革新的な技術は米国から始まることが多く、昨今のAI投資ブームもオープンAIが開発した「ChatGPT」が火付け役となりました。宇宙開発や量子コンピューターなどの先端分野においても米国が先行しています。


そういった技術革新で大成長を遂げてきた米国企業にまとめて投資できるのがNASDAQ100であり、時価総額順に上位20銘柄を並べると以下のようになります。

 

※弊社作成 25年7月30日時点


今後もこれらの企業が世界経済をけん引していく期待が強いことから、株式市場からも高い評価を得ています。裏を返すと高い期待に応え続ける必要があるため、成長に陰りが見えてしまうと株価の下落も大きめ。マーケットがリスクオフになった際も真っ先に売られやすいのがNASDAQ100であり、あまり大きな値動きを望まない投資家には不向きです。


今現在はAI投資が盛んですが、将来的にもっと最先端の技術が現実味を帯びてきたとき、もしかしたらレバナスの基準価格も10万円、20万円と今よりも高い水準にあるかもしれません。それまでの間に再び半値以下となる可能性も十分にありますが、諸々のリスクを踏まえても夢が詰まった商品だと言えるでしょう。



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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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