2025年の食品値上げ 累計1万品目を突破

帝国データバンクは2月28日、主要食品メーカー195社の価格改定動向調査を発表しました。同調査によると、2025年3月は2343品目が値上げされることとなりました。これは2024年3月比で3倍超の多さとなります。


数の多さだけではありません。同月の値上げ1回当たりの平均値上げ率は17%となり、2025年1-3月の累計平均16%を上回りました。


2025年に入り、1月から3月まですべての月で値上げ品目数は前年同月を上回っており、この傾向は来月以降も続くもようです。


同月の値上げを品目別にみると、冷凍食品やチルド麺製品など「加工食品」が1381品目と全食品分野で最も多かったようです。加工食品単独で1000品目を超えるのは、ハム・ソーセージなどの値上げが相次いだ2024年4月の2087品目以来11カ月ぶり。コメ価格の急騰により「パックごはん」などの値上げが実施されていることが影響しているようです。


「酒類・飲料」は534品目で、ジュースなどの清涼飲料水や果汁飲料で値上げが多くみられました。「乳製品」は284品目となり、チーズやヨーグルトなど発酵製品が中心でした。


値上げの品目数についての推移(帝国データバンク公表データをもとにDZHFR作成)


2025年通年で現在までに公表されている分については、1-8月分で累計1万797品目に上っています。年間で1万品目を突破するのは、調査を開始した2022年以降で4年連続となっており、毎年のように食品の値上げが常態化していることがわかります。


2024年の値上げ予定品目で1万品目到達が判明したのは同年6月だったのに対し、2025年は2月時点で既に1万品目を超えており、ペースの速さが意識されます。


2023年に値上げ品目が3万2396品目と非常に多かった反動もあり、2024年はやや値上げ疲れも見られました。そのため、品目もやや少なかったということも影響していると思われますが、今年はさらに高値になるにもかかわらずペースが加速しているのは、さきほどコメ価格の上昇にも触れましたが、原材料費などのコストが上昇していることが背景にあるのでしょう。


また、原材料だけでなく人件費や物流費など「サービス」価格上昇の影響を受けた値上げも拡大しています。2025年の値上げ要因のうち、最も大きいものは「原材料高」(98.0%)ですが、その次が「物流費」となっています。トラックドライバーの時間外労働規制などが要因となった輸送コストの上昇分を価格に反映していることなどが要因で、80.9%を占めました。


最低賃金の引き上げや定期昇給など賃上げによる影響を含む「人件費」由来の値上げも43.5%を占めています。光熱費などの値上げを反映する「エネルギー」(61.3%)は前年をわずかに上回っています。


「円安」(13.5%)による輸入物価の上昇については、前年から10pt超下回っており、足もとトランプ米政権下になって以降、ドル安円高基調が進んでいることが背景にあると思われます。


企業は値上げ寄与により業績が改善する動きが見られていましたが、直近では生産コストの上昇分を企業努力によるコスト吸収で補いきれずに利益が減少するケースも見られます。


消費者の値上げに対する拒絶反応から小売現場では販売数量の減少、外食では客の減少といった影響もみられるなかで、2025年は今夏にかけてさらに断続的な値上げラッシュの発生が見込まれ、2025年の累計では値上げは2万品目前後に到達する可能性があるとと帝国データバンクでは分析しています。


消費行動にも影響が出るほどの値上げが避けられそうにないなか、今後は春闘などでも注目される賃上げが、中小企業にも波及していくかどうかがより重要になってくるでしょう。



日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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