スナック菓子大手のカルビーが5月12日に、ポテトチップスなどのパッケージを白黒にすると発表したことが話題です。中東情勢の緊迫化に伴う一部原材料の調達不安定化が要因とのことで、どうやら印刷時に必要な溶剤(シンナー)の不足が関係しているもよう。5月25日の週から順次切り替えるとのことなので、近いうちにモノクロの袋を目にすることになりそうです。
中東情勢悪化を受けて当初は原油不足によるガソリン価格の高騰がメディアでもちきりとなりましたが、最近では天然ガスやナフサの供給懸念も取り上げられる機会が増えました。日常生活では聞き馴染みのないナフサですが、原油精製の際に得られる石油製品のひとつです。
一般的にプラスチックが石油製品であることは知られていますが、ナフサが原料になっていることはあまり知られていません。ナフサがなければビニール袋の原料となるポリエチレンや、総菜容器の原料となるポリプロピレン、合成ゴムなどが作れないので、ナフサが手に入らなくなるということは経済崩壊の危機に直結します。
そこで今回のタイトルになりますが、ナフサのメイン消費者である化学メーカーはどうでしょうか。ちょうど決算発表シーズンなので、会社の見通しを確認していきたいと思います。
国内の総合化学メーカー
化学メーカーはたくさんありますが、今回は基礎化学品(エッセンシャルケミカルズ)を取り扱うメーカーを見ていきましょう。なお、基礎化学品はプラスチック製品の原料となるエチレンやプロピレン、苛性ソーダなどのことです。
三菱ケミカルグループ
茨城・岡山の2拠点にエチレンセンターを持ち、エチレン・プロピレン・ベンゼンをはじめとした基礎化学品とその誘導品を幅広く製造しています。MMA・MMA誘導品やAN系が主力で、アクリル酸・溶剤・汎用樹脂まで幅広く展開しています。
住友化学
サウジアラビアの国有石油会社との合弁企業ペトロ・ラービグにおいてエチレン、ポリオレフィンなどの基礎品を供給しています。なお、ラービグへの出資比率は引き下げています。
旭化成
苛性ソーダ・塩素から始まりアクリロニトリル(AN)、スチレンモノマー(SM)、MMA、アジピン酸、ポリエチレン、ポリスチレンなどを展開するケミカル事業を軸にしており、アセトニトリルでは世界No.2のメーカーです。
三井化学
エチレン・プロピレンのオレフィン系に加え、フェノール・ビスフェノールA・アセトン・MIBK、そしてTDI・MDI・PPGといったウレタン原料まで一貫して保有しています。
レゾナックホールディングス
アンモニアをルーツとし、アクリロニトリル・グリシンなどの有機化学品や、工業塩の電気分解による苛性ソーダ・液体塩素、そしてクロロプレンゴムなどを製造しています。関東地区唯一のアンモニア製造拠点という立地も強みです。
東ソー
国内最大の電解設備から苛性ソーダ・塩素・水素を生産し、塩化ビニル樹脂やウレタン原料まで塩を出発点とした完全一貫体制を確立しており、苛性ソーダの国内シェアは3割で首位です。
三菱ガス化学
メタノール(メチルアルコール)製造を自社開発技術で開始して以来、世界で唯一のメタノール総合メーカーとして事業を展開。メタノールは接着剤・農薬・塗料・合成樹脂・合成繊維・医薬原料などに幅広く使われます。

2026年度の見通しは?
各社の決算発表が出そろったので、見ていきましょう。

※旭化成、住友化学、東ソー、三菱ガス化学、三井化学、三菱ケミカルGは27年3月期、レゾナックHDは26年12月期
業績予想をまとめるとこのようになりました。東ソーは現時点で予想を非開示としていますが、そのほかの各社は軒並み増益の見通しです。なお、三菱ケミカルの増益率が突出しているのは、前期の営業利益が減損損失で急減したことによる反動増の側面が大きいです。
各社の今期見通しに関するコメントを要約すると以下のような感じです

※2026年5月14日時点
各社ともに基礎化学品を手掛ける総合化学メーカーですが、それ以外にも強みを持つ分野があることが分かりますね。例えば旭化成は化学メーカーでありながら、ヘーベルハウスで知られる旭化成ホームズを傘下に持ちます。レゾナックHDは半導体向けガスの世界首位級の企業であり、このところは業績、株価ともに右肩上がりです。
化学メーカーは原油や天然ガスの供給が滞ると製品が作れなくなるリスクを持ちますが、今後どうなるかはまだ分かりません。不透明感が強いので、今のところは中東情勢の影響を織り込まない、またはある程度の期間で落ち着くことを前提とした見通しとしていることが多いです。今回の中東情勢悪化の影響を大きく受けやすい業界の一つなので、今後の業績動向に注目したいところですね。





