NISA(少額投資非課税制度)を機に、投資を始めた方も多いことでしょう。最近は、個人投資家の方からNISAを終了する時について質問を頂きます。今回は、NISAの出口戦略についてお伝えしましょう。
出口の前に、目的を考える
冒頭のような質問をされる方の多くは、「流れに乗ってNISAを始めたものの、どのような時に解約したらよいかわからない」または「特に考えずにNISAを始めてみた」というケースです。
まずは、あなたがどのような目的でNISAをしているのか、改めて考えてみましょう。投資の目的は、人それぞれです。あなたの目的ですから、正解や不正解はありません。どのような目的でも構いませんので、自分の気持ちに正直に向き合ってみましょう。
いかがでしたか?
「子どもの教育資金」「老後の生活資金準備」「セカンドライフに遊ぶお金」というように、将来の資金づくりを目的にしている方もいれば、単に「儲けたい」という方までさまざまだと思います。また、特に目的はなく「預金では殖えないから」「すぐに使うお金ではないからとりあえず」という方もいらっしゃるでしょう。
目的が1つではなく、将来の資金づくりの部分、売買を楽しみながら儲けたいお金、とりあえず置いておくお金、などと分けて考えている方もいらっしゃるでしょう。
「とりあえず」の資金は、できれば目的を考えてみましょう。NISAの運用を「将来使うお金」か「売買を楽しむお金」に大別します。それぞれ出口戦略は異なります。
「売買を楽しみながら儲けたい」という資金は、ここで出口戦略を述べるまでもなく、マーケットしだいで売却の判断をするでしょう。このケースの説明は、別の機会に譲ることにします。
NISAとiDeCoはどっち?
出口の前に、じつは入口の戦略が大事です。
例えば、「NISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)のどちらがよいですか?」と聞かれます。両者は全く別の目的なので、資金的に余裕があるのなら、どちらも利用するとよいでしょう。
では、NISAの目的とiDeCoの目的の違いを説明しましょう。NISAは、現金化する時期の制約はありません。何年後でも、何歳でも、投資した年であっても、解約や売却をして引き出せます。iDeCoは、早くても60歳にならなければ現金化できません。
すると、自ずと目的は決まってきます。NISAは、解約代金がいくらになるかはさておき、いつでも使えるお金として。iDeCoは、原則として老後の生活資金として利用するのが一般的です。
現役世代のあなたが、今、資産形成に回す資金がギリギリなら、まずは、いつでも解約できるNISAを優先するのが賢明です。60歳までにお金を使う予定を考え、それまでの年収や年間収支も考慮に入れ、NISAによる資産形成の計画を立てましょう。
iDeCoの最低金額は月額5,000円の掛金です。少しでも余裕があれば、老後資金としてiDeCoを利用し、いつでも使えるようにしておきたい資産形成をNISAで行なう、というのが、一般的なスタイルです。
収入やお金の使い方は人それぞれです。資産形成の入口であれ出口であれ、あなたのお金に見合う計画を立てて、それを実現する資産形成の手段として、NISAやiDeCoがある、と考えましょう。
NISAの出口戦略はあなたしだい
何も考えずに「とりあえずNISA」という方が意外に多く、そのような方が「出口戦略はどうしたらよいですか?」と質問されるようです。出口戦略を練る前に、まずは「とりあえずNISA」から脱しましょう。入口のみならず、途中の戦略も必要です。
では、マネープランを立ててNISAをする、とはどういうことなのでしょうか。【グラフ】でイメージしてみましょう。
【グラフ】の例では、39歳から年収が増えるためNISAを増額しています。40歳で大きな出費を予定しており、年間収支が赤字になりますが、NISAの投資は無理のない金額です。40代後半には、子どもの学費としてNISAを解約し、預金に移しています。
解約は、マーケットの状況にもよりますが、一度に行なわず、毎月決まった金額ずつ解約するとよいでしょう。積立投資の反対ですね。といっても、時間分散にこだわり過ぎるのもよくありません。明らかに相場が過熱していると感じれば、まとまった金額を現金化してもよいでしょう。
退職金についても、多額が振り込まれたからといって、一気に投資をしてはいけません。値動きのある金融商品は、たとえ今が安くても、思わぬ動きをするものです。退職金ほどの額をNISAにするのであれば、数年に分けてもよいぐらいです。
そして、いよいよ人生後半期。老後の資金が枯渇しない程度に、お金を使いましょう。
「枯渇しないかどうかが分からないんだよ」と言われそうですが、そのためにキャッシュフローを作るのです。【グラフ】では、100歳まで資金がもつようになっています。キャッシュフローを作ってみて、資金の寿命が早く訪れるようであれば、対策を練りましょう。そのためのキャッシュフローです。
公的年金の受給開始を遅らせれば、老後の年収が増えます。NISAの運用を見直して、資産を長持ちさせられるかどうかを考えてもよいでしょう。無駄な出費をやめ、本当に使いたいことにお金を使うことが大切です。
NISAでできる資産形成は、株式や株式投資信託です。価格変動リスクがあるため、マネープラン通りにならない前提です。また、あなたのライフプランも絶対ではありません。将来起こる出来事は流動的です。状況が変わったり、見込み通りにならなかったりしますから、マネープランは定期的に見直しましょう。