投資の裾野が広がった新NISA

新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしてから1年が経ちました。新NISAは新しい投資家や新たな資金を投資の世界呼び込んだと言えそうです。


新NISA利用者の約3分の2が年収500万円未満


2025年1月、日本証券業協会は2024年に新NISAで金融商品を購入した7,610人にインターネット調査を行い、先日「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」を公表しました。調査対象者7,610人のうち、つみたて投資枠を利用した人は6,008人で78.9%。成長投資枠の利用者は5,408人で71.1%でした。


新NISAは、幅広い収入金額の人たちが利用したようです。新NISA利用者の年収分布は、年収300万円未満の人の割合が39.7%で、300万円以上500万円未満の人は27.7%でした。


つみたてNISAの利用者だけで見ると、300万円未満が2,206人(36.7%)、300万円以上500万円未満は1,770人(29.5%)。合わせて500万円未満の人が調査対象者の3分の2を占めています。


一方、成長投資枠の利用者で年収300万円未満の人は、1,999人で37.0%でした。300万円以上500万円未満は1,452人(26.8%)、合わせて500万円未満の人は63.8%となっており、つみたて投資枠と同様に調査対象者の約3分の2です。


これまで行われていたさまざまな意識調査では「投資はお金持ちがするもの」という印象を持つ人が多く、そのために投資に二の足を踏んでいる人も少なくありませんでした。新NISAをきっかけに、幅広い層で投資を始める様子が伺えます。


年間の平均購入金額はつみたて投資枠が47.3万円、 成長投資枠が103.3万円


2024年につみたて投資枠で購入した金額は、調査対象者の平均で47.3万円でした。【グラフ1】は、つみたて投資枠での購入金額帯の分布です。



約4分の1の人が年間10万円未満の積立を行いました。一方で、つみたて投資枠の上限金額である120万円の人も15.3%おり、100万円以上としても20.8%に上りました。あらゆる金額帯にばらつきが見られます。


大まかな傾向としては、年齢層が上がるほど100万円以上の積立投資をしている人の割合が多くなっています。


成長投資枠については、平均購入金額が103.3万円。こちらも【グラフ2】の通り、年間の購入金額にはばらつきがありました。26.7%の人が20万円未満で、26.3%の人が200万円以上。100万円未満の購入だった人が過半数です。



新NISAが始まる前は、「なるべく早い時期に年間非課税枠いっぱいに購入しましょう」などと主張する人も見かけることがありました。早いから良いとか、誰も彼もが非課税枠いっぱいに購入すべきだという論調はいかがなものかと思っていましたが、全体的にはそれぞれの投資家が可能な金額で投資をしたと言って良いでしょう。


「貯蓄から投資へ」


小泉政権が2001年に打ち出した「貯蓄から投資へ」の方針から、はや四半世紀が経ちました。どのような資金で新NISAを購入しているかを複数回答で尋ねると、「預金・給与所得・年金」が最多の74.9%です【グラフ3】。



また、2024年の7月末から8月にかけては、為替相場が一気に円高に振れ、株式市場も大きく崩れました。SNSや動画サイトなどでは、新NISAを機に投資を始めた人たちが心配のあまり、解約すべきかと騒いでいるようでした。


しかし、2024年に売却をしなかった人は圧倒的で、長期投資を実践している様子が伺えました。つみたて投資枠の利用者6,008人のうち、売却しなかった人は83.2%でした。成長投資枠の利用者5,408人ではやや下がり、売却しなかった人が75.3%でした。


ただし、金融経済教育を受けた経験の有無で分けてみると、金融経済教育を受けた経験のある人ほど売却をしている傾向です。


つみたて投資枠利用者で、金融経済教育未経験者の中で売却しなかった人は86.9%だったのに対し、金融経済教育を受けた経験があり売却しなかった人は70.9%と、開きがありました。成長投資枠については、金融経済教育未経験者で売却しなかった人が78.5%だったのに対し、経験ありの人は66.1%でした。


金融経済教育に携わる筆者としては少し残念ですが、金融経済教育を受けるほど投資や資産形成に興味・関心のある人は、相場環境に応じて柔軟に判断したという見方もできそうです。


【参考サイト】 日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」の公表について

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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