コメの価格高騰がとまりません。農林水産省が毎月公表している、業者間でのコメの取引価格の指標となる相対取引価格は2月に2万6485円(60キロ当たり)となりました。これは前年同月比で73%もの上昇となり、6カ月連続で最高値を更新しています。
特に「北海道産ゆめぴりか」が87%の上昇、「北海道産ななつぼし」が80%の上昇と値上がりが目立っているようです。北海道は気温の関係からコメ作りには向いていないとされることもありましたが、品種改良などの努力により質が向上。それに加えて、コメの供給不足が指摘されるなかで、改めて北海道産の評価が高まったことが価格上昇につながっている要因だと思われます。
コメ価格については、3月上旬に政府の備蓄米7万トンを対象にした入札を実施しました。初回の平均落札価格は60キログラムあたり2万1217円。上記の相対取引価格より若干安くはありますが、備蓄米の放出でコメ価格の高騰も落ち着くのではと期待されていたほどではないというのが個人的な印象です。
農林水産省では、2回目の入札を今月26日から行うと発表ししており、初回入札分については、そろそろ店頭に並び始めることとも言われていますが、一連の放出がコメの価格の高騰を抑えられるかどうか通目されます。
このコメ価格の急騰で打撃を受けているのが飲食店です。直近では横浜家系ラーメン「町田商店」を展開するギフトホールディングス<9279.T>が決算を発表。コメの高騰によるコスト増などが響き、営業減益となったことが嫌気され、株価が急落する場面がありました。
ギフトHD日足チャート
また、くら寿司<2695.T>は、株価の反応自体は株主優待の再導入などもあって直近堅調に推移していますが、3月14日に発表し1Q決算では魚やコメの高騰などにより営業利益が前年同期比24%減と苦戦しています。
くら寿司日足チャート
一方、コメ価格の上昇で恩恵を受ける企業もあります。米穀卸事業で国内首位級の木徳神糧<2700.T>は、2月に発表した2024年12月期の決算で営業利益が前年同期比15.3%増と2ケタの伸びとなりました。取引価格の上昇に伴い、価格転嫁を進めたことが寄与したとしています。
直近では、コメの需給バランスが崩れて調達自体が難しくなっている面もあり、安定供給に努める卸メーカーの存在感は増していると言えるでしょう。多少高値でも調達を優先することで価格転嫁が進みやすい状況であると思われます。
木徳神糧日足チャート
また、農薬や肥料を扱うメーカーにも追い風になるとの味方があります。コメの価格高騰は需要に供給が追い付いていないからだという指摘もあり、コメ農家は増産に動いているとされています。農林水産省がまとめた作付意向によると、2025年秋に収穫する主食用コメの作付面積は全国合計で128.2万ヘクタールとなり、2024年産を2.3万ヘクタール(1.8%)上回る見通しとなったようです。
増産となれば、使用する農薬や肥料が増えるとの期待から関連メーカーの株価も動意付く場面がありそうです。OATアグリオ<4979.T>、日本農薬<4997.T>、片倉コープアグリ<4031.T>などが恩恵を受ける可能性があるでしょう。
農水省は2018年に減反制度を廃止しましたが、その後も補助金などによりコメの生産を抑制する方針が続いています。人口減少などで需要が減少していくというのが政策の根拠となっていますが、直近ではインバウンド客の増加によりコメの消費が増えているとの指摘があるほか、異常気象などによる天候の影響で収穫量が減少するなど特殊な要因も重なって需給が不安定になっていると言われます。
増産により今年秋以降のコメ価格については需給が多少緩み、価格も落ち着いてくる可能性はあります。ですが、農協などでは今年の生産米について生産者に支払う最低価格を引き上げるとする事例も既にみられていることから、今後も高止まりするケースも十分考えられそうです。
主食であるコメ価格の高騰は、わたしたちの生活にも直結する身近な問題でもあるだけに、これ以上の高騰や混乱が抑えられることを願います。