チポトレは押し目買の好機か

先週は主要3指数がそろって反発 FRBの利下げ見通し維持や関税懸念の緩和が追い風


先週の米国株式市場ではダウ平均が497.16ドル高(+1.20%)と3週ぶりに反発し、S&P500は0.51%高、ナスダック総合も0.17%高とともに5週ぶりに反発しました。


米連邦公開市場委員会(FOMC)で年内2回(0.50%)の利下げ見通しが維持されたことが安心感につながったほか、週末金曜日にトランプ米大統領が4月2日に発動する相互関税について柔軟な対応の可能性に言及したことも買い戻しの動きを強めました。


しかし、3月月初来ではダウ平均が4.23%安、S&P500が4.82%安、ナスダック総合が5.64%安と、そろって大幅に2カ月続落ペースとなり、年初来でもダウ平均が1.31%安、S&P500が3.64%安、ナスダック総合が7.91%安と、3指数がそろってマイナス圏となりました。

 


押し目買い銘柄選択には自社株買いにも注目


主要3指数がそろって年初来でマイナスとなったほか、2月に付けた史上最高値からS&P500が7.76%安となり、ナスダック総合は11.85%安となったことで押し目を探る動きも強まってきました。


2023年と2024年の上昇相場をけん引したマグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ、テスラ)などのメガキャップが再びけん引役となることが期待されますが、自社株買いに注目した銘柄選択も有望銘柄の発掘に有効だと考えられます。

自社株買いは内部留保をコア事業や成長分野への投資に回さず、安易に一株当たりの企業価値を上昇させるとの批判もありますが、一株当たり利益が上昇することや、企業自身が株価の水準を割安と判断していると考えられることは多くの投資家にとって歓迎されています。


自社株買い枠を設定した銘柄のうち、チポトレ・メキシカン・グリルについてみると、同社は2024年第4四半期(10-12月)に3億3130万ドル相当の自社株買いを実施しましたが、昨年12月17日に取締役会が3億ドルの追加取得枠を承認したことで、足もとでは10億ドルが利用可能となっています。


同社が2月4日引け後に発表した2024年第4四半期(10-12月)決算は、純利益が前年同期比18.8%増の3億3995万ドルとなり、調整後の一株当たり利益は0.25ドルと市場予想の0.24ドルを上回りましたが、売上高が同13.1%増の28億4500万ドルとなったものの、市場予想の28億4800万ドルを下回りました。


既存店売上高は同5.4%増、営業利益率は14.6%と前年同期の14.4%から上昇しましたが。レストラン部門の営業利益率は25.4%から24.8%に低下しました。2025年通期の見通しについては、既存店売上高が一桁台前半から半ばの伸びを見込むとしました。


10-12月期の売上高が予想に届かなかったことや、レストラン部門の営業利益率の低下、2025年通期の既存店売上高の伸び悩み見通しに加え、トランプ米大統領がメキシコやカナダからの輸入品に対して25%の関税を課すと発表したことでメキシコから輸入するアボカドや胡椒などの材料費上昇懸念が高まったことも株価の重しとなりました。


2024年6月に69.15ドルの上場来高値を付けたチポトレ・メキシカン・グリルの株価は、12月12日にも66.73ドルの戻り高値を付けましたが、その後は大きく反落しました。2月の決算発表以降も下落幅を拡大し、今月3月18日には47.55ドルの52週安値を付けました。


 


取締役の自社株買いやアナリストの投資判断引き上げも追い風か


2月の決算発表後に下げ幅を拡大した株価は足もとでは下げ止まりの動きを見せています。トランプ米大統領が関税政策につい柔軟な対応の可能性を示したことで原材料費高騰懸念がやや後退する中、売られ過ぎ銘柄への押し目買いの動きもみられます。


10億ドルの自社株買い枠があることに加え、元NRGエナジーの最高経営責任者(CEO)で、2021年にチポトレの取締役に就任したマウリシオ・グティエレス氏が3月5日に平均価格53ドルで、50万ドル相当の自社株を購入したことも話題になりました。


また、アナリストの投資判断引き上げも相次いでいます。モルガン・スタンレーは3月3日、足もとの需要低迷は一時的なものだ、現在の株価は投資の好機だとし、投資判断を「イコール・ウエート」から「オーバーウエート」に引き上げました。ループ・キャピタルも3月14日に、足もとの株価下落は押し目買いの好機だとし、投資判断を「ホールド」から「バイ」に引き上げました。


先週まで3週続伸した株価は、週明け24日の取引では前日比1.07%高(+2.20%)の49.60ドルと反発し、年初来で17.74%安となりました。52週安値からは4.31%高、52週高値からは28.28%安となっており、もう一段の戻りも期待できそうです。



国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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