みなさんは「カレーライス物価指数」というものをご存じでしょうか。これはカレーライスの原材料である、ニンジン、ジャガイモ、タマネギなどの各種野菜、牛肉(輸入)、コメ(コシヒカリ約1合)、カレールー(市販)、食用油などの購入に必要な費用、またそれらを調理するためのガス、電気、水道などのエネルギー代を合わせ、カレーライス1食分をつくるのに必要な費用を計るものです。
帝国データバンクが独自に算出している指数で、2020年の平均を100とした価格推移を表わしています。このカレーライス物価指数について、同社が10日に発表した2025年2月の数値は1食407円となり、初めて400円を超えました。
前年同月が319円でしたから1年で88円、率にして27.6%の上昇となります。指数が前年同月を上回るのはこれで11カ月連続となっており、同社の予測では3月もさらに上昇する見込みとのことです。
前月(2025年1月)の396円からは11円の上昇。さまざまなものが値上がりしているなかで同指数が上昇するのもわかる気はしますが、それにしても上昇率が大きいです。
要因の一つがコメ価格の急騰です。全体の割合としてはカレー具材(肉野菜)が209円と約5割を占めますが、前年同月比の値上がり率は5.6%にとどまります。一方で、ライスは169円となり、前年同月から83.7%の上昇。もはや暴騰といってしまいたくなる値上がり率です。
水道光熱費は政府による補助により価格が抑制されている面もあり、カレールーも大きな変動はなかったため、ほぼコメ価格の上昇分が同指数を押し上げたと言ってもいいでしょう。
同指数はこの5年間で約5割上昇しており、記録的な物価高が続いていることが日常の肌感覚としても伝わる内容です。
カレーライス物価の推移(単位 円)
帝国データバンク公表数値よりDZHFR作成
今後の物価動向についてですが、先行指標となる東京都区部の物価動向を基に同社が予想した2025年3月のカレーライス物価は、1食420円前後まで上昇する見通しとのことです。
農林水産省の調査による2月の価格見通しでは、カレーライス物価を構成する野菜類(ニンジン・ジャガイモ・タマネギ)は、いずれも「平年を上回る」見通しとなりました。
また、輸入牛肉の価格は横ばい~上昇傾向での推移が続いており、「カレー具材」は24年7月以来8カ月ぶりに210円台に到達して過去最高値を更新する可能性があるとしています。
輸入牛肉は、トランプ関税の動向により、今後さらなる価格高騰のリスクを抱えており、カレーライス物価をさらに押し上げる可能性があります。
また、多くの人が気にしているコメ価格では、政府による備蓄米の放出も、あまり値下がりへの寄与が確認されておらず、4月時点の2024年産(新米)を中心とした店頭価格ベースを見ても、値上がりが続いています。政府はさらなる継続的な備蓄米の放出を計画していますが、3月は1食あたり180円台と前年比約2倍の高値推移が予想されるとのことです。
前年比2倍と言われてもコメを食べないという選択肢もほとんどの人にとってはとりにくいでしょうから、直接家計の負担増となってしまうでしょう。
手軽でおいしい食卓の人気メニューであるカレーが「高値」の花になってしまうのはつらいものがありますが、もうしばらくこの高騰の動きは続きそうです。