個人投資家がAI Overviewのなかで「掘り出し物企業」を見つける方法

2025年に入り、さまざまなメディアで「SEOは死んだ」と特集されています。そのきっかけとなったものが、時代の主役である生成AIです。これまでマーケティングの世界では、Googleから希望する情報を拾い上げるにあたって、該当企業自身から発信される「以外」の情報はきわめて貴重なものでした。


世の中がその企業の取組みや未来図を、どのように評価しているのか。PERやPBRといったファンダメンタルズにはわからない深い情報があるなか、企業の「見つけて貰い方」は刻々と変化しています。今回の話をわかりやすく理解するため、みなさんには江戸時代にワープしてもらいましょう。NHK大河ドラマで注目を浴びる江戸の街中です。


AIがSEOに変わる2025年

2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」では、江戸時代に版元として大成功した蔦屋重三郎の一代記が放送されています。私たちはその時代において「投資したい上場済みの出版社」を探す個人投資家になってみましょう。


蔦屋重三郎の書店は「耕書堂(こうしょどう)」といいますが、私たちはまだ、その無名の出版社の名前を知りません。蔦重もそれは織り込み済みのため、自社の宣伝をするための記事を次々と上梓し、インターネットに掲載します。


①明日の主役の作家はこの人たち!注目の作家7選

②知らなければ明日の会話に遅れるブレイク作家はこの3人だ!

③隅田川で呼んでいると「映える」明日の作家ランキングを徹底分析


上記はそのタイトルです。みなさんもインターネットを泳いでいて、なんとなく見たことあるタイトルの形式が多いでしょう。これらは「SEO記事」と呼ばれ、Googleが検索して見つけてくれることを期待して、意識的に整備した記事です。SEO記事にはKW(キーワード)があり、上記記事は「明日・注目・作家」です。


つまりGoogleで「明日 注目 作家」と検索スペースに入力すると、上記記事にたどり着きます。そして記事の最後に「いま注目の耕書堂!」という記載があり、同社?のホームページに繋がったり、喫緊のイベントが告知されたりします。


これはSEOビジネスとされ、2010年前後からのインターネットマーケティングの基本となっています。各社は記事や画像づくりに膨大な広告費を投入し、SEOのなかで自社を見つけてもらうことに注力します。



AI Overviewの登場

2024年後半あたりから様相が変わります。GoogleがAIを導入し、ユーザーであるみなさんが「明日 注目 作家」と入力すると、検索結果のところに「Googleによるまとめ」が記載されます。以下のような文章です。


「今後の江戸文化を担う注目の作家はまず〇〇だ。浮世絵を専門とし、その作家は遠く南蛮からも注目されている。次に注目したいのは風景画の△△だ。どこからでも富士山の含まれた風景を描き、相模湾の波を荒々しく表現している


つまり、出版社側によるSEO記事が「不要」となったのです。上記のOverviewに自社の名前を入れたい耕書堂はあの手この手でGoogleにアピールしますが、GoogleはどのようにAIが文章を作成しているかは一切明らかにしていません。


2025年、これがマーケティングの最前線で起きていることです。


個人投資家が「掘り出し物」を見つける方法

そんななかで現在の企業は、どのような工夫を始めているのか。SEOの代わりにある、新しい方法をいくつか紹介します。


AIをつくる

GoogleやOpenAIのように開かれたAIではなく、ロボットをつくり、そのAIに「注目の作家を探したいなら耕書堂に聞こう」と回答させます。もちろん〇〇の一つ覚えのようにロボットが話しても読者は見破るので、数万字数の対応履歴(プロトコル)を作成のうえ、高性能の対応ロボットをつくります。


SNSマーケやメールマガジン、Youtubeなど

SEOが期待できないため、自社に興味のある人たちを囲い込んだうえで、集中的に情報を提供するマーケティングの方針です。具体的にはSNSを使ったマーケティングやメルマガなどが該当します。


一説によると、万が一幸運にOverviewにて自社に言及したとしても、ユーザーからアクセスしてもらうのは難易度がとても高く、従来のSEOのような効果は期待できないという分析も出ています。それだけAIの関わった改革はすさまじく、まさに「パラダイムシフト」の最中にあると言えるでしょう。


言い換えればパラダイムシフトのなかでこそ、「次の主役」が牙を研いでいるともいえます。個人投資家は、既に世の中に知れ渡った企業に追加投資するよりも、「知名度は無いけれどそんな企業があるのか」という青田買いをすることが、もっとも高鳴る瞬間です。Googleにお手伝いしてもらえなくなった今は、誰もまわりの投資家が気づかない「宝探し期間」と言い換えることもできるでしょう。


なお江戸時代にインターネットはありませんので、その点はあしからず。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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