英統一地方選における与党大敗をきっかけとした「英政局混迷」が、イギリスの通貨ポンドを大きく揺さぶっています。スターマー首相の失脚懸念を材料とした激しい売りでポンドは急落しました。次期首相候補の財政方針に対する安堵感もあって売りに一巡感も生じてきましたが、ポンド相場の先行きには依然として不透明感が漂っています。
ポンド急落と財政安堵感による下げ渋り
英統一地方選で与党・労働党は1400超の議席を失う大敗を喫しました。スターマー首相への辞任圧力が一気に高まっています。主要閣僚の辞任や党首選への出馬報道が相次ぐなか、一時は英国の株・通貨・債券がすべて売られる「トリプル安」に見舞われました。金融マーケットには強い「英政局混迷」への警戒感が広がっています。
もともと「有事のドル買い」巻き戻しや、インフレを懸念した英金利上昇で高止まりしていたポンドは、「英政局混迷」を嫌気したマーケット参加者の売りにより、対ドルで一時1.3303ドル前後と、1.33ドル割れもうかがう水準まで急落(図表参照)。対円でも一時211円前半まで下落しました。

その後は対ドルで1.34ドル台を回復するなど、ポンドは神経質な買い戻しを見せています。安堵感をもたらしたのは、次期首相候補として浮上したバーナム・マンチェスター市長の発言でした。
バーナム氏が現行の財政規則の変更を全面拒否し、財政規律を維持する姿勢を明言。マーケット参加者が恐れていた「政治混乱に伴う財政悪化リスク」が後退しました。
さらに、EU再加盟論争を蒸し返さない方針を示したことも政策の予見可能性を高めるとして好感されました。ポンドは対ドルで一時1.34ドル半ばまで反発、対円では213円半ばまで持ち直しました。
イングランド銀行の出方にも注目
ただ、今後のポンドの方向性を占う上で、この「英政局混迷」の行方と同時に無視できないのが、近く発表を控える重要な経済指標の存在です。足もとでは中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の高騰がインフレ圧力(消費者物価指数・CPIなど)を押し上げています。
一方で、4月の給与所得者数が大幅に減少するなど雇用データには軟化の兆候が見られます。物価高と景気減速が同居するスタグフレーション懸念が強まるなか、イングランド銀行(中央銀行、BOE)が利上げを模索するのか、あるいは国際通貨基金(IMF)が可能性を示唆している利下げの準備を進めるのか、マーケット参加者は中央銀行の出方を窺っています。
「英政局混迷」は、補欠選挙でのリフォームUKとの激戦などを含め、構造的な政治不信という根深い問題をはらんでいます。ポンドがここから本格的なトレンドを形成できるのか、あるいは再び下値を試すのか。マーケット参加者としては、英国の政治動向がポンドを始め為替マーケット全体のボラティリティを高める引き金になり得る点に、引き続き警戒が必要といえます。





