公的な医療保険が手薄な米国ではヘルスケアサービスの存在感が大きく、株式市場でも注目度が高いようです。前編ではユナイテッドヘルス・グループ(UNH)とシグナ・グループ(CI)をご紹介しました。後編ではHCAヘルスケア(HCA)、エレバンス・ヘルス(ELV)、CVSヘルス(CVS)の3銘柄を取り上げます。
HCAヘルスケア、米国を中心に病院を運営
HCAヘルスケアは米国を中心に病院の運営を手掛けています。2024年末時点で190の病院を運営しており、内訳は総合病院と救急病院が180カ所、精神科病院が6カ所、リハビリテーション病院が4カ所です。このほかに124カ所の手術センターと26カ所の内視鏡検査センターも運営しています。施設は米国の20の州と英国に位置します。
総合病院と救急病院では、集中治療、心疾患治療、緊急治療、診断などを担い、ベッド数は4万9114床です。外来での手術、放射線治療、呼吸療法、心疾患治療、理学療法などを施します。精神科病院6カ所のベッド数は合わせて602床で、子どもから大人までの精神科治療をはじめ、アルコール中毒やドラッグ中毒の治療も行います。
手術センターや内視鏡検査センターなどの外来患者用の治療も担っています。ただ、手術センターの多くは提携先とのパートナーシップに基づき運営しており、パートナーシップが権益の過半を握るケースが多いようです。
190カ所の病院の所在地では、テキサス州が54カ所、フロリダ州が46カ所と圧倒的に多く、テネシー州が13カ所、コロラド州とノースカロライナ州がそれぞれ7カ所で続いています。
業績は総じて堅調です。2024年12月期は売上高が前年比8.7%増の706億300万ドルで、通期では14年連続の増収です。純利益は9.9%増の57億6000万ドルと3年ぶりの増益となっています。
エレバンス・ヘルス、医療保険サービスを提供
エレバンス・ヘルスは医療保険サービスを手掛けています。2024年末時点の会員数は約4570万人で、米国の医療保険会社として大手の一角を占めています。
効率的な医療サービスの提供と医療費の抑制を保険会社側が管理する「マネジドケア」に基づく幅広い保険プランを運営しています。個人や雇用主グループに向けた商品に加え、高齢者と障害者の公的医療保険制度「メディケア」や低所得者向けの公的医療保険制度「メディケイド」にも保険プランを提供します。
このほかに医療補償額の超過額を対象に保険金を支払うストップロス保険、歯科保険、生命保険、障がい保険なども展開しています。保健事業を軸とする医療給付部門は2024年12月期の売上高が前年比1.1%増の1502億7500万ドル、営業利益が9.4%減の62億4300万ドルでした。全体に占める割合はそれぞれ73.5%、68.4%です。
このほか医薬品関連サービスはケアロンRx部門が担っています。自社の医療給付部門の顧客だけでなく、外部の顧客にもサービスを提供しています。処方薬の薬剤リスト管理、処方薬の宅配、薬局ネットワークの管理、処方薬データベースの作成など多岐にわたる業務を請け負います。一方、薬剤給付管理(PBM)サービスはCVSヘルス(CVS)に委託しています(2025年末に契約終了予定)。ケアロンRx部門は2024年12月期の売上高が6.3%増の359億6100万ドル、営業利益が10.0%増の21億7200万ドル。全体に占める割合はそれぞれ17.6%、23.8%です。
ケアロンサービス部門は、データ管理と分析、メンタルヘルスの管理サービス、重病患者へのケアサービスなどを手掛けてます。2024年12月期の売上高は27.0%増の179億6100万ドル、営業利益が5.4%増の7億1700万ドル。全体に占める割合はそれぞれ8.8%、7.9%です。
CVSヘルス、医療サービス部門に強み
CVSヘルスはヘルスケアサービスの大手です。事業は医療サービス部門、薬剤&消費者健康増進部門、医療給付部門が3本柱です。
医療サービス部門では薬剤給付管理(PBM)ソリューションを軸に多様な事業を手掛けています。処方薬の薬剤リスト管理や小売ネットワークの管理、臨床プログラムの提供、医療給付管理などメニューは多岐にわたります。
この部門では2023年に在宅医療サービスのシグニファイ・ヘルスとプライマリーケアの保険給付などを手掛けるオークストリート・ヘルスを買収し、業容を拡大させています。この部門は2024年12月期の売上高が7.1%減の1736億500万ドル、調整後営業利益が0.9%減の72億4300万ドル。全体に占める割合はそれぞれ40.4%、54.4%です。
薬局&消費者健康増進部門は、2024年末時点で9000店を上回る薬局やオンラインストアの運営が中核で、この部門の売上高の8割近くを占めます。店舗運営以外では薬局での診断検査などを手掛けています。この部門は2024年12月期の売上高が6.6%増の1245億ドル、調整後営業利益が3.2%減の57億7400万ドル。全体に占める割合はそれぞれ29.0%、43.3%です。
医療給付部門は、診療が提携先の医療機関のネットワークに限られる健康維持機構(HMO)や提携ネットワーク外の医療機関でも受診できる優先医療給付機構(PPO)という代表的な医療保険をはじめ、さまざまなタイプの保険プランを用意しています。また、公的保険では「メディケア」や「メディケイド」にも保険プランを提供しています。この部門は2024年12月期の売上高が23.7%増の1306億6500万ドル、調整後営業利益が94.5%減の3億700万ドル。全体に占める割合はそれぞれ30.4%、2.3%です。