【米国株インサイト】カジノセクター（後編）：米国のカジノ大手、アジアに重心

#米国株 #銘柄選び

2025年9月11日

島野敬之

ラスベガス・サンズ、アジア事業に経営資源を集中

ラスベガス・サンズ（LVS）はシェルドン・アデルソン氏が一代で築き上げた企業です。アデルソン氏は2021年1月に死去する直前まで会長と最高経営責任者（CEO）を務めていました。

翌2022年にはビジネスの方向を大きく転換させました。カジノリゾートの「ベネチアン・リゾート・ラスベガス」や「サンズ・エクスポ＆コンベンション・センター」などラスベガスで手掛けていた事業を売却し、マカオとシンガポールのアジア事業に経営資源を集中させています。

アジア事業の中核はマカオで展開するカジノリゾートです。72.3％を出資する香港上場のサンズ・チャイナを通じ、マカオ半島部の「サンズ・マカオ」、コタイ地区の「ベネチアン・マカオ」、「パリジャン・マカオ」、「ロンドナー・マカオ」などを運営しています。カジノ収入の市場シェアはマカオで運営する6社の中でトップです。

2024年12月期のマカオ事業の売上高は前年比8.4％増の70億7300万ドル、調整後EBITDA（利払い・税引き・減価償却前利益）は4.6％増の23億2700万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ62.6％、53.1％です。新型コロナ流行に伴う行動制限の全面的な解除を受け、小幅ながら業績が改善しました。

シンガポールでは「マリーナベイ・サンズ」を手掛けています。高層ビルの屋上にある巨大プールが特徴的なカジノ・リゾートです。「マリーナベイ・サンズ」は売上高が9.8％増の42億2500万ドル、調整後EBITDAは10.3％増の20億5200万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ37.4％、46.9％です。

ウィン・リゾーツ、ラスベガスとマカオでカジノリゾート

ウィン・リゾーツ（WYNN）はラスベガス事業、マサチューセッツ州のボストン事業、マカオ事業をバランスよく手掛けています。セグメント別の売上高はマカオ事業が最も多く、2024年12月期には前年比18.8％増の36億8200万ドル（売上比率51.7％）に達しています。調整後EBITDARは23.2％増の11億7600万ドルで、全体に占める割合は49.6％です。

マカオ事業では2016年にコタイ地区に開業した大型カジノリゾート「ウィン・パレス」が稼ぎ頭で、売上高は17.5％増の22億1800万ドルに上ります。やはりカジノ自体の売上比率が81.0％と圧倒的に高く、米国事業のように成熟した総合エンターテインメントビジネスに転身するのはなお時間がかかりそうです。マカオ事業は72％を出資する香港上場のウィン・マカオが手掛けています。

ラスベガス事業ではカジノリゾートの「ウィン・ラスベガス」や「アンコール」を軸に展開しています。2024年12月期の売上高は3.7％増の25億7200万ドル、調整後EBITDARは0.1％増の9億4700万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ36.1％、40.0％です。

ウィン・リゾーツはこのほかマサチューセッツ州ボストンでカジノリゾートを運営するほか、オンラインカジノやスポーツ賭博などのインタラクティブ事業も手掛けています。ボストン事業は売上高が1.0％減の8億5700万ドル、調整後EBITDARが4.0％減の2億4700万ドルです。

レッド・ロック・リゾーツ、ラスベガス周辺で事業展開

レッド・ロック・リゾーツ（RRR）は1976年に設立された企業で、ラスベガスやその近郊でカジノリゾートを運営しています。主要施設はラスベガスの目抜き通りである通称ラスベガス・ストリップから外れており、これまでご紹介してきた大手とやや毛色が異なります。

ビジネスモデルの差異は売上高の内訳に明確に表れています。2024年12月期の売上高は前年比12.5％増の19億3900万ドルで、カジノ収入は12.8％増の12億7700万ドル。カジノ収入の売上比率は65.9％に達しています。飲食の売上比率は18.6％、ホテルの客室の売上比率は10.3％にとどまっています。

ホテルが併設されているカジノは「レッドロック」、「デュランゴ・カジノ＆リゾート」、「グリーンバレー・ランチ」、「パレス・ステーション」、「ボールダー・ステーション」、「サンセット・ステーション」の6カ所で、ストリップに位置する「パレス・ステーション」を除き、目抜き通りから外れています。