「ヒューリックの株価、最近ずっと横ばいだけど、これってどうなの?」
「今の株価は割安?それとも、もう上がる見込みは薄い?」
都心の駅近一等地を中心に数多くの優良不動産を手がけるヒューリック(証券コード:3003)。連続増益・連続増配を続ける優良企業として、またカタログギフトがもらえる株主優待も人気で、多くの個人投資家から注目を集めています。
しかし、その好調な業績とは裏腹に、株価は2024年以降、1,300円台から1,600円台のレンジで一進一退の動きが続き、上値の重い展開となっています。

参照:Trading View
「この株価は今の実力に見合っているのか?」「今後は上がるのか、下がるのか?」と、投資判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ヒューリックの株価がなぜ伸び悩んでいる理由を分析するとともに、株価を下支えしている強み、そして今後の見通しについて、分かりやすく解説していきます。
ヒューリックの株価が伸び悩む3つの理由
連続最高益を更新するほど好調な業績にも関わらず、なぜヒューリックの株価は伸び悩んでいるのでしょうか?その背景には、株価の上昇を抑えるいくつかの要因が考えられます。
【理由①】好業績の持続に対する市場の目線
ヒューリックは、新規物件の売却益も収益の大きな柱の一つです。2025年12月期の上半期も、不動産売却が順調に進んだことが好業績に貢献しました。
しかし、不動産の売却益は、その時々の市況や売却タイミングによって年度ごとに大きく変動する不安定な側面があります。
不動産市況がピークに近いとの見方もある中で「来年以降も、今年のような好調な売却益を維持できるのか?」という懸念が、株価の上値を抑える要因となっています。
つまり、現在の好業績は既に株価にある程度織り込まれており、市場は「この好調が持続可能か」という点に懐疑的な視線を向けているのです。
さらなる株価上昇には、この懸念を払拭するような、市場の期待を上回るポジティブな材料が必要とされています。
【理由②】金利上昇への警戒感
不動産業界全体にとって、金利の上昇は大きな逆風となり得ます。金利が上がると、不動産開発のための借入コストが増加し利益を圧迫します。
また、不動産投資の魅力が相対的に低下し、不動産市況全体が冷え込む可能性も出てきます。日本でも、長年の金融緩和政策から利上げが意識されるようになり、市場では金利上昇への警戒感が高まっています。
ヒューリックは対策を講じていますが、不動産セクター全体への逆風が株価にも影響を与えていると考えられます。
【理由③】オフィス需要の先行き不透明感
ヒューリックの強みは、都心駅近の優良なオフィスビルです。これまで、その空室率は驚異的な低水準(0.3%など)を維持し、安定した収益源となってきました。
しかし、コロナ禍を経てテレワークが普及したことや今後都心部で大規模なオフィスビルの供給が増えている背景があります。
将来的にオフィス需要が鈍化し空室率の上昇や賃料の下落が起こるのではないか、という懸念も根強く存在します。
すでに収益性が非常に高い状態であるため、ここからの大きな上振れよりも将来的な悪化の方が意識されやすい状況と言えるかもしれません。

株価が底堅いのはなぜ?ヒューリックの3つの強み
上値が重い一方で、ヒューリックの株価は大きく崩れることなく、一定の水準で底堅さを見せています。その背景には、同社が持つ確固たる強みがあります。
【強み①】圧倒的な資産の質と安定した収益基盤
ヒューリックの最大の強みは、東京23区、特に銀座などの都心・駅近エリアに集中した、非常に高い不動産ポートフォリオです。
所有物件は景気変動の影響を受けにくく、高い稼働率と賃料水準を維持しています。この盤石な賃貸事業が、安定した収益を生み出す源泉となっています。
【強み②】成長戦略と事業の多角化
ヒューリックは古いビルの建て替えによって資産価値を向上させたり、ホテル・旅館事業や都心型データセンターなどニーズに合わせた成長分野へも積極的に事業を展開しています。
M&Aにも積極的で教育事業などを傘下に収め、連結ベースでの収益拡大を図っています。この経営戦略が連続増益という実績につながっています。
【強み③】手厚い株主還元(連続増配と株主優待)
株主への利益還元に非常に積極的である点も、株価の大きな下支え要因です。16期連続の増配(2024年12月期時点)こともあり、高配当株投資家からの強い支持を集めています。
また、300株以上を2年以上継続保有することで6,000円相当のカタログギフトがもらえる株主優待も、個人投資家にとっては大きな魅力です。
ヒューリックの基本情報(事業内容・業績・配当)
ヒューリックは、東京23区の駅近という資産価値の高いエリアにオフィスビルや商業施設、マンションなどを所有・運営する不動産会社です。
事業の柱は優良物件からの安定した賃料収入を得る不動産賃貸・販売事業です。それに加え、古い建物を現代のニーズに合わせて建て替えたり、新たなビルを建設したりする不動産開発事業にも強みを持っています。
また、不動産事業で培ったノウハウを活かし、ホテルや旅館の運営を行うホテル運営事業や、保険事業も展開。さらに、近年では事業の多角化を加速させています。
例えば、教育事業を手がけるリソー教育を子会社化し「こどもでぱーと」の開発を進めるなど、社会のニーズを捉えた新しい不動産活用にも挑戦しています。
さらに「ヒューリックリート投資法人」を通じて、個人投資家向けに不動産投資信託(REIT)を提供するなど、金融分野との連携も深めているのが特徴です。
直近5年間の業績は、以下の表を参考にしてください。

直近5年間における一株あたりの配当金推移は、以下のとおりです。
・2020年:36円(配当利回り:3.18%)
・2021年:39円(配当利回り:3.57%)
・2022年:42円(配当利回り:4.04%)
・2023年:50円(配当利回り:3.39%)
・2024年:54円(配当利回り:3.94%)
ヒューリック株は割高?今後の見通しと投資の考え方
株価水準としては、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標を見ると、過去の平均や同業他社と比較しても、現在の株価は特に割高とは言えない水準にあります。
連続増配を続ける成長性や資産の質を考えれば、割安と捉える見方もできるでしょう。
今後の株価上昇の可能性としては、新規開発物件の竣工や建て替えによる収益性の向上、インバウンド需要を取り込むホテル事業のさらなる成長が期待されます。
市場の期待を上回る形で進捗すれば、株価は現在のレンジを上抜けていく可能性もゼロではありません。
一方で、下落リスクとしては想定以上のスピードでの金利上昇や、それに伴う不動産市況の本格的な悪化が挙げられます。
ヒューリックは、株価が数倍になるような急成長を狙う銘柄ではありません。その代わり、都心一等地という盤石な資産を背景とした安定成長と、積極的な株主還元を受けられる長期保有のメリットが大きい銘柄ではないでしょうか。


