「エヌビディアはもう天井なのではないか」。11月17日週のはじめ、SNSだけではなく、いわゆる経済領域のオールド・メディアにもそのような悲観論が並びました。週後半に控えた生成AIの雄、エヌビディア社の決算が直前に控えていたためです。
同社の株は既に一企業だけの問題ではありません。多くの投資初心者がインデックス投信を通して購入している株価が急落すると、投信の基準価格にも大きな影響が生じます。果てはナスダックや日経平均株価への影響も懸念されます。投資家が固唾を飲んで見守った決算はどうなったのでしょうか。
エヌビディア・ショックは起こらず
現地時間19日の取引終了後、エヌビディアは「またも」予想を上回る決算を発表しました。エヌビディア・ショックは起こらず、投資家の懸念は空振りに終わりました。短期相場で同社の株価は一時約5%上昇しただけではなく、AIセクター全体に波及します。さらにインデックス投信にも大きな影響があります。NISA勢に影響の大きい「オルカン」についてはどうでしょうか。

オルカンの構成銘柄のうち、最も構成割合が大きいのはエヌビディア(5.30%)です。上記のチャートを見ると、11月17日前後からオルカンのチャートは落ち、決算を受けて挽回した印象を持ちます。25日MA(移動平均線)も一気に超えています。では、結果論は何も無くで終わりましたが、エヌビディアの下落に備えて今回「押し目買い」をした方々も多いでしょう。この勉強は無駄だったのでしょうか。
エヌビディアは企業価値が評価される稀有な企業
これまでの決算においても、エヌビディアは好決算に期待されることも多くありました。これから世界経済を変えるであろう生成AIの旗手ですから当然です。その期待値の大きさは、「同社は企業としてここまで到達すべき」という企業価値(バリエーション)によって示されます。
つまり同社の決算が好調でも、決算発表の内容や経営陣の発言などが「企業価値を上昇しない」と判断されると、同社の株価は時間外取引で下落します。今回もその動きが懸念されました。世界有数とはいえ、一企業の決算が世界のチャートを動かすのには、ハイテク銘柄の牽引力を強く感じます。

今回「押し目買い」の勉強をしたみなさまへ
投資の手法に「押し目買い」という手法があります。高値が継続するチャートが一時的に下落したところで買いを入れる手法です。今回エヌビディアの株、またはオルカンが一時的に下落するとしたら、まさにこの押し目買いのチャンスでした。筆者は月に50本を超える個別相談を受任しておりますが、今日は朝から押し目買いの説明を何回するのだろう、と構えて迎えた朝でした。今のところ、お客さま各位の評価額は引き続き堅調で、1人として押し目買いの説明をしておりません。
ただ、これから必ず、今回勉強したことが役立つタイミングは到来します。
2026年にかけて、米株の伸長もそろそろ鈍り始めるのではと見ている専門家の発信も多くなりました。2025年1年間(2025年1月から11月現在)のオルカンの伸びは約10%から12%で、いわゆる塩漬け勢も投資の効果を充分に期待しています。
一方で留まるところを知らないアメリカ国内のインフレや、トランプ大統領の指揮下での中間選挙に向けた不安感に覆われた2026年がはじまります。2025年4月の関税ショックのような直接的な要因が無くても、横ばいトレンドになる可能性は十分にあります。
押し目買いで個別株を買う練習をしたい
押し目買いは個別株を推奨します。オルカンが下落したときに買いを入れる手法もありますが、多くの方にとってオルカンは積み立てて投資するものであり、値動きを見て売買をするものではないためです。
オルカンなどの投資信託をコアに置き、まわりを「サテライト」として展開します。個別株のほか、アクティブ投信や金なども適する部分です。ただ個別株は20%以上の十分なリターンが期待できるため、投信と組み合わせてポートフォリオを構築することができます。特にここ数年のようにインデックスから天井感を感じられるチャートであればなおさらです。
その端緒となりそうな2025年12月のFOMC(アメリカ連邦準備制度理事会)は、政府閉鎖による10月雇用統計の資料不足により利下げ見送りの可能性が高まっています。ならば2026年を迎えたあとの数ヶ月のあいだに、投資家は再び何かしらの判断を迫られることになるでしょうか。そのときまでの数ヶ月、ちょうど年末年始もあります。勉強のチャンスといえるのではないでしょうか。



