日経平均株価が一時の狂騒ならず2回目の50,000円を突破したとき、多くの投資家はこの言葉を思い出したことでしょう。辰巳天井、午尻下がり。2025年は巳(へび)年です。前年から上昇チャートを描いた株式相場は天井に到達したと捉えることができます。そして2026年、一転して方向転換の可能性があります。
「午」はアメリカ経済か
2025年11月のNVIDIAの決算発表では、あまり刺激的な予測をしない経済新聞なども「エヌビディア・ショックの到来か」と書き、相場下落を懸念しました。下落と言ってもリーマン・ショックのように短期間で暴落するものではなく、漸減的に落ちていくような動きです。横ばいトレンドと下落トレンドの中間という言葉が適切に思えます。
背景はアメリカ経済の停滞です。国民を苦しめるインフレは進行していますが、株価チャートで見ると国内経済は成長を続けています。とはいえ株式相場は国内を表す鏡です。実態経済との乖離感はいずれ大きな転換要因となります。今回の決算ではエヌビディア・ショックは起きなかったけれど、今後のリスク要因によっては2026年のどこかでアメリカ経済が「牛」となる可能性は否定できません。
テクニカルな視点から見た下落相場という見立てと、AIを中心とした高値がバブルと判断されるがための下落、両方の見方ができるでしょう。またエヌビディアは好決算はもちろんですが、いわゆる世の中からの期待値で構成された企業価値(バリュエーション)によって現在の株価が形成されているのも事実です。これが半永久的に続いていくのか、それとも有効期限のあるものなのか。投資家の見解は分かれます。
もうひとつの要因はアメリカを猪突猛進に率いる大統領です(牛ではなく猪ですが)。2026年秋には中間選挙があります。制度上どれだけ現職(共和党)が勝っても再選の無いトランプ大統領にとって、2026年は岩盤支持層を広げる大きなチャンスです。11月21日、まったく考え方の合わないニューヨークのマブダニ市長と理解し合ったように発信したのも、2年前の「トリプル・レッド」のような絶対感に自信が持てなくなっているためではないでしょうか。

「押し目買い」の準備を
先週、生成AIの雄であるNVIDIA(エヌビディア)社の決算がありました。本メディアで「エヌビディア・ショックに備えて『押し目買い』を勉強したみなさまへ」で記した通り、押し目買いの相談は1人もありませんでした。
投資家の皆様には、株価の低い銘柄を拾うバリュー投資ではなく、ぜひ個別株の売買を推奨します。インデックスの代表格であるオルカンが下落したときに買いを入れる手法もありますが、多くの方にとっては積み立て投資するものであり、値動きを見て売買するものではないためです。
端緒となりそうなのは2025年12月のFOMC(アメリカ連邦準備制度理事会)。政府機関の閉鎖による10月雇用統計の資料不足により利下げ見送りの可能性が高まっていますが、年が明けて数ヶ月のあいだに、投資家は再び何かしらの判断を迫られることになると見込まれます。
「午尻下がり」は本当か
午年は12年に1回到来します。過去の午年、本当に景気は一段落してきたのでしょうか。
(午年の騰落率と値幅率)

1978年と2014年は高い騰落率を記録しており、1年間をかけて株価が上昇したことが読み取れます。また1990年は「バブル崩壊」の只中であり、2002年はITバブル崩壊後の下落相場でした。偶然2つ重なりましたが、午年では無くても大きく下した1年でした。この5年をみると、「午尻下がり」は当てはまらないことになります。ただ後述する通り、現在の相場にも過熱感を感じます。2度あることが3度あることにならないことを願うばかりです。
そして、気になるのはいずれの年も騰落率が10%近く(1966年を除く)、値幅率に至っては15%を超える変動があった年でもあります。2025年末に高値にあるチャートから仮に15%として、上がる可能性と下がる可能性のどちらが高いか。多くの方が後者を選ぶのではないでしょうか。
とはいえほんの1年前、2025年の正月に「今年は5万円を突破する!」と読んでいたら、多くの人から怪訝な眼で見られたこともまた間違いありません。2025年最初の取引(大発会)の始値は3万9,945円。5万円どころか4万円を超えるか!と熱狂していたことを思い出します。そういえば「辰巳天井」でした。アノマリーを馬鹿にすることなかれ。2026年の終わり、羊さんにバトンを渡すときには、我々はどのような表情をしていることでしょうか。ちなみに羊年は「辛抱」とのことです。アノマリー通りなら、粘り強さを求められる数年間になりますね。



