気になるテーマ解説

住宅ローン減税に見直し観測 需要喚起となるか?

11月12日に「国土交通省が住宅ローン減税の適用基準として準拠してきた居住面積の目安を40平方メートル(以下、平米)程度に引き下げる」とのニュースがありました。これを報じた日本経済新聞電子版によれば、資材高などによる住宅価格の高騰に対して家計の負担軽減を図るため、せまいマンションや戸建てにもローン減税を適用できるようにするとのことです。


詳細は同記事を直接見ていただくのがよいと思いますが、現状では住宅ローン減税を受けるためには原則として50平米以上であること(特例あり)が一つの要件です。広さの制限が緩和されることで選べる対象も増えるため、諸々含めて良い方向で話がまとまってほしいところ。今回は住宅市場が縮小傾向であるなか、制度改正によってメリットがありそうな人、株式市場に関連するテーマを考えていこうと思います。


住宅ローン減税の見直し

もう少し記事を引用すると「新計画では2人世帯、両親と子の3人世帯、両親と未就学の子2人の4人世帯の場合の居住面積として『40平米程度を上回る住宅の供給や流通を推進する』と明示する」とのことです。ちなみに、畳1枚でおおよそ1.6平米(1平米は0.6畳)です。


これには持ち家だけでなく賃貸物件も含まれると思われ、40平米程度のマイホームを普及させようというメッセージではないでしょう。現状の賃貸市場ではファミリー向け物件が少なく、供給が足りていないため家賃が高い傾向にあります。供給戸数を増やし、ファミリー向け賃貸の市場を安定化させる狙いがあると考えられますね。


40平米の持ち家

住宅ローン減税の条件が緩和されることは朗報ではありますが、40平米のとなると賃貸物件でいえばややせまい1LDK~2DK程度となります。夫婦のみ、子どもがまだ小さい時期であればそこまで不便はないですが、子どもが大きくなれば手狭になるし収納も不足してしまう面積です。


賃貸であれば比較的容易に引っ越しが可能ですが、持ち家となるとそうはいきません。ファミリーが40平米のマンションや戸建てを買うといったケースは少ないでしょう。そうなると、40平米程度の持ち家で住宅ローン減税を受けるメリットがあるのは夫婦のみ、または単身者になりそうです。


住宅情報サイトで40~45平米の中古マンションを探してみると、東京23区内(都心5区を除く)であっても1LDK、2DKで3000~4000万円台の物件がそこそこ多く見つかりました。住宅ローンとして3500万円を35年金利1%で組んだとすると、金利が変わらないことを前提として月10万円弱の支払いとなります。


いまは働き方も多様化して在宅ワークや転勤なしの会社も増えましたので、引っ越す可能性が低い人であれば持ち家を検討することも悪くはないでしょう。ただ、住宅ローンを変動金利で組むと利上げによって負担が増えることになります。修繕費や固定資産税などがかかることにも注意が必要です。


一方、賃貸であっても大幅な家賃の引き上げが実施されることがあります。住宅設備や性能の面では持ち家に劣りやすいため、賃貸と持ち家のどちらが良いとは一概に判断できません。


中古物件と省エネ基準の条件はどうなるか

住宅ローン減税の見直しが行われることに関して、中古物件と省エネ基準の条件も緩和されるのかがポイントです。2025年時点では、省エネ基準適合住宅の要件を満たさない物件については住宅ローン減税の適用を受けることができません。



出所:国税庁


2025年4月からは原則すべての新築住宅に対して「省エネ基準適合」が義務付けられているため、新築物件や比較的新しい中古物件はそこまで気にする必要はありません。ただ、築古物件では同基準を満たしていない場合もあるため、買った後に減税を受けられないことがわかると取り返しがつかないことになります。現状では持ち家なら何でも減税対象、とはならないことには注意が必要ですね。


住宅ローン減税に見直しが入るということで、この条件がもし緩和されることになれば築古物件も買いやすくなります。もしそうでなかった場合は、リノベーションやリフォームによって「省エネ基準適合」を取得できているか、漏れなくチェックしておきたいところです。


不動産株にも追い風か?

40平米程度の狭小物件も住宅ローン減税の対象となれば不動産会社にとっても提案しやすい物件が増えることになるので、追い風となる企業も少なくなさそうです。まだ報道ベースの段階ではありますが、テーマに関連する日本株を今のうちから探してみるのもよさそうですね。


<恩恵がありそうな銘柄一例>



この連載の一覧
住宅ローン減税に見直し観測 需要喚起となるか?
日経平均がバブルになったらいくら?
「フィジカルAI」が次のテーマに
日経平均は一段と半導体株指数化が進む
日本のニッチトップ10選
日経平均と過去の自民党総裁選
つみたてNISAの成績、日経平均とS&P500が逆転?
令和7年の地価上昇トップは北海道
タイムズカーシェアの料金体系変更を考える
流行のハイベータ投資
ユニークなETF(上場投資信託) シンプレクスAM編
ユニークなETF(上場投資信託) グローバルX編
ソフトバンクグループとNAV
営業利益は増加しているが経常利益は減少
レバナスがひそかに高値更新
関税リスク後退で株価回復が期待される業種は?
8つに分けられるTOPIX(東証株価指数)
7月以降は訪日客数が持ち直すか?
いまさら聞けない関税を簡単解説
日銀のスケジュールをチェックしてみよう
注目度急上昇のステーブルコインとは?
モノ言う株主の存在感
量子コンピューターの人気が再燃
名前だけで買われてしまった銘柄
株主還元強化がマストのバリュー株
グロース市場に100億円の壁
NISAでまさかの毎月分配型が解禁?
急落はチャンス? 業種別で大きな差も
インバウンド需要はピークアウト?
節約志向の中で注目したい食品スーパー
日本の水道管は地球30周分
NISAでも債券投資の検討余地?
ありそうでなかったTOB(株式公開買い付け)狙いの投信が登場
HEMSとは
新しい配当基準「DOE」の採用が増加傾向
苦渋の値上げは続くのか
その優待、長く続く?
どこまで利上げする?
最近目にするAIエージェントとは?
2025年の注目テーマ3選
ハンバーガーが高すぎる?
来年はへび 変化の年は課題も山積み
神戸で市立中学校の部活動が終了 民間企業に求められることは?
持ち合い解消の流れが一段と加速
令和7年度の住まい補助は「子育てグリーン住宅支援事業」に
自社株買いの良い影響を考えてみる
AIが人の1万倍賢くなる?
手取りが増えたら何をしたい?
気を付けたい権利取りのポイント
【気になるテーマ解説】DX銘柄も生成AI活用が必須に
来年のNISA枠はどうする?
投資促進の一方で詐欺被害も多発
市場予想との付き合い方
政策保有株の解消良し悪し
「地面師たち」が大ヒット 厳しい日本の土地事情
7分の1は空き家の日本
QUOカードはなぜ人気なのか
住宅ローン人気銀行の動向まとめ
米大統領選、どこに恩恵?
中小型株への資金回帰が鮮明に
国際会計基準のルール変更へ 営業利益が分かりやすく?
新紙幣の発行開始でキャッシュレスが進む?
次世代自動車「SDV」とは?
マンション価格下落も依然高い そういえば晴海フラッグは?
プロが注目する配当株は?
出生率が過去最低を更新 止まらない少子高齢化
日本の長期金利が1%台に 今後の影響は?
日経平均と半導体株の関係
株式分割は本当に好材料なのか
株価は割高なのか? 指標を参考にしてみる
新興市場をざっくり振り返ってみる
金が人気の背景とは?
東京都の予算
マイナス金利解除が決定 マーケットへの影響は?
長期投資は我慢比べ
アクティブETFのその後
シリコンアイランド九州は復活か
政策保有株式の売却が進む(2)
決算プレーと自動売買
配当株投資の怖いところ
インターネット広告に試練 Cookie規制とは?
ロボアドバイザーの先駆け ウェルスナビの実力は?
優秀なインデックスファンドとは?
辰年は上がりやすい?
新NISA 注意したい配当金と分配金
新NISA 流行の積み立てと為替リスク
コスト最安の日本株アクティブファンドが登場
NTTが推進するIOWN構想とは?
政策保有株式の売却が進む
歯の健康は全身の健康 病気は未然に防ぐ時代へ
MSワラントの恐怖
配当金が保険料の賦課対象に?
今年は暖冬の予報 マーケットへの影響は?
投信の超低コスト競争に拍車
建設業界と2024年問題
積み立て投資との相性良し悪し
住宅ローンの借り入れは計画的に
東証スタンダード市場の選択申請が増加中
長期金利と株価の関係はよく言われるが・・・
国内初のアクティブETFが誕生
魚が高すぎて買えません
配当方針いろいろあります
太陽光発電は自家消費へ
メタの新SNS「Threads」使ってみた
電池の覇権、リチウムの次は亜鉛?
SENSEX指数が最高値更新 インドってどんな国?
訪日旅行者は今後も伸びる?
半導体製造装置 1台おいくら?
変動金利型住宅ローンが実質マイナス金利へ
話題沸騰のダイヤモンド半導体とは?
著名投資家の投資候補を考察
デジタル給与が解禁! メリット・デメリットは?
私の銀行は大丈夫?
全人代が開幕 いまさら聞けない日本の中国依存度
金利上昇の懸念はあるが省エネ住宅は拡大へ
【気になるテーマ解説】 健康だけじゃない? アミノ酸の可能性
なんでも材料視する株式市場
多発する客テロ AIカメラに注目集まる
会話は人そのもの 話題の「ChatGPT」とは?
「超」高齢化社会の日本
金利に翻弄される銀行 金利の影響と債券の仕組み
出生数80万人割れへ 子育て関連株の行方は・・・
何かと注目される親子上場
【気になるテーマ解説】市場規模は無限大? 壮大な宇宙産業
【気になるテーマ解説】レベル4解禁! ドローンの普及で何が変わるのか
【気になるテーマ解説】成功率3万分の1? 新薬開発の過酷な道のり
【気になるテーマ解説】パワー半導体ってなんだ?
【気になるテーマ解説】「Web3.0」ってなんだ?

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

畑尾 悟の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております