【米国株インサイト】25年IPO銘柄(後編):フィグマ、米大手500社の95%が利用
米国の新規株式公開(IPO)が順調に回復しています。2020-21年のIPOブームの後、2022年には米国株式相場が冷え込み、IPO市場も厳冬期を迎えましたが、2023年以降は着実に復調しています。前回は大規模なデータセンター運営のコアウィーブ(CRWV)とIDセキュリティーのセールポイント(SAIL)をご紹介しました。今回はデザインツール提供のフィグマ(FIG)、チケット転売サイトのスタブハブ・ホールディングス(STUB)、金融サービスのチャイム・ファイナンシャル(CHYM)を取り上げます。
フィグマ、オンラインでデザインツール事業を展開
フィグマ(FIG)はオンラインでデザインツールを提供しています。クラウド上で提供するためどこからでもアクセスが可能で、時間や場所を選ばないツールとして支持されています。リアルタイムの共同作業も可能で、チームでデザインワークに取り組む際には威力を発揮します。
豊富な機能と直感的な操作性も強みで、デザイナーでなくても使い勝手が良いという特徴を持ちます。2025年1-3月の平均月間アクティブユーザー数は1300万人超で、その3分の2がデザイナー以外のユーザーでした。人工知能(AI)やプロトタイプの活用で、デザインの専門職ではない人もサポートします。

無料版からプロ仕様版、大手企業向けまで需要や料金に応じて多様なデザインツールを用意しています。代表格がウェブサイトやアプリの利用者が快適に操作できるように作り込むユーザー・インターフェイス(UI)デザインの作成ツールです。また、ユーザー体験の向上を目的にプロセス自体を設計するUXデザインの作成ツールも提供しています。
オンラインで消費者との接点となるUIデザインやユーザー体験の向上を図るUXデザインは企業にとって極めて重要です。2025年3月時点で「フォーチュン500」にランク入りした米国の大手500社の95%、世界の上位2000社で構成する「フォーブス・グローバル2000の78%がフィグマのツールを利用しています。
このほかにもウェブサイトやアプリのページ単位の設計図に位置づけられるワイヤーフレームの作成ツール、図形作成のダイアグラム作図ツールといった利便性の高い機能も提供しています。

デザインツールで米国を代表する企業といえば、画像編集ソフトの「フォトショップ」やグラフィックソフトの「イラストレーター」などを擁するアドビ(ADBE)です。アドビは2022年、フィグマを200億ドルで買収する計画を進めましたが、独占禁止を懸念する当局の反対で2023年12月には買収を断念した経緯があります。
スタブハブ・ホールディングス、チケット転売サイトを運営
スタブハブ・ホールディングス(STUB)はライブチケットの転売サイトを運営する企業です。個人や業者、コンテンツの権利保持者などがマーケットにチケットを出品し、ファンなどの買い手がそれを購入するという取引を仲介します。売買時に徴収する取引手数料が主な収入源です。
チケット取引の対象となるライブイベントはコンサート、スポーツ、演劇などです。北米では「スタブハブ」、その他の地域では「viagogo」というブランドで事業を展開しています。

ライブイベントのチケットのリセールに特化しているだけに買い手向けにはチケットの検索機能、価格比較機能、安全な決済と配送など必要不可欠なサービスを提供します。一方、売り手向けでは在庫管理ソリューションや値決めツール、顧客分析など利便性の高いサービスを手掛けます。コンテンツの権利保持者などが空席を埋めるために「スタブハブ」を利用し、顧客の需要を探りながら値下げを行うケースもあるようです。
2024年の実績では90を超える国・地域で行われたライブイベントが対象となり、チケット販売数は4000万枚を超えています。北米ではメジャーリーグベースボール(MLB)などの4大プロスポーツがある上、人気歌手の世界ツアーといったライブイベントなどビジネスチャンスには事欠きません。

さらに2026年にはサッカーのワールドカップが米国、カナダ、メキシコの3カ国共催で行われます。「スタブハブ」と「viagogo」では早くもチケットの販売が始まっています。
チャイム・ファイナンシャル、便利な金融サービスで存在感
チャイム・ファイナンシャル(CHYM)は一般消費者向けに金融サービスを手掛けています。銀行の日常のサービスが米国人の要望を満たしていないとの考えに基づき、アプリを通じて支出や預金、迅速な資金の借り入れなど使い勝手の良いサービスを提供します。

2025年3月末時点のアクティブ会員数は約860万人で、このうちの67%がチャイムをメインの金融サービス事業者として利用しています。従来型の銀行の収入源は預金金利と貸出金利の差で生じる金利収入ですが、チャイムは自社ブランドのデビットカードまたはクレジットカードの利用で生じる手数料を主な収入源としています。
チャイムは地域金融機関のバンコープ・バンクとストライド・バンクと提携しています。業務提携を通じてなるべく資産を持たないライトアセット戦略を維持しつつ自社のモバイル・プラットフォームを通じて両行の銀行サービスを利用しているのです。

チャイムをメインの金融サービス事業者として利用する層は毎月の給与振り込みにもチャイムの口座を使うケースが多いようで、これが会員向けの短期貸付の原資になります。低コストの資金を低コストで貸し付け、会員の利便性を高めています。具体的な商品では普通預金残高が一時的に不足した場合に融資する当座貸越の「スポットミー」や給料日前に最大500ドルを融資する「マイペイ」などがあります。



