新NISA利用者の投資行動 ~何を目的に、どんな銘柄を選んでいるのか~

前回のコラム『新NISAの2年目 ブームから定着へ~日証協調査にみる利用者の実像~』では、日本証券業協会の「新NISA開始後の利用動向に関する調査結果」から、新NISA(少額投資非課税制度)を利用している人の年収や投資金額、資金の出どころなどを見てきました。


そこから見えてきたのは、新NISAが特別な資産家だけの制度ではなく、一般の家計の延長線上で活用されているという姿です。


では実際に、新NISAを利用している人たちはどのような経験を持ち、どのような目的で制度を使い、何を購入しているのでしょうか。今回は、利用者の投資経験や投資目的、銘柄選びの傾向を見ていきましょう。


新NISAは、投資経験が長くない人も利用している


調査結果を見ると、新NISAの利用者は投資のベテランばかりではありません。


回答者7,926人に証券投資の経験年数を尋ねたところ、新NISAになった2024年以後に投資を始めた「2年未満」と答えた人は11.8%で933人でした。「10年未満」という人は61.3%(4,858人)でした。


NISAが始まったのは2014年です。つまり、NISAがスタートした頃以降に投資を始めた人が6割を占めていることになります。NISAが証券投資を始めるきっかけの1つになった可能性があると見てもよいでしょう。制度が拡充された新NISAが後押しとなり、新たに資産形成を始めた人も多いと考えられます。


証券投資の経験年数は、回答者の平均が11年7カ月。男女別では、男性が12年4ヵ月で、女性が10年8ヵ月です。経験年数が20年以上という人も全体の20.7%に上っています。


投資枠別で見た場合、投資経験10年未満という人は、つみたて投資枠利用者6,355人のうち69.1%でした。つみたて投資枠は投資経験の浅い人の利用が多くなっています。


一方、成長投資枠利用者6,048人のうち56.3%が投資経験10年未満と、投資経験が浅い人でも利用はされているものの、新NISA以降の2年未満という人は9.6%で、5年~10年未満の人が22.5%です。成長投資枠は、ある程度投資経験を積んでいる人が利用している傾向となっています。ベテラン勢を見ると、10年~20年未満の人が19.0%、20年以上の人は24.2%で、10年以上の人が4割強を占めています。


新NISAを始めた理由は?


では、なぜ人々は新NISAを始めたのでしょうか。


新NISAを始めた動機・目的として最も多かったのは「将来・老後の生活資金」で57.1%でした【グラフ1】。次いで「資産形成自体が目的」が40.8%、「将来の不測の事態への備え」が28.0%と続きます。



また、「物価上昇(インフレ)対策」という回答も21.9%ありました。近年は物価の上昇が続いており、預金だけでは資産価値が目減りする可能性があるという意識の広がりも背景にあると考えられます。この結果からは、新NISAは短期的な利益を狙うというよりも、将来に備えた資産形成の手段として利用されていることが分かります。


つみたて投資枠で選ばれている投信タイプTOP5


次に、つみたて投資枠で購入された銘柄のタイプを見てみましょう。


2025年の調査では、つみたて投資枠で購入された銘柄の上位は、いずれもインデックス型投資信託でした【表1】。最も多かったのは「全世界株式(日本を含む)」で34.2%、次いで「米国株式」24.0%、「全世界株式(日本を除く)」15.6%となっています。



つみたて投資枠でこれらの銘柄が選ばれる理由としては、「海外の成長性への期待」や「基準価額の上昇が見込まれる」といった点が多く挙げられています【グラフ2】。また、「ポートフォリオの多様化」や「インフレ対策」といった理由も一定の割合を占めています。



成長投資枠では日本株が中心


一方、成長投資枠ではやや異なる傾向が見られます。購入銘柄のトップは「日本国内株式」で48.2%と、半数近くを占めています【表2】。そのほかには、全世界株式や米国株式などのインデックス型投資信託も選ばれています。



銘柄を選ぶ理由としては、「中長期的な株価上昇が見込まれるから」が最も多く、「企業の業績が良い(今後良くなると予想される)」といった回答も目立ちます【グラフ3】。また、「配当金や分配金が魅力」「株主優待が魅力」といった、日本株ならではの理由も挙げられています。



つみたて投資枠では利用できない個別株などへの投資を成長投資枠で行う、といった枠の特徴に合わせて使い分けている人が多いと考えられます。


新NISAは長い人生のお伴


こうした結果から見えてくるのは、新NISAが長期の資産形成のための制度として利用されているという姿です。つみたて投資枠では世界株式のインデックスファンドを中心に積み立て、成長投資枠では日本の個別株などにも投資する……というふうに、制度の仕組みに合わせて投資を行っている人が多いことが分かります。


新NISAは投資経験の浅い人でも利用しやすい制度ですので、まずは一歩踏み出してみることが大切です。始めてみれば、どのような方法が自分の目的や家計に合っているのかがだんだん見えてきます。


さらに投資経験を積めば、自分なりの判断ができるようになります。つみたて投資枠より幅広い投資対象を利用できる成長投資枠も、徐々に自分の考えに応じて活用できるようになるでしょう。将来の資産形成は、短期間で結果を求めるものではありません。長い時間をかけて、少しずつ育てていくものです。


【参考資料】 日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(概要)

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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