家計は“寝かせるお金”から“働かせるお金”へ

日本の家計が持つ金融資産残高が、3四半期連続で過去最高額を更新し、2,351兆円に達しました。残高が増えている傾向はこれまで通りですが、最近は、お金の置き場に変化が生じているのです。


「金融資産の半分が預金」に変化


日本銀行の「資金循環統計」では、3ヵ月ごとに、家計、企業、政府、海外部門の資金の流れと金融資産残高を集計し、公表しています。この統計での金融資産には、企業年金・国民年金基金等に関する年金受給権や、ゴルフ場預託金、個人事業主(個人企業)の事業性資金なども含まれます。


【グラフ1】は、2025年12月末までの6四半期について、家計の金融資産の内訳の推移を示しています。2025年12月末(速報値)は、9月末に比べて64.4兆円増え、前年の12月末と比べると117.9兆円増加しました。



現金・預金の残高は増えているものの、金融資産全体の残高に占める割合は48.49%で、低下傾向です。前年同月末時点は50.81%でしたが、2025年9月末には初の50%割れで49.07%となり、12月はさらに低下しました。


一方、前年末よりシェアが高まったのは証券投資。金融資産全体に占める割合は、債券が1.40%から1.46%へ、株式等が12.69%から14.53%へ、投資信託が6.10%から7.03%になりました。


従来、「日本の家計金融資産は半分以上が預金」と言われていました。12月といえば多くの人がボーナスを受け取っている時期。全体の金融資産が増える中、現金・預金から証券投資に移動していることが読み取れます。


家計の金融資産は、「とりあえず預金」の時代から転換しつつあるようです。個々の運用ニーズやリスク許容度に応じて、選択され始めています。


「とりあえず預金」から「選択」へ


金融資産残高の増減は、「価格変動」などによる部分と、購入から解約を引いた「資金の純流出入額」による部分に分けることができます。証券は資産価値が上下し、価格が上昇すれば残高の増加に影響を与えます。


2025年10~12月期は、家計が保有する上場株式等で約18兆円分、投資信託では約10兆円分、値上がりによって残高を押し上げました。資産運用は「お金を働かせる」と表現されることがあります。まさに、この3ヵ月間でお金が働いて稼いでくれた金額といえます。


【グラフ2】は、家計が保有する上場株式等と投資信託、そして現金・預金(右軸)の残高について、データをさかのぼることができる1997年12月末からの推移を示しています。



金融資産全体は、期間を通して緩やかに増加していますが、2021年頃から伸びが小さくなっていることが読み取れます。一方、上場株式はリーマン・ショック(2008年9月)で急激に残高を減らした後、アベノミクス(2012年12月)で増加基調になり、断続的に増え続けています。投資信託は、特に2020年以降に増加の伸びが大きくなっていることがわかります。


変化は確実に起きている


投資信託の残高増は、資金流入を伴っています。


残高の増減は、価格変動のほかに資金の出入りも影響します。投資信託の資金フローは、2020年4~6月期以降、23四半期連続の純流入となっています【グラフ3】。「資金フロー」とは、金融商品に預け入れたり投資をしたりした金額から、解約・売却金額を差し引いた金額です。



定期預金は、2016年1~3月期から35四半期にわたって純流出でしたが、2024年10~12月期に純流入にいったん転じ、その後は流入と流出を繰り返しています。長く続いた低金利時代を終え、見直されている兆しはあるものの、持続性という点では投資信託に比べるとやや弱い印象です。


また、上場株式の資金フローは、残高が増加し始めた2020年4~6月期以降、純流入が12四半期で純流出が11四半期。互角なのは、投資信託よりトレーディング要素が強いことも影響しているのでしょう。残高が増加していながらも、その裏側では売りもこなしている様子がうかがえます。


投資信託の連続純流入は、新NISA(少額投資非課税制度)の「つみたて投資枠」が貢献していると考えられます。従来、投資信託は「新商品が出ました」といったセールストークで回転売買が横行していた黒歴史もありました。ようやく投資信託が、その特徴を生かして使われるようになってきたと感じます。


家計のお金は、「寝かせるもの」から「働かせるもの」へ。変化はまだ途上ですが、その流れは確実に始まっています。


【参考サイト】

日本銀行>統計>資金循環

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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