あの株はいまいくら?

第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はVtuberグループ「にじさんじ」の運営などを行うANYCOLOR(5032)をみていきます。

「にじさんじ」には約150名のライバーが所属。ライブストリーミングによる双方向性のコミュニケーションのほか、グッズ・デジタル商品の販売やイベント開催などを手掛けており、英語圏や中国を中心に海外でもビジネスを展開しています。

では、エニーカラーの上場からの株価の動きを振り返っていきます。



エニーカラーの株価推移(上場から3カ月)

2022年6月8日に上場した同社の初値は、公開価格(1530円)の3.1倍となる4810円でした。上場直後の6月13日には23.4期通期の営業利益が大幅増となる見通しを発表。これが追い風となり、6月16日に株価は9200円まで上昇しました。


ただ、短期間で公開価格の6倍まで上昇したことから、さすがに高値警戒感が出てきていました。そこに「にじさんじ時価総額フジテレビ超え……26歳代表資産は1000億円超、30人以上の従業員も億万長者へ」というITmediaビジネスオンラインの記事が出たことが下落に転じるきっかけになったようです。


「時価総額がフジテレビ超えとなる株価はさすがに高すぎる」と、多くの投資家がこの記事により冷静さを取り戻したと考えられます。その後に株価は5000円台まで下落しました。

ただここで終わらないのが同社のすごいところです。秋の上場来高値更新に向け8月から上昇トレンドがスタートしています。



【エニーカラーの日足チャート(2022年6月~2022年8月)】



エニーカラーの株価推移(2022年8月~2022年11月)

8月から緩やかな上昇トレンドとなっていましたが、9月半ばにいっきに水準訂正が行われ1万円の大台に到達しました。

これは9月14日に発表した23.4期1Qの決算が予想以上の結果だったためと考えられます。なお、23.4期1Qの営業利益は21.2億円(前年同期比2.5倍)でした。

にじさんじ(日本)については全領域(国内ライブストリーミング、国内コマース、国内イベント、国内プロモーション)が堅調に推移、NIJISANJI ENについては、特にコマース売り上げの成長が売上高の成長をけん引したとしています。

業績拡大期待の高まりから、その後も株価は上昇。10月27日に上場来高値1万3790円を付けました。


【エニーカラーの日足チャート(2022年6月~2022年8月)】



エニーカラーの株価推移(2022年11月~2023年2月)

年末にかけてもう一段の上昇といきたかったのですが、そううまくはいきません。12月に入り株価は急落しました。


12月5日に同社株がロックアップ解除日(上場後180日経過)を迎えましたが、ここで一気に需給が悪化しました。

12月2日に証券会社からエニーカラー株の立会外トレードの実施が通知されましたが、この立会外トレードが、ロックアップ解除直前に行われるとわかったことで、大株主がまとまった量の株を売却しようとしていることが市場に伝わり、さらなる売りが出てくる前に処分を急ごうとする動きが加速したようです。12月2日に1万円を超えていた株価は、6日に7000円台まで下落しました。


翌年1月には海外市場で326万8200株の売り出しが実施され、これも需給悪化につながりました。その後も株価は下値模索が続き、2月14日には上場来安値4670円を付けました。



【エニーカラーの日足チャート(2022年11月~2023年2月)】


最後に

2月17日に女性VTuberグループ「ホロライブ」などを運営するカバー株式会社の上場が承認されました。3月27日に東証グロースに上場する予定となっています。

同じVTuber関連であるカバーの上場には注意が必要です。具体的には、エニーカラー株を売却し、カバー株を購入する動きが出てくる可能性があります。

ただ、エニーカラーは上場から9カ月程度が経過し、株価は初値とほぼ同水準まで下落しています。カバーに注目が集まりエニーカラーがさらに上場来安値を更新するようなら、押し目を狙うチャンスにもなると考えます。


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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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