欧州だけじゃない!米国でも暖房コスト増、家計を圧迫へ

バイデン大統領は「物価高を制御できる」と自信表明


「前月比のインフレ率はわずかに上昇しただけで、ほとんど上向いていない」--とは、バイデン大統領が米テレビ局CBSの看板番組“60ミニッツ”に出演した際の発言です。米8月消費者物価指数は前月比0.1%上昇、前年同月比は8.3%上昇し9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)が今年3回目の0.75%利上げを決定せざるを得なかったところ「物価高は制御できる」とも言及。インフレ鎮静化に自信を寄せました。

 

全米ガソリン平均小売価格が6月に統計開始以来で初めて5ドルを突破した後、9月19 日週に3.654ドルと約7カ月ぶりの水準まで下落しているため、エネルギー関連の一角がCPIの伸びを抑えていることは確かです。実際、7月に約40年半ぶりにつけた前年同月比9.1%の伸びから、ピークアウトしたように見えます。一方で、新たなインフレ圧力が米国の家計を圧迫するリスクがささやかれ始めました。欧州で問題視される、暖房コストです。

 

米8月CPIでも、既に光熱費は前年同月比19.9%上昇し、2006年1月以来で最も高い伸びを記録していました。ガソリン価格が25.9%と伸びを半減させた陰で、右肩上がりを続けています。



夏場はガソリン価格が急騰した事情もあり、米国エネルギー支援業者協会(NEADA)によれば、全米で約2,000万世帯、約6分の1が光熱費を滞納していたといいます。全米での滞納額は約160億ドルと、19年末比で2倍に膨らみました。平均滞納額は792ドルと、19年末比で同様に403ドルからほぼ倍増しており、いかに家計を圧迫しているかが分かります。

 

暖房コスト、2022~23年の冬は前年比17.2%上昇へ


冷房需要がクールダウンしても、11月以降は北東部を中心に暖房需要が高まります。NEADAが9月に公表した見通しでは、2022~23年にかけ冬場の暖房コストは前年比17.2%上昇の1,202ドルと、少なくとも過去10年間で最高額となるというではありませんか。2020~21年の888ドルからは、35.3%も上回ります。

 

最も伸びが高い燃料は天然ガスで、前年比34.3%の952ドルでした。問題は暖房で天然ガスに頼る全米の家計の割合ですが、48.7%と最も多いんですよね。次いで電力が42.4%を占めますが、前年比の上昇率は6.9%にとどまるとはいえ、金額では1,348ドルと天然ガスを上回ります。最も高額なのは灯油で2,115ドル(前年比12.8%増)となり、全米世帯のうち4.1%が重い負担増を強いられることになります。 

 


一難去って、また一難。米国での暖房負担は英国の“8割上昇”より伸びは限定的ながら、中低所得者層の財布を直撃することは間違いありません。

 

ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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