東証が6月30日に発表した、26日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は7兆167億円とデータが存在する1994年以降で初めて7兆円の大台を突破しました。
同週の日経平均株価は1週間の下げ幅としては約1800円。なかでも26日には3005.46円安と歴代3位となる下落幅を記録しています。投資家心理が悪化し、売りが売りを呼ぶ展開となってもおかしくないところですが、同週の市場全体の信用買い残は5410億円の増加となりました。
7月2日に同じく東証が発表した「投資主体別売買動向」を見ると、さらにこの週の動きがわかってきます。海外投資家が1.7兆円を売り越す一方で、個人投資家は1.2兆円近い買い越しとなっていました。日経平均が大きく下落するなかで、個人投資家が逆張りで買い向かったかたちです。これが前述した信用買い残7兆円超えにつながっています。
さらに細かく分解してみると、市場全体のトレンドという言葉では片付けられない歪な構図が浮かび上がってきます。実は増えた信用買い残5410億円のうち6割をただ1つの銘柄が占めています。それがNANDフラッシュメモリ大手のキオクシアホールディングス<285A.T>です。
1週間で増えたキオクシアの信用買い残は373万1600株(約373万株)。キオクシアは1株が約9万円(6月26日時点)、1単元(100株)を買うのに約900万円を要する値がさ株でですから、信用でないと買えないという投資家が多いのも要因だとは思いますが、それにしても1つの銘柄が1週間で3000億円以上も買い残が増えるのは珍しい現象です。
キオクシアホールディングス<285A.T>日足チャート

キオクシア株は直前の6月22日に上場来高値となる11万2700円をマークした直後、韓国メモリ銘柄のSKハイニックスやサムスン電子などの調整に巻き込まれ、わずか数日で9万円付近に急降下しました。
個人投資家としては、あの値がさ株についにバーゲンセールがきたぞと買い向かったということになるのでしょう。しかし、これほど1銘柄にエネルギーが過度につみ上がった状態は、今後の市場にとって諸刃の剣となりかねません。9万円から11万円台で捕まった大量の買いポジションは、株価が戻ろうとする局面で「やれやれ売り」として強烈な上値の重しになる可能性があります。
実際に7月2日の市場では、市場全体の半導体株への逆風があるなかで、8万円すら割り込み一時75000円まで売られる場面がありました。高値でつかまった信用の買いポジションを解消する損切の売りも出ていたと思われます。
企業の半導体投資の流れにいますぐに大きな変化があるとは個人的には考えていませんが、米メタが余剰の計算リソースを貸し出すクラウド事業に参入するとの報道などもあり、市場は身構えています。
この先、一極集中の需給エネルギーが見事なリバウンドにつながるのか、あるいは市場の重荷となるのか。キオクシアの株価が日本市場全体のセンチメントに影響を与えることになるかもしれません。



