6月24日に開示されたキオクシアホールディングスの2026年3月期有価証券報告書において、同社の経営陣に対する報酬額が前年から大幅に増加したことが明らかになりました。
早坂伸夫代表取締役の報酬は前年の6.6倍となる7億9400万円。さらに、ステイシー・スミス取締役会長の報酬にいたっては、前年の14.9倍となる44億3100万円に達しました。日本企業の役員報酬としては破格の水準です。内訳を見ると、両氏ともに固定報酬や業績連動報酬だけでなく、「株式報酬」が多くの割合を占めていることがわかります。ここに報酬の大幅増加の要因があります。
同社は2024年12月の東証プライム市場へ上場しました。同社の展開している主力製品のフラッシュメモリ市場は周期的な市況の波が激しく、同社も一時期は数千億円規模の赤字に苦しんでいました。
それが生成AIの急拡大に伴うデータセンター向けSSD需要が爆発。26.3期の業績は、売上収益が2兆3376億円、営業利益が8703億円とありました。24.3期に営業赤字だった状態から一転して、過去最高水準の利益を叩き出しています。これを受けて、上場直後に2000円前後だった同社株価は直近では10万円超と50倍も値上がりしており、それだけ株式報酬の額も大きくなったというわけです。
キオクシア日足チャート

さて、こうした「トップへの還元額」が注目されるキオクシアですが、社員の平均年収はどのようになっているでしょうか。有価証券報告書の「従業員の状況」を見ると、グループの司令塔であるキオクシアホールディングスの平均年間給与は約1306万円(前期比13.8%増)となっています。また、実際に四日市工場などで研究開発や製造を担うキオクシア(本体)では、従業員数10156名の平均年間給与が約941万円(同16.1%増)とホールディングスを上回る伸びとなっています。
赤字に喘いでいた時期から、足もとの劇的なV字回復によって賞与など跳ね上がったことが、現場の平均年間給与の増加に効いているのでしょう。今期はさらに大幅に業績が拡大する見込みであることから、役員のみならず社員の給与がどれだけ伸びるか注目です。
賃上げの背景には、半導体業界全体の激しい人材獲得競争があります。韓国のSKハイニックスやサムスン電子などでは、日本円に換算して数千万円のボーナスが出た社員も珍しくないと聞きます。役員ではなく社員にまでこれほど高額のボーナスが出るとなると、前述したキオクシアの給料がかすんでしまいそうになります。
この状況は決して放置できるものではありません。さまざまな業界で人手不足が深刻化しており、給与の大幅引き上げで人材を奪い合っています。特に半導体業界では、世界レベルでのエンジニア争奪戦となっていますし、国内だけを見ても、TSMCの熊本進出やラピダスの動きに加え、キオクシア自身も2025年9月に新工場を稼働予定など、最先端ラインを動かす技術者の確保は企業の生き残りに直結する至上命題と言えます。
半導体といえば、市況の変化が激しいなかで常に設備投資を実施する必要があり、給与引き上げに積極的な業界とは言えなかった時期もあったかと思います。ですが、いまやAIインフラの拡大というトレンドの中で、成長を続けるための必須の要素として、人手を確保するために給与水準を高めることがより重要になってきていると言えるでしょう。





