27.3期1Q決算の現状
ディー・エヌ・エー(2432)が2026年8月5日に発表した2027年3月期第1四半期(1Q)決算は、同社が大きな転換点にあることを強く印象づけました。売上収益は372億円(前年同期比11%減)、営業利益は74億円(同46%減)と、厳しいスタートとなりました。
この停滞の主な要因はゲーム事業です。同セグメントの売上収益は121億円(同33%減)、損益は38億円(同62%減)と大幅に落ち込みました。これは「ポケモン トレーディングカードゲーム ポケット」の初動からの反動が響いたものです。
渡辺執行役員は「期初の想定範囲内」とし、平均MAU(月間アクティブユーザー)は約2300万人と前四半期の平均2400万人と比べ、ユーザー基盤に大きな揺らぎはないと説明しています。ただ、かつてのような収益力を取り戻すことは容易ではなく、今後も下降線をたどる可能性が高いと考えられます。
南場社長の掲げる「事業創造エコシステム」の真価
このような状況のなか、南場智子社長は経営の軸足をゲーム単体の運用から「事業創造エコシステム」の実現へと明確に移す方針を示しています。これは、社内での新規事業創出(0→1)に加え、スタートアップ投資やM&Aを加速させ、構造的な収益事業を連続的に生み出す仕組みを指すとのことです。
特筆すべきは、南場社長が「営業収益だけでなく、エクイティ収益も重要な事業指標」と定義し直した点です。その象徴的な成果が、2026年6月のGO(581A)の上場に伴う395億円の持分法投資利益の計上です。
かつて新規事業として立ち上げたオートモーティブ事業が、発展的なExit(事業売却・上場)を通じて莫大なリターンを生むことを証明しました。今後も、自社で汗をかいてバリューアップした事業をベストオーナーへ引き継ぐことで、従来の枠にとらわれない収益構造をめざす構えです。
非ゲーム事業の躍進:ライブストリーミングとスポーツの成長
ゲーム事業が苦戦する一方で、他の柱は着実に育っています。ライブストリーミング事業では、Vライブコミュニケーションアプリ「IRIAM」が四半期で初の黒字化を達成しました。主要サービスの「Pococha」もコアユーザーのアクティビティが堅調に推移しています。
また、スポーツ・スマートシティ事業も力強い成長を見せています。プロ野球の主催試合数が前年同期より1試合少なかったにもかかわらず、既存の事業は増収増益を確保しました。2026年3月にオープンした「THE LIVE」や「ワンダリア横浜」などの新施設も寄与し始めており、横浜の街づくりと連動した多角的な収益化が進んでいます。
今後の展望:AIネイティブ組織と新たな成長軌道
今後の展開において鍵を握るのが、「AIネイティブ組織」への移行です。DeNAは現在、開発プロジェクトの95%にAIを介在させ、生産性を20倍に引き上げるという野心的な改革を推進しています。AIによって最適化された組織により、浮いた人材を「0→1」の新規事業や収益を生む活動へ大胆にシフトさせる方針です。
今後の展開予想として、ゲーム事業では北米市場を主戦場とした「ソフトローンチ戦略」に基づく新タイトルが今期中に1~2本ローンチされる予定であり、再来期にかけての業績貢献をめざしています。ヘルスケア・メディカル事業においても、固定費抑制と「Join」の導入拡大を進め、今期中の事業全体での黒字化を最優先課題としています。
さらに、DOE(自己資本配当率)3%を目安とした配当方針への変更や、500億円規模の自己株式取得など、資本効率を意識した株主還元も強化しています。ゲーム事業のボラティリティを、多角化したポートフォリオとAIによる圧倒的な生産性向上で克服できるか。南場社長が進める「事業創造の仕組み化」に引き続き注目していきたいと思います。
【DeNAの週足チャート】




