マイナンバー実質義務化でチャンスの企業
10月なかば、政府が2024年秋をめどに、現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一体化した保険証に切り替えると報じられました。
国民皆保険制度のわが国日本で健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化することは、実質的な義務化に等しいということで、取り組みの是非については、報道はもちろんSNSなどでも、さまざまな人の、さまざまな視点からの意見が飛び交いました。
ここではそれらについては述べませんが、同ニュースが株式市場にとっても大きな影響を与えたということについて、触れていきたいと思います。
まずマイナンバー一本化の範囲について、おさらいしておきましょう。政府では、前述した健康保険証だけでなく、運転免許証についても2024年度末の一本化をめざしており、さらにこの時期を前倒しできないか警察庁とも検討を進めているもようです。
さらにマイナンバーカードの電子証明書をAndroidのスマートフォンに搭載するサービスの提供を来年5月11日から開始する方針についても表明しています。こちらは以前にも報道されたことがあり、その際にiPhoneは未対応となるもようだとされたことで話題になりました。
それを見越して、株式市場ではマイナンバーに関連する事業を行っている会社の株が買われる場面も見られています。
マイナンバー報道で急騰した銘柄
例えば、ITbookホールディングスという企業があります。同社はマイナンバーカード(マイナカード)の利用を促すコンサルティング業務を手がけており、これまでもマイナンバー関連の報道があるとよく動意付く銘柄として、市場でも認知されています。健康保険証とマイナンバーカードの一体化報道があった10月には2割ほど上昇する場面がありました。
ITbookホールディングス日足チャート
また、フライトホールディングス<3753.T>も直近で株価が急騰した銘柄の一つです。同社はマイナンバーカードの読み取りに対応した新次世代型マルチ決済装置を取り扱っています。また、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として主務大臣の認定を取得しており、これらが好感されて買いを集めました。株価はストップ高を付ける場面もあり、直近安値から一時5割以上も上昇しました。
フライトホールディングス日足チャート
マイナンバー管理システム「MYNABOX」を提供するエムケイシステムも、報道を受けて一時ストップ高を付けました。株価も年初来高値を更新する541円まで上昇するなど、投資家からの期待の高さがうかがえます。
エムケイシステム日足チャート
新しいビジネスチャンスも
それ以外にも、総務省が実施する「利用者向けデジタル活用支援推進事業(地域連携型)」を受託したティーガイアなどもマイナンバー関連銘柄と言えるでしょう。同事業は全国9つの自治体の公共施設などにおいて、地域住民らにスマートフォンの基本操作の習得や、スマートフォンを活用したマイナンバーカード申請など等の行政サービスの利用促進を図る講習会を開催するものです。健康保険証とマイナンバーを一体化することで、従来の保険証が利用できなくなることを懸念した高齢者などの声などが報道ではさかんに取り上げられましたが、こうした取り組みが一般化することで新しいビジネスチャンスが拡がってくるという面もあると思います。
すでに利用が始まっている「マイナ保険証」について、医療機関では顔認証付きのカードリーダーの導入などが少しずつ広がっていますが、オンライン資格確認対応顔認証付きカードリーダー「Sma-pa マイナタッチ」を取り扱うALMEXも注目の企業です。同社自身は上場企業ではありませんが、USEN-NEXT HOLDINGSのグループ企業となっています。
今後は、保険証や免許証など以外にもマイナンバーカードの活用場面が増えていくと推測されます。そのなかで注目されそうな企業の株について調べてみると意外な投資のアイデアにつながるかもしれません。