株式投資の指標としてよく耳にする「ROE(Return on Equity:自己資本利益率)」。なんとなく重要そうだけれど、「結局、何がわかる指標なのか」は曖昧なまま、という方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、ROEの基本的な考え方と、数字を見るときのポイントを整理していきます。
ROE(自己資本利益率)は企業が効率よく利益を上げたかを見る指標
ROEは、企業が株主から預かったお金を使ってどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す、経営の効率を見る指標です。ROEは、一般的に「自己資本利益率」と呼ばれています。一方で、実際の計算では、純利益を「株主資本」で割って求めます【図】。

自己資本は、企業にとって返済義務のない資金です。株主の出資分と利益の蓄積から成り立つ概念で、じつは会計上の正式名称ではありません。ですが、貸借対照表の勘定科目として存在しないにもかかわらず、有価証券報告書や企業のIR資料などでは頻繁に登場します。
自己資本と株主資本は何が違う?
このように、「自己資本」は「株主のもの」というニュアンスの指標として、企業分析などの場面では定着しています。会計上の科目を使うとすれば、日本では一般に、次のように解釈されています。
●自己資本=純資産-新株予約権-非支配株主持分
または
●自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額
一方、株主資本は企業の財務諸表で「貸借対照表」の「純資産の部」において使用されている名称です。
●株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金 など(詳細は企業の財務内容によって異なる)
このような「自己資本」と「株主資本」の不一致は、会社法の制定によって定義が整理されたことに起因します。ROEを正確に表現するならば「株主資本利益率」となるはずなのですが、慣例により、会社法制定後も用語として定着している「自己資本利益率」が使われています。
ROEが重視されている背景
近年は、日本の上場企業において、ROEを重視する傾向が強まっています。その背景には、機関投資家などの株主からの期待が高まっているためです。さらに、証券取引所や政府の要請により、資本効率を重視するムードが市場に広がっています。このようなことから、具体的な経営目標としてROEの向上を掲げる企業が増えてきました。
ROEへの意識が高まる中で、企業のROEも全体として改善してきました。【グラフ】は、東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループがホームページで公表している、東証上場企業のROE平均の推移です。2019年を底に、近年は上昇傾向であることが読み取れます。

投資家としては、ROEの数値を単独で眺めるだけでは資本効率の良しあしは判断できません。ROEを同業他社と比較したり、自社のROEの推移を確認したりして、経営状況の分析や戦略立案に活用します。【グラフ】は東証上場企業を製造業と非製造業に分けたROE平均ですが、東証は業界平均のROEも公表しています。
ROEだけでなく他の指標も併せて投資判断を
ただし、ROEは単に高ければ高いほど良いというわけではありません。ROEが高くても、背景に多額の負債が存在するケースもあるからです。分母の株主資本と比較して借入金の残高が過大な場合、負債に頼った資本で利益を生んでいることから、株主資本に対する利益、つまりROEは高くなります。
ROEのほかに、資本効率を見る指標としてROA(Return On Assets:総資産利益率)があります。ROAは、「保有資産を使ってどれだけ稼いだか」という指標です。ROAを算出する際の「保有資産」は、貸借対照表の「総資産」で、株主資本と銀行などからの借入れのほか、取引先への買掛金なども含みます。つまりROAは、その企業の資産全体から見た利益率ということです。
ROEだけで投資判断を下すのではなく、ROA(総資産利益率)で総資産に対する利益の割合をチェックしたり、自己資本比率で財務の安定性を見たり、資金を確保しているかをキャッシュフローで確認したりして、他の財務指標も併せてチェックし、複合的な分析を行うことが大切です。
また、純利益が伸び悩んでいたとしても、分母である株主資本を小さくすればROEを高めることもできてしまいます。自社株買いを行って株主資本を縮小させると、利益の額が同じでもROEは高まります。ROE向上に利益成長が伴っているかどうかの確認も必要です。
従来、企業の評価は売上高や利益の増加が主な対象でしたが、近年は資本効率を重視するようになりました。このような流れを受け、中期経営計画や統合報告書、株主総会資料などでのROEの記載が増えました。個人投資家でも、これらの資料はダウンロードできますので、ぜひ活用しましょう。
【参考サイト】日本取引所グループ「決算短信集計結果」



