IMF専務理事やウォール街の巨人、景気後退リスクに警鐘
国際通貨基金(IMF)が10月11日、世界経済見通しの最新版を公表しました。
タイトルは「生活費危機への対処(COUNTERING THE COST-OF-LIVING CRISIS)」であり、インフレ高止まりの対応に苦慮する世界の情勢を物語っています。
2022年の世界成長見通しこそ、3.2%増で据え置きました。しかし、2023年については前回7月の2.9%増→2.7%増へ下方修正しつつ「最悪期はまだ訪れていない」と指摘。その上で「金融危機と新型コロナのパンデミックが深刻だった一時期を除いて、2001年以降で最も弱い成長となる」と悲観モードにシフトしました。IMFのゲオルギエワ専務理事と世銀のマルパス総裁が10月10日に「世界的な景気後退入りのリスクが高まる」との発言が思い出されます。
IMFは、足元で成長を抑制する複合要因として主に以下の3つを挙げ、経済的、地政学的、且つ環境的にリスクをもたらしていると警告を発することも忘れません。
・ロシアによるウクライナ侵攻
・生活費高騰の危機
・中国の景気減速(ゼロコロナ政策と合わせ)
ここで振り返りたいのが、ウォール街の巨人が放ったメッセージです。
J.P.モルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO
「米経済は、今後6~9カ月の間に景気後退入りする可能性がある」
チューダー・インベストメントのポール・チューダー・ジョーンズCEO
「米経済は景気後退入りの道をたどっているようだ」
IMF、警告に反し成長予想はOECDより楽観的?
一方で、IMFはインフレが2022年にピークアウトすると予想。2022年は8.8%ながら2023年は6.5%、2024年は4.1%と見込みます。
Fedを始め中銀の引き締め政策が奏功するとみており、先進国を始めとした金融政策に対し「前倒しの積極的な金融政策が必要」と指摘。さらに景気後退は回避できると比較的楽観的な見方を示しています。こうした見解は以前にお伝えしたように一部の経済学者(ポール・クルーグマン教授とグレッグ・マンキュー教授)と正反対で、元Fed関係者(NY地区連銀のオペ責任者であるブライアン・サック氏、コーン元FRB副議長)ですら、足元でFedは利上げに慎重となるべきと主張します。
IMFは景気後退入りのリスクに警鐘を鳴らしつつ足元の引き締め策を支持するように、米国を始め先進国を中心に成長率見通しはOECDより楽観的でした。
チャート:OECDとIMF、世界経済見通しの比較
IMFが予想するように世界的な景気後退入りを回避できるのか。大きなカギを握るのがFedであることに変わりありません。