注目のテーマ別銘柄 防衛省との契約額が大きい防衛関連

防衛予算1.5倍に


足もとで防衛関連銘柄の物色が盛り上がっています。2022年は三菱重工などをはじめ、年間を通じて上昇が目立った同テーマの関連銘柄ですが、直近では岸田首相が12月5日に、浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相を首相官邸に呼び、防衛力の抜本的強化に向け、12月中に決定される新たな「中期防衛力整備計画」(中期防)に、2023年から5年間で約43兆円の防衛費確保を指示したと報じられたことで動意付いています。


同件は日本経済新聞をはじめ、ブルームバーグなど海外のメディアでも盛んに報じられました。、43兆円は現行(2019~2023年)の27兆4700億円より約1.5倍超多い金額ということで、前述した各メディアの報道によれば、主に北朝鮮・中国など周辺国のミサイル基地を直接打撃する「敵基地攻撃能力」(反撃能力)保有による兵器準備などに充てられるとされています。


こうした報道のたびに株式市場では、いわゆる「防衛関連」とされる銘柄の物色が盛り上がりますが、実際にどの企業にどのくらいの金額の恩恵があるのか、ということは株式情報メディアですら、あまり詳しく語られることはありません。


そこで今回は防衛装備庁が公表している資料(令和4年版中央調達の概況における「契約相手方別契約高順位https://www.mod.go.jp/atla/souhon/ousho/pdf/ousho_total.pdfを参照)」)から、実際に防衛省との契約額の大きい企業トップ20について、主な調達品目も併せて紹介します。


ちなみに防衛装備庁は従来、防衛装備品の取扱いに関する業務を行う組織・部署が細分化されていたものを統合して2015年に発足した組織です。


過去50年間で不動のトップは三菱重工



ランキングトップは株式市場でも注目度の高い三菱重工業です。契約額は4591億円で、1社で年間調達額の約4分の1を占めています。主な契約品は護衛艦、潜水艦といったものから、開発中の次期戦闘機に関するものも含まれています。


ちなみに表の方では省略していますが、防衛装備庁の公表資料では過去5年間の順位の推移も載っており、同社は5年間通じてトップ。さらに調べられる範囲で過去をさかのぼってみると、5年間どころか約50年間にわたって同社がトップの座を譲ったことは、ほぼありません・2015年度にP-1固定翼哨戒機20機の(2073億円)の大量契約により、川崎重工業が契約額トップとなったことがほぼ唯一の例外と言えるかもしれません。防衛関連の筆頭格とされるのも納得ですね。


2位が前述した川崎重工業です。契約額は2071億円。主な契約品はP-1固定翼哨戒機やC-2輸送機で、この年はP-1固定翼哨戒機6機、C-2輸送機2機が契約されています。


3位は三菱電機です。投資家からは一般的にはエレベーターやエアコン、最近ではパワー半導体関連銘柄などとして見られることが多いと思いますが、同社も有力な防衛関連銘柄です。契約額は966億円。主な契約品としては、03式中距離地対空誘導弾(改善型)、非貫通式潜望鏡1型改1センサマスト、多機能レーダOPY-2などが挙げられます。


最近では日本、イギリス、イタリアの3国で共同開発する次期戦闘機において、日本側の開発メーカーとして参画するなどの報道もありました。


NECや富士通といった官公庁向けITサービスを手がける企業も、実は契約上位の常連です。自動警戒管制システムや、防衛情報通信基盤通信電子機器なども必須の装備となっています。


やや意外なところではSUBARUが8位にランクインしています。一般的には自動車の生産会社のイメージで軍事とは結びつかないと思われる方も多いと思いますが、同社は防衛省向けに多用途ヘリコプターなどを納入しています。常にランキング上位にいるというわけではありませんが、この年は多用途ヘリコプター(UH-2)20機の契約(340億円)があったことからこの位置となったもようです。


あまりランキングには入らない中小型の銘柄のなかでランク入りした新明和工業のような銘柄もあります。普段はこうしたランキングで上位に入ることはまれですが、この年はUS-2救難飛行艇の契約(70億円)があったことで、ランク入りしました。


防衛関連が物色される際に、動意付くことが多い石川製作所や細谷火工、豊和工業などについては、契約額という観点からは額が小さくランキング上位には入ってきません。ただ、こうした小型株は業績規模が前述してきた銘柄よりも小さい分、仮に予算が増額された際の影響も大きくなるとの思惑もあって、値動きが大きくなる場面があるようです。


防衛関連は報道にもある通り、今後5年間、あるいはそれより長い期間にわたって強化されていくことから、息の長いテーマになるでしょう。その際に、こうした公表資料や企業の決算資料などをもとに、どの企業にどれだけの影響があるのか調べてみると新たな投資アイデアの発見につながるでしょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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