過去のウサギ年は本当に相場が伸びたのか

2023年が始まりました。相場寄りの方にとってはポジティブなニュースが「卯年(ウサギ年)には相場が伸びる」という言い伝え?です。相場が伸びれば実経済としても追い風となるため、期待も集めていることでしょう。スタートラインに立って考えたいのは、過去のウサギ年は本当に相場が伸びたのでしょうかという言い伝えが正しいか否かです。


12年ごとに株価と出来事を振り返ってみる

本稿では過去12年ごとに株価と主な出来事を振り返ってみましょう。最初は最初は60年前に遡ります。


①1963年(昭和38年)

日経平均株価 1月4日1418.25円/12月28日1225.10円


太平洋戦争の終結から18年後です。翌年に東京五輪開催を控え、国内には戦後が既に終わったのではないかという前向きな認識も目立っていた頃です。年始以降株価は堅調に推移するものの、7月に100円以上の大暴落を記録しています。理由はアメリカにおけるケネディ大統領の利子(金利)平衡税の導入発表です。アメリカで発行される株式と長期金利を保護するため、アメリカで発行される外国証券と株式に一定の平衡税を課税するものです。


7月から下落基調の株価は10月以降、更に下落します。平衡税を発表したケネディ大統領が何者かに暗殺されます。日本ではカラーテレビの初放送が暗殺事件ともいわれており、経済は回復基調にありましたが、アメリカとソ連が冷戦状態となっていた世界の不安感がどのように展開していくのか、予断を許さない状況でした。


②1975年(昭和50年)

日経平均株価 1月4日3777.40円/12月27日4358.60円


12年前から日経平均は3000円以上上昇しており、国内経済の好調さを立証します。岡山から新博多までの山陽新幹線が開通し、東京から福岡まで新幹線で移動することが可能となりました。一方で大手商社の安宅産業が破綻するなど、大手企業の倒産が目立った1年でもありました。


株価推移を見ると、1970年代初頭に発生したニクソンショックと石油ショックが終結し、投機熱が土地や株式、ゴルフ会員権といった投資熱を推進します。後年を知っている者からすれば、高度経済成長が本格的な軌道に乗っていくにあたっての助走段階といえるでしょうか。


③1987年(昭和62年)

日経平均株価 1月5日18820.55円/12月28日21564円


株価の伸びに驚くとともに、日本国内の出来事にも景気の良さが並びます。NTTが上場し、ゴッホのひまわりが国内企業に落札されました。後年にバブル景気といわれる好景気の始まりです。一方で10月には香港市場を発端にブラックマンデーが発生し、以降は年始に比べて停滞株価を迎えます。なお、株価は高止まりではなく、翌1988年から1989年にかけて一気に上昇した株価は1990年、約9か月間で約2万円も下落します。後に称される「バブル崩壊」です。


④1999年(平成11年)

日経平均株価 1月4日13415.89円/12月30日18934.34円


世紀末です。1年を振り返っての漢字も「末」が選ばれるなど、来たる新世紀がどうなるんだろうという不透明感が覆っていました。筆者は学生の時、ヨーロッパで発表された世紀末の予言がどうなるか懸念していたことを覚えています。一方でITバブルが始まっていて、いわゆるインターネットビジネスが勃興した時期でもあります。当時は悲観的な考えを持つ人も多かったのですが、俯瞰的な眼を持ったときには長く続くテクノロジーの到来期だったことがわかります。


⑤2011年(平成23年)

日経平均株価 1月4日10398.10円/12月30日8455.35円


3月11日に東日本大震災が発生します。その後原子力発電所の事故や計画停電により世相は停滞傾向を強めるも、株価面では夏にかけて短期間で挽回します。ただ8月に海外のリセッションが反映され急落すると、そこから年末まで下落基調が続きました。


ウサギ年の傾向を考察する

さて、あらためてウサギ年を迎えるにあたり、ウサギ年にどのような特徴があったのかを振り返ってみましょう。顧みるにウサギ年に株価が伸長する傾向は際立ったものではないですが、1987年のバブル景気入りや1999年のITバブルなど、印象の強い一年があったことが背景にあると思われます。そのうえで2023年はどのような1年になるのでしょうか。


2023年1月4日、大発会の始値は25834.93円になりました。前年比259円のマイナススタートです。過去数年来よりコロナは沈静化して経済復興が進むといわれていますが、年末にかけて国内や中国などでの再拡大が報じられており、不透明な部分も残されています。一方でアメリカの利上げ戦略がどのようになっていくかも株価推移に影響を及ぼすことでしょう。日本でも日銀総裁が変わり、経済政策が再設定されると見込まれています。


仮に株価の変動性が高いのであれば、景気を押し上げるポジティブなニュースで合って欲しいものです。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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