米12月CPIは市場予想通り鈍化も、米国人の食卓に卵高騰の悲劇

米12月CPIは市場予想通り鈍化を示すも・・


米12月消費者物価指数(CPI)が発表されました。コアと合わせ全て市場予想通りで、1月31~2月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ幅を前回の0.5%から0.25%へ縮小する確率が米CPI発表1週間前の62.6%から92.2%へ急伸。スワップ市場では、早くも3月20~21日のFOMCで据え置きに転じるとの見方も浮上しています。


今回のCPI結果をみると、エネルギーの押し下げが利いていることが分かります。CPI全体の約3割を担う住宅関連の押し上げを相殺しました。ちなみに上振れが続く住宅関連については、今後インフレが急速に落ち着く期待があります。オンライン不動産大手ジローによれば新規契約分の22年11月家賃は下落に転じただけでなく過去7年間で最も大きく落ち込んでおり、ここが今後反映されていく見通しです。


 


米国の朝ご飯を直撃、卵の価格が前年比2倍に!


その一方で、米国では食料品の高止まりを受けた悲鳴が聞こえて久しい。


ニューヨーク・ポスト紙が取り上げた「卵の価格がビットコイン並みだ!」とするツイートは、指数関数的に上昇する実態を絶妙に表しております。筆者はこれまでCPIで卵を肉類と魚類と合わせて紹介していたので、この機会に卵単体のデータを取得してみました。結果はご覧の通りで、11月に12個当たり前年同月比138%上昇の4.25ドルと過去最高値を爆進中です。


チャート:米12月雇用統計の平均時給は前年同月比4.6%でしたが、卵1ケース(12個入り)当たりの価格は前年同月比で138%と驚天動地の上昇ぶり


 


まだまだ手頃と思ったあなた、あくまで全米平均価格なので都市部ではこの程度ではないのですよ。物価の高さで悪名高いNY市ともなれば、卵価格も別格で12個当たり9.99ドル!!TKG=卵かけごはんを始め朝ごはんが贅沢品になるなんて、コロナ前に誰が想像したでしょうか?


画像:「卵1日5万個」・・のCMでお馴染みの“餃子の王将”だったら、1日の仕入れコストはいくらかと想像してしまうほどの高騰ぶり


 

(出所:Markets & Mayhem/Twitter)


日本でも卵価格が高騰しニュースで取り上げられる通り、ニワトリのエサである飼料価格の高騰というよりは、鳥インフルエンザが背景にあります。冬の間は高値に悩まされること必至ながら、春の訪れとともに気兼ねなくゆで卵にペイントして復活祭(イースター、今年は4月9日)を祝えるようになればいいのですが・・。


余談ながら食料品価格の高騰を受け、女性人気ラッパーのカーディー・Bが「食料品が買えないなら、外食すればいいわ」的なマリー・アントワネット風のツイートを展開し、一部で総ツッコミが入ったことは言うまでもありません。外食も人件費を背景に右肩上がりを続けているなんて、セレブには知る由もなかった?一方で「食料品価格の高騰に有名人が物申すことに意味がある」と、カーディ・Bを擁護するジャーナリストを確認できたのは、時代の変化というべきか。


Fedピボットを示唆するフレーズ第一弾は、“正しい方向”か


卵はともかくとして、前述したようにインフレは減速基調を確認しました。


ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ニック・ティミラオス記者のツイッターによれば、10~12月期の前期比年率のCPIが3.5%と15カ月ぶり、6カ月比の年率ベースでも4.5%と2021年5月以来の低水準でした。心強いインフレ鈍化の証左と捉えられるのではないでしょうか。

今後の方向性を占う上で、セントルイス連銀のブラード総裁の発言に注目したい。ブラード総裁はコロナ前までハト派と目されてきたが、インフレ加速を受け21年6月頃にタカ派に反転、22年11月にはブラード版テイラー・ルールを用い、十分に引き締め寄りのFF金利のレンジは5~7%と発言していました。しかし、1月6日には金利水準は未だ引き締め寄りではないと指摘しつつ、5%手前が引き締め水準の下限なだけに「視野に入ってきた」とも言及。ブラード氏は今回の利上げを先取りしてきただけに、姿勢変化はFedのピボットのサインとなりそうです。


そのブラード氏は、CPI後に、物価は「正しい方向(right direction)」にあると発言しました。このフレーズは、同日にリッチモンド連銀のバーキン総裁が言及しただけでなく、バイデン大統領も会見で使用していました。未来の私たちは、このフレーズをFedの金融政策のピボット第一弾の決め台詞と記憶するようになるかも?


ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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